「AIに管理されたくない」は約7割 導入前に知るべき人間中心の設計思想
多くの企業がAIエージェントの導入を急ぐ一方で、従業員はAIに管理されたくないと考えている。AIの導入に不可欠な「人間中心の設計思想」とは。
Workdayの最新グローバル調査によると、多くの企業がAIエージェントの導入を急ぐ一方で、従業員の70%は「AIに管理されたくない」と考えていることが分かった。
AIが生産性向上に貢献することは広く期待されているが、その導入には「人間中心の設計思想」が不可欠だ。
AIの導入に不可欠な「人間中心の設計思想」
Workdayは2025年8月12日(現地時間)、グローバル調査「AI Agents Are Here―But Don't Call Them Boss」の結果を発表した。同調査は、AIエージェントが職場で急速に存在感を高める一方で、従業員がAIとの関わり方に明確な線引きを求めている実態を示している。
調査結果によると、従業員の75%がAIエージェントと協働することに前向きだが、「AIに管理されることに抵抗がない」と回答したのは30%にとどまった。AIが人間の認識なしに裏で稼働することに安心感を持つ従業員は24%にすぎず、透明性の確保が信頼構築の鍵となることが浮き彫りになっている。
調査の主要なポイントは次の通り。
- AIは指揮官ではなく副操縦士: 従業員の4人に3人はスキル開発の提案や日常業務の支援などでAIエージェントが横に並ぶことを受け入れている。しかし、AIエージェントに管理されることに抵抗がないと答えたのはわずか30%だった。AIエージェントがバックグラウンドで動作することに安心感を持つと答えたのはわずか24%とされ、AIの明確なルールが従業員の信頼とAIの導入を促す鍵となる
- AIエージェントへの接触が信頼を高める: 回答者の4分の1以上はAIエージェントは過大評価されていると考えているものの、使用頻度が増えることでAIエージェントへの信頼を高めている。AIエージェントの導入を検討している回答者のうち、組織が責任を持つと信頼している回答者はわずか36%だったが、導入が進んでいる回答者においてはその割合は95%となった
- AIによる生産性向上のもろ刃の剣: 従業員の約90%は、AIエージェントが生産性向上に役立つと考えている。ただし「生産性向上によってプレッシャーが増大する」(48%)、「批判的思考力が低下する」(48%)、「人間同士の交流が減る」(36%)ことを懸念する声もある
- エージェントと人間の役割の明確化: 多くはAIエージェントを重要なチームメイトと見ているが、労働力の完全なメンバーとは見ていない。AIへの信頼度はタスクによっても異なり、ITサポートやスキル開発では高く、採用や財務、法務といった機密性の高い分野では低くなっている
- 金融業界に大きな可能性: 多くの業界は公認会計士や財務専門家の不足といった課題に直面しており、金融従事者の76%がAIエージェントがその不足を補うのに役立つと考え、雇用喪失を懸念しているのはわずか12%だった。金融分野におけるAIエージェントの主な用途は、「予測と予算編成」(32%)、「財務報告」(32%)、「不正検出」(30%)だった
WorkdayのAI部門副社長キャシー・ファム氏は、「われわれは人間の判断やリーダーシップ、共感を補完する存在としてAIが力を発揮する新しい時代へ向かっている。信頼を築くにはAIの使い方を意図的に設計し、人間を意思決定の中心に据えることが必要だ」と述べている。
今回の調査は2025年5月から6月にかけ、北米(706人)、アジア太平洋地域(1031人)、欧州・中東・アフリカ(1213人)の合計2950人のフルタイム意思決定者やソフトウェア導入リーダーを対象として実施された。
AIの導入は、単なる技術導入ではなく、人間中心の設計と透明性の確保を前提に進めるべきだと、調査結果は示している。AIエージェントを活用することで人間の能力を拡張し、より充実した働き方を実現するための方向性が示されているといえる。
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