AIエージェントはCX分野をどう変えるのか? AIを実装したZoomから探る:Weekly Memo(2/2 ページ)
AIはCX分野でどのような効果をもたらすのか。AIエージェントはこれからどうなるのか。CX分野に注力するZoomの取り組みから探る。
AIを活用したデジタルツインのワークプラットフォーム
下垣氏に続いてキーノートでスピーチしたZoom Communicationsのルーカス・キャルサーズ氏(Head of CX Sales & GTM, Asia-Pacific & Japan)は、同社のCXにおけるビジョンについて次のように説明した。
「当社は組織の垣根を越え、AIによる自動化と人のつながりを融合させることで、1人1人に寄り添った高品質なCXを、より多くの人に届ける。また、当社は常に俊敏にイノベーションを起こし、全ての顧客接点を自動対応、有人対応を問わず、心のこもった体験に進化させる。お客さまのニーズを全ての取り組みの中心に据えながら、柔軟に変化し続ける」
筆者が注目したのは「全ての顧客接点を自動対応、有人対応を問わず、心のこもった体験に進化させる」との表現だ。その理由は後で述べる。
キャルサーズ氏は、同社のCXにおけるこれまでの取り組みについて図4を示した。
この図によると、AIファーストのCXプラットフォームとして推進する2025年以降は、「バーチャルAIエージェントと人間が連携し、パーソナライズされた効率的で卓越した体験をスケールのある形で提供する」としている。
さらに、2025年以降の最後には「CXファーストな組織へ」と記されている。これについて同氏は、CX領域で重要な役割を担うコンタクトセンターなどのオペレーターやスーパーバイザー、CXリーダーを例に挙げ、図5に示したようなそれぞれの課題について「AIコンパニオンを活用することで解消できる」と説明した。ちなみにこの図の左端に「エージェント」と表記されているが、このエージェントは「人間」を指すので、上記では「オペレーター」と表現した。
キャルサーズ氏は、CXの未来についても「ZoomによるAIエージェント革命」と称して言及した(図6)。
この図によると、Zoomのエージェント型AIは「人間の稼働を最小限に抑えながら、実行、仮説、自己最適化するAIによる業務支援」が実行できるようになるとしている。さらに同氏は「お客さまにとっては、より高いコストパフォーマンスで、より満足度の高い体験を得られるようになる」、それがCXの未来だと述べた。
同氏は最後に「私がこれまでお話ししたことを、私の分身であるAIエージェントが日本語で要約してお伝えしたい」として、映像で登場した同氏の分身AIエージェントがその務めを担った。その上で同氏自身が「こうしたデジタルツインの環境が、AIエージェントによって活用されるようになるだろう」と語り、こちらもCXの未来として見せた。
Zoomはデジタルツインのワークプラットフォームになる?
筆者は同氏の「デジタルツイン」との発言にピンと来た。AIコンパニオンによるAIエージェントは、デジタルツインのリアルとバーチャルな空間を行き来して、業務を自律的にこなしていく。先ほど同社のCXにおけるビジョンのところで、「全ての顧客接点を自動対応、有人対応を問わず、心のこもった体験へと進化させる」との表現に注目したと述べたのは、まさしくデジタルツインを想定した話だ。
そう考えると、これからのZoomはCX分野をはじめとして「AIを活用したデジタルツインのワークプラットフォーム」になり得るのではないか。メタバースなどのデジタル空間のアバターが、AIエージェントとして働くようになるかもしれない。
果たしてAIエージェントは今後どうなっていくのか――。改めてそう考えたイベントだった。
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
もう元には戻らない、これからの働き方とは――Zoom日本法人の「働き方改革」イベントから読み解く
ニューノーマルの働き方は、また元に戻るのか、それとも進化するのか。Zoom日本法人が開催した初イベント「働き方改革サミット」の内容を基に考察したい。
2022年、Web会議はどう進化する? ZoomとTeams、2大ツールが示した未来
コロナ禍をきっかけにWeb会議が普及を続けている。実際に、国内ではどれだけ利用されているのか。また、今後はどう進化していくのか。最新情報から探る。
生成AI時代にZoomはどう変わるのか? Zoom Communicationsに社名変更後の動き
ビデオ会議ツールのイメージが強いZoomだが、今やAIを活用してビジネスシーンで役立つさまざまなサービスを展開している。人々の働き方を変えるべく、AIを通じて新たな可能性を模索中だ。
会議中にAIがチケット発行、人員アサインまで ZoomとSevicenowがAI機能で提携
企業の生産性向上に寄与するサービス同士のコラボが進む。議事録を要約するだけでなく、会議の内容を基にさまざまなタスクをその場で実行できるようになる。




