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データセンター電力需要が2030年に倍増へ 環境対策の遅れをGartnerが指摘AIニュースピックアップ

Gartnerは、AIサーバ急増により世界のデータセンター電力需要が2030年に980TWhへ倍増すると予測した。米国と中国が需要をけん引する中、発電手段はSMRなどへ転換期にある。日本は再エネ証書が広がるも、高電力設備や環境対策の遅れが課題だ。

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 ガートナージャパン(以下Gartner)は2025年11月19日、世界のデータセンター電力需要が2025年に16%増加し、2030年までに2倍へ拡大する見通しを公表した。

 この急速な需要拡大は、データセンターのエネルギー構造を根本から変えるものであり、電力供給源のグリーン化が世界的な課題となっている。日本のデータセンターは、再生可能エネルギー証書の取り組みは広がりつつあるものの、高電力設備や水冷設備といったAI対応の遅れに加え、環境対策が十分とは言えないという。

世界のデータセンター電力需要、2030年に2倍に

 世界のデータセンターにおける電力消費量は2025年の448テラワット時(TWh)から2030年には980TWhへ拡大するとGartnerは試算している。背景として、AI最適化サーバの導入拡大が大きな要因に挙げられている。リサーチディレクターのリンラン・ワン氏は、従来型サーバおよび周辺機器も電力消費に寄与しているものの、AI最適化サーバの急増が全体の伸びを強く押し上げているとした。AI最適化サーバ単体の消費量は2025年の93TWhから2030年には432TWhへ拡大し、約5倍となる予測が示されている。


2025〜2030年のデータセンター電力消費(提供:Gartner)

 Gartnerは、2025年時点でAI最適化サーバがデータセンター全体の電力使用量の21%を占め、2030年には44%に達すると予測した。2030年における追加的な電力需要のうち、64%をAI最適化サーバが構成するとしている。AI関連のワークロードが世界的に増加している状況を踏まえると、この分野のエネルギー需要拡大がデータセンター運用全体の構造を変化させつつある現状が浮かび上がる。

 地域別の見通しにおいて、米国と中国が全体の3分の2超の電力需要を占める予測が示されている。この分野で両国が大きな存在感を持つ構図は今後も続く見通しだ。Gartnerは、中国が電力効率の高いサーバの普及や計画性の高いインフラ整備を背景に、相対的に有利な状況にあるとした。米国のデータセンター電力使用量は2025年から2030年にかけ、該当地域の総消費電力に占める割合が4%から7.8%に伸びるとし、ヨーロッパは2.7%から5%となると予測している。他方で中国およびアジア太平洋地域の成長は緩やかになる予測が示されている。

 発電手段に関しては、現在は化石燃料がオンサイト発電の中心となっているが、持続性の観点からこの構図は転換期にあるとされている。グリーン水素や地熱、小型モジュール炉(SMR)などの新たな電力供給源が台頭しつつあり、今後10年でデータセンター・マイクログリッドにおける有力な代替手段となる可能性が示されている。バイスプレジデントアナリストのトニー・ハーヴェイ氏は、短期的には天然ガスが主要電力源となる見通しを示しつつ、今後3〜5年で蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS)が普及し、再生可能エネルギーの変動を補う役割を果たすと述べた。地熱マイクログリッドには一定の可能性があるが、初期費用や認可に関する課題から当面は限られた選択肢となるだろう。

 ディレクターアナリストの山本琢磨氏は、日本に関する状況を補足している。日本国内のデータセンターでは環境対策が十分とは言えない状況が残るものの、再生可能エネルギー証書による取り組みが広がりつつあるとした。AI対応の面では高電力設備および水冷設備の整備が遅れている状況があるが、新設データセンターの一部では導入が始まっていると述べた。ユーザー企業は世界的な動きを踏まえ、新設データセンターの要件を慎重に検討する必要があるとしている。

 Gartnerの発表は、世界的なAI普及とデータ活用拡大がインフラ需要に強い影響を及ぼしている実態を示している。電力供給の再構築が迫られる中、各地域の政策・技術開発・設備投資が今後のデータセンター運用の姿を左右する時代に差し掛かろうとしている。

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