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日産の自動車がソフトウェアで進化 AWSと実現した「次世代自動車」開発とはAIニュースピックアップ

日産自動車はAWSと連携し、SDV開発を加速するソフトウェア開発基盤「Nissan Scalable Open Software Platform」を構築した。本基盤は車両データ、開発環境、OS層を統合し、グローバル開発体制の効率化と継続的な価値提供を可能にする。

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 自動車産業において、車両の価値を左右する要素としてソフトウェアの比重が高まっている。日産自動車は、世界100カ国以上で年間300万台超を販売するグローバルメーカーとして、この流れに対応し、Software-Defined Vehicle(SDV)開発を中核とした変革を進めている。

 同社はSDV開発における目標として、迅速かつ継続的な価値提供、安全性と性能の確保、電気自動車やハイブリッド車、ガソリン車を含む全車種へのSDV展開を掲げている。この目標達成のため、日産自動車は、ソフトウェアの複雑化に対応する開発効率の改善、テストケース増加への対応、オンプレミス環境からクラウド環境への移行、そしてグローバル開発体制の再設計に取り組んできた。

 これらの変革を支える基盤として、同社は2023年から「Nissan Scalable Open Software Platform」の開発を始めた。そして、Amazon Web Services(以下、AWS)は2025年12月2日、日産自動車が同社と連携し、SDVの実現を目的としたこのソフトウェア開発基盤を構築したと発表した。

日産とAWSで実現した「次世代自動車」開発

 同プラットフォームは3つの層で構成される。AWSで稼働する開発実行環境「Nissan Scalable Open SDK」と車両データ基盤「Nissan Scalable Open Data」、車両のデジタルツインを支えるOS層「Nissan Scalable Open OS」だ。中核となる、Nissan Scalable Open SDKとNissan Scalable Open Dataを基盤とする「Engineering Cloud」ではソフトウェア開発から機械学習の学習処理、評価用テスト、データ処理までの一連のプロセスを包含する環境を提供する。


Nissan Scalable Open Software Platformの全体イメージ(提供:AWS)

 北米、欧州、日本などに分散する開発チームや外部開発者は、この共通基盤を利用することで成果物の共有が可能となり、地域特有の要件への対応速度が向上している。AWSが提供する240以上のサービス群の中から必要な機能が選定され、AWSのプロフェッショナルサービスが導入支援を担った。

 具体的な技術施策として、車載ソフトウェア開発のCIパイプラインがクラウドに移行される。「AWS Step Functions」や「AWS Lambda」を使った構成により、ソフトウェア統合テストにおける処理時間を約75%削減している。テストの実行から、判定、結果生成までを自動化した点が特徴とされている。

 開発環境の統一も進められた。5000人超の開発者が使用するワークベンチポータルがAWSに整備され、共通環境と地域別環境への迅速なアクセスが可能となった。「Amazon Machine Image」による環境展開や「AWS CodeBuild、Amazon ECR」の活用により、コンテナ管理も効率化されている。

 車両側では量産ECUへのコンテナ技術導入を視野に入れた取り組みが進められている。軽量なコンテナ管理手法としてPodmanを採用し、独自設計の三層OS構成と組み合わせることで、リソース制約下でも運用可能な仕組みを構築した。

 このSDVプラットフォームは、車両アプリケーション、電動パワートレイン、車体制御といった広範な領域を支える基盤として運用されている。OTAや課金システムとの連携により、継続的な機能提供を支援する構造も備える。

 今後はAI技術の開発環境がEngineering Cloudで拡張される計画だ。次世代ProPILOTでは一般道を含む走行環境への対応が示され、2027年度の国内市販車搭載が予定されている。AWSは引き続き、日産自動車のSDV開発をクラウド基盤の面から支援する方針を示している。

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