生成AIで9割が生産性向上を実感 なのに「毎日使う」はわずか6%:AIニュースピックアップ
PwC調査によって、日本企業における生成AIの活用の遅れが明らかになった。新規ツール利用を後押しする組織風土は日本と世界でどのように違うのか。そもそも新しい試みにチャレンジする風土は企業に何をもたらすのか。
世界では、生成AIを日常的に活用している従業員の9割超が「生産性が向上した」と実感している。一方、日本で毎日使っている従業員はわずか6%にとどまる。
PwC Japanグループ(以下、PwC)が発表した「グローバル従業員意識/職場環境調査 「希望と不安」2025:仕事の未来を再構築する」(注1)は、単なるツールの利用状況ではなく、従業員の意欲を高め、組織の成長を実現するために必要な組織風土の実態に迫っている。
同レポートは英PwCが48の国と地域、28のセクターにわたる約5万人の従業員を対象に実施したグローバル調査「希望と不安」(2025 Global Workforce Hopes and Fears Survey)の結果を翻訳し、日本の調査結果に関する分析を追加したものだ。
日本と世界に劣後しているのは生成AIだけじゃない
同レポートは、AI時代における従業員の意識や職場環境の変化をまとめている。日本企業はグローバルと比較して生成AI活用が遅れているだけでなく、経営幹部や従業員の意識、職場環境についても世界との間でギャップがあることが分かった。
まず生成AIから見ていこう。グローバルでは業務で生成AIを日常的に活用している人は、活用頻度の低い人と比べて、この1年間で生産性や雇用の安定性、給与のいずれにおいても「向上を実感している」と答える割合が高かった。
日本では、従業員による生成AI活用が遅れており、変革の余地が大きいことが分かった。「過去1年間に業務にAIを活用した」と回答した従業員は35%(グローバルでは54%)、前述したように「生成AIを毎日使用している」と回答した従業員はわずか6%(グローバルでは14%)だった。
スキル向上における格差も明らかになった。「学習や能力開発のための十分なリソースがある」と感じている非管理職は全体の51%にとどまる一方で、経営幹部では72%に達した。日本に限ると、「学習・能力開発に必要なリソースや上司の支援がそろっている」と回答した層は20%台で、グローバルから大きく劣後している。
組織の長期目標に対する理解や共感にも課題がある。
日本企業で「組織の長期的な目標・目的を理解している」「日々の仕事は組織の長期的な目標・目的とつながっている」「組織の長期的な目標と目的を信じている」「経営幹部には長期的な目標・目的を達成する能力がある」といった記述に同意した割合は、経営幹部でも60%に満たず(グローバルでは70%以上)、非管理職に至っては30%に満たなかった(グローバルでは57%以下)。
「心理的安全性」を確保している職場は33%
PwCによると、AIの進化と価値観の変化が大きい中で企業変革を推進するには、心理的安全性(チーム内でリスクを取ることへの恐れを感じない状態)の確保が欠かせない。しかし、職場の実態は程遠い状況にあるようだ。
職場で新しいアプローチを試すことに「安全性を感じている」と回答した従業員はグローバルでも56%しかおらず、日本では33%にとどまった。
このように日本企業ではAIの活用率の低さだけでなく、組織の長期ビジョンへの共感不足やスキル開発環境の格差、心理的安全性の欠如という複合的な課題が、変革の足かせになっているとPwCは指摘する。従業員のモチベーションを高めるためには「信頼」「組織風土」「方向の明確性」など、リーダーによる積極的な働きかけが不可欠だと同社は分析する。
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