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米国、半導体輸出の新規制 6つのルールとは 同盟国を支援し敵対国の悪用防ぐ
米国政府はAIの普及に伴い、半導体輸出に新たな規制を発表した。同盟国への柔軟な供給と懸念国への悪用防止を両立させる6つの主要ルールを採用。AIの安全かつ責任ある普及を目指し、国家安全保障と経済力の強化が図られている。
米国ホワイトハウスは2025年1月13日(現地時間)、AIの普及に伴う半導体輸出に関する新たな規制を発表した。この規則はAIが米国の国家安全保障および経済力を支える中で、敵対国による悪用を防ぐことを目的としている。
主要なルールは次の6項目だ。
- 同盟国への柔軟な半導体チップ供給: 米国は18の主要同盟国およびパートナー国への半導体チップ販売に制限を設けない。この方針により、信頼できる技術エコシステムがシームレスに機能し、国家安全保障および外交政策上の利益が守られる
- ライセンス不要の低リスク注文: 高度なGPUを搭載した半導体チップのうち、約1700基までの注文にはライセンスが不要で、国の半導体チップ上限にもカウントされない。この措置により大学や医療機関などが無害な目的で使用される低リスクの出荷が迅速に処理される
- ユニバーサル検証済みエンドユーザー(UVEU)ステータスの導入: 高いセキュリティ基準を満たす同盟国の組織はUVEUステータスを取得できる。このステータスを取得した場合にはAI計算能力の最大7%を世界各国に配置できる。ステータスで信頼された組織は迅速かつ柔軟に拡大でき、最先端のトレーニングを国内に維持しながら米国と同盟国のグローバルリーダーシップを強化できる
- 国家認証エンドユーザーステータスの適用: 懸念国以外に本社を置く組織は、2年間で最大32万個の高度なGPUに相当する計算能力を購入可能となる。この規定により信頼できる国家組織は転用リスクを回避しながら、地方や政府、地域の顧客サービスを拡充できる
- 非認定エンドユーザー組織向けの計算能力上限: 緊密な同盟国以外の非VEU組織は国ごとに最大5万台の高度なGPUに相当する計算能力を購入できる。この措置は外国政府や医療提供者、その他の地元企業にサービスを提供できるようにするための処置とされている
- 政府間協定による国際エコシステムの促進: 政府間協定を締結した国は輸出管理とクリーンエネルギー、技術セキュリティの取り組みを米国と連携させられる。また協定国には半導体チップ上限を2倍に引き上げることが可能となる
規則では米国製AIが懸念国で悪用されることを防ぐ措置も講じられている。具体的には懸念国での先進的なAIシステムのトレーニングの防止、高度な非公開AIモデルのデータ保護およびセキュリティ基準の設定などが含まれている。
本規則は米国の国家安全保障を守ることを目的とした2022年および2023年の半導体チップ規制に基づいており、利害関係者、超党派の議会議員、業界代表者、外国の同盟国やパートナーとの幅広い関連協議の協議を経て策定されている。AIが国家安全保障に与える影響が増す中、米国は新規制を通じてAIの安全かつ責任ある普及を主導する意向を明確にしている。
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