OpenAIのサム・アルトマンが語る「AIの未来」 その時、企業が準備すべきものは何か
Snowflakeの年次イベントにサム・アルトマン氏が登場した。汎用人工知能(AGI)の完成時期が話題になる中、AIブームの先頭に立つ同氏はデータプラットフォームベンダーと何を語ったのか。
クラウドデータプラットフォームベンダーSnowflakeは、2025年6月2〜5日(現地時間)、米サンフランシスコで同社の年次イベント「Snowflake Summit 2025」を開催している。本イベントで注目を集めたのはOpenAIの最高経営責任者(CEO)サム・アルトマン氏の登壇だ。
OpenAIのサム・アルトマンが語る「AIの未来」――その時、何が起こるのか
アルトマン氏は「昨年と比べて、エンタープライズ用途での生成AIモデルの安定性と有用性が飛躍的に向上した」と明言し、「2025年には、AIが業務の一部を自動化するだけでなく、もっとも難解なビジネス課題に取り組み、チームでは到達し得なかった解決策を導出するようになる」と予測した。
Snowflake Summit 2025に登壇するOpenAI CEO サム・アルトマン氏(左)とSnowflake CEO スリダール・ラマスワミ氏(右)。中央はConvictionのCo-Founder サラ・グオ氏
彼はまた、「(現状の)1000倍の計算資源があればどうするか」との問いに対し、「AI自身に次のAIを設計させる」メタ的なアプローチを挙げた。この構想は、将来的な「AI科学者」出現への布石であり、極限的な創造的問題解決能力をもつエージェントの登場を予見している。
エージェントと記憶、AGIの前夜にある現在
汎用(はんよう)人工知能(AGI)に関して、アルトマン氏は「定義にはあまり意味がない」と述べつつも、「新しい科学的知識を発見できるAI」が登場する時点を一つの指標とした。彼は「ChatGPTの現在の能力だけでも、2020年時点ではAGIとみなされたであろう」と述べ、進歩のペース自体が最大の注目点であると主張した。
記憶と情報検索(retrieval)についても、アルトマン氏は会話の文脈保持と事実性の確保の両面で重要性が増していることを指摘した。今後は「企業全体の知識、文書、Slack、会議録」などを理解し、自律的にタスクを遂行する「AI従業員」的存在が「現実味を帯びてくる」とした。
AIの未来を見据えたSnowflakeが打ち出すデータ&AIのアプローチ
サム・アルトマン氏の登壇は、SnowflakeがAI技術を中心に戦略を組み上げていることを強く印象付けた。「AI従業員」が実現する未来に向けて、企業ITのデータ基盤を支える同社はどのようなアプローチを取るのか。これからのデータ基盤の理想の姿をどう描いているのだろうか。
Snowflakeの最高経営責任者(CEO)を務めるスリダール・ラマスワミ氏はイベントの冒頭、Snowflakeの使命を「全ての企業がデータとAIを活用して潜在能力を最大限に発揮できるようにすること」と再定義した。2025年の同イベントは過去最大規模で、顧客主導のセッションは同社の「顧客中心」のカルチャーが徹底していることを印象付けた。
ラマスワミ氏は、CEOに就任してからの1年3カ月間、顧客の声を直接聞くこと、そしてフィードバックをもとにした高速な製品開発に注力してきたことを力説。「AI Data Cloud」を核としあらゆる業種の業務変革を加速させていることや、キャタピラー、アストラゼネカ、ブラックロック、トリップアドバイザー、トムソン・ロイター、ニューヨーク証券取引所、医療・市政といった公的機関などの導入事例を紹介した。
Icebergへの対応に加えてPostgreSQL領域の技術も獲得
イベントの開催に合わせて、SnowflakeはCrunchy Dataを買収する意向を発表した。Crunchy DataはオープンソースのRDBMS「PostgreSQL」を扱う企業であり、この買収はSnowflakeがPostgreSQL技術に本格的に参入することを意味する。
これは「Snowflakeのセキュリティ・スケーラビリティ・ガバナンス能力」と「PostgreSQLの開放性・親しみやすさ・拡張性」の融合という構想を描くものだ。オープンテーブル形式(「Apache Iceberg」)との連携も進んでおり、同社が相互接続性を意識し、開発者フレンドリーなエコシステム構築を志向していることを示した。
クラウドデータウェアハウスからAIプラットフォーム提供企業へ
同イベントを通じてSnowflakeは、データウェアハウスベンダーからAIプラットフォーム提供企業へと進化した姿を示したといえる。サム・アルトマン氏が登壇して直接「AIがこれから何を成し遂げ得るか」についての展望を明らかにしたことは、データ&AIの時代に必要なITプラットフォームが何かを示す意味でも大きな意義がある。
技術ポートフォリオの拡充、実用事例、テクノロジーの民主化(低コストな実験可能性)を強みとするSnowflakeとOpenAIは、共にAI主導の時代における企業のデジタル変革に強い影響を与え得る存在だ。
クラウドDWHから「モダンデータプラットフォーム」に
今回の同イベントは、「統合されたAI・データ分析基盤」としての機能強化にも注目したい。
Snowflakeは構造化データと非構造化データを統合し、自然言語による質問にAIエージェントが応答する仕組みを整備している。専門的なクエリ言語を知らない非ITエンジニア人材であってもデータから洞察を得られる。
オープンな技術スタックと広いパートナーエコシステムを抱えるSnowflakeの場合、他ツールとの統合も比較的容易だ。「DBT」やApache Icebergなどのオープンソース技術、ETLパートナーとの連携を強化しており、顧客が既存の資産を最大限に活用しつつSnowflakeに移行するための道筋を用意する。Snowflakeはデータウェアハウスのみならず、データ統合、ガバナンス、AI活用を包括的に提供する「モダンデータプラットフォーム」としての位置付けを強めている。
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