ランサムウェアの脅威から企業を守る 侵入前提で考える「サイバーレジリエンス」強化の処方箋
ランサムウェア攻撃が高度化する今、侵入を完全に防ぐことは不可能に近い。そこで求められているのが、仮に侵入されても迅速に復旧し、業務への影響を抑える「サイバーレジリエンス」だ。サイバーレジリエンスを強化するためのポイントと、その体制を整えるための具体策をQ&A形式で解説する。
この記事の概要
- ランサムウェア攻撃が高度化しており、侵入を完全に防ぐのは困難になっています。従来のセキュリティ対策ソフトをすり抜けたりEDRを無効化したりするケースも多発しています。
- インシデント発生時に企業は「3つの壁」に直面し、スムーズな復旧が困難になっています。
- 万一侵入されても、被害拡大を防いで迅速に復旧できる能力「サイバーレジリエンス」を高めることが重要です。
近年、企業の業務を停止させ多額の金銭を要求するランサムウェア攻撃が猛威を振るっています。大企業だけでなく中堅・中小企業も無差別に狙われる今、従来の「侵入を防ぐ」だけのセキュリティ対策は限界を迎えており、侵入に備える「サイバーレジリエンス」の構築が急務となっています。
最新のランサムウェア被害の動向や企業に必要な備え、サイバーレジリエンスを構築するための方法をインターネットイニシアティブ(IIJ)の西崎奈々美氏に取材しました。
「うちの会社は大丈夫」は危険 中小企業が狙われる理由と被害のリアル
Q 大手企業ではない自社もランサムウェアの標的になるのでしょうか。復旧にはどのくらいのコストがかかりますか。
A 企業規模にかかわらず全ての企業が標的になります。
攻撃者は大手企業と取引のある中堅・中小企業を無差別に狙い、そこから攻撃範囲を拡大していくためです。
警察庁が2026年3月に公開したレポート「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、被害を受けた企業の51%が調査や復旧に1000万円以上の費用を費やしており、さらに1カ月未満で復旧できた企業は56%にとどまっています。金銭的な負担や長期の業務停止に加え、社会的信用やブランド価値の低下といった大きなダメージを受けるリスクがあります。
対策ソフトを入れていても安心できない? 従来のセキュリティが破られる理由
Q セキュリティ対策ソフトやEDRを導入していれば、ランサムウェアの侵入は防げませんか?
A 既存の対策だけで侵入を完全に防ぎ切ることは困難です。
前出の警察庁のレポートでは、セキュリティ対策を実施していたにもかかわらず、対策ソフトで脅威を検出できなかった事例が被害全体の71%に達しています。テレワークの普及に伴い導入されたVPNなどのリモートアクセス機器が侵入経路となっているほか、近年の攻撃者は初期侵入時にEDRのプロセスを無効化・削除して検知を逃れるなど高度な手口を用いています。
いざという時に動けない インシデント発生時に企業を阻む「3つの壁」
Q インシデント発生時に、事前に準備した計画通りに復旧が進まないのはなぜですか?
A いざそのときが来ると、企業が「3つの壁」に直面しがちだからです。
インターネットイニシアティブ(IIJ)の西崎奈々美氏は、インシデント発生時に企業が「3つの壁」に直面するためだと指摘しています。1つ目は業務環境が壊されて手順書が閲覧できず連絡も取れなくなるパニック状態での不手際、2つ目は調査の鍵となるログまで暗号化されて被害範囲が特定できなくなること、3つ目はバックアップまで消去・暗号化され復旧不能に陥ることです。実際にバックアップからデータを復元できた企業はわずか2割にとどまります。
「サイバーレジリエンス」を高めるには
Q ランサムウェアに侵入された場合でも被害を最小限に食い止める「サイバーレジリエンス」とはどのようなものですか?
A 侵入を完全に防ぐことは不可能であるという前提に立ち、仮に侵入されても迅速に対応・復旧して業務への影響を最小限にとどめる能力のことです。
IIJはサイバーレジリエンスの向上を支援する幅広いサービスを提供しています。中でも、EDRやセキュリティ対策ソフトなどを無効化するランサムウェア攻撃への対策となるのが「IIJフレックスレジリエンスサービス」です。攻撃者によってEDRや対策ソフトが停止・削除された場合、自動でアプリケーションを再インストールして正常状態に修復します。これにより早期にEDRの防御機能を復活させ、不審な挙動を即座に検知・隔離して被害の拡大を阻止します。
「バックアップがあれば復旧できる」はウソ? 確実なデータ復旧に必要な備え
Q ランサムウェアに侵入されてもスムーズに復旧できるバックアップ環境を構築するにはどうすればよいですか?
A 単にデータを保存するだけでなく、社内ネットワークから隔離された安全な環境で複数世代のデータを長期間保管することが必要です。
IIJは、オンプレミスやMicrosoft 365のデータをIIJのデータセンターで安全に保護・保管する「IIJシンプルバックアップサービス」と、バックアップ取得・復旧時にマルウェアが含まれていないか自動で検知・統合管理までできる「IIJセキュアエンドポイントサービス」を提供しています。
まとめ
高度化するランサムウェア攻撃に対して、侵入を完全に防ぐことはもはや不可能です。自社だけで抱え込まず、平時から信頼できるパートナーと連携し、バックアップ環境の整備やインシデント対応の準備を進めることが重要です。IIJのような専門家の支援やワークショップを活用しながらサイバーレジリエンスを高め、万が一の事態にも慌てず即座に対応できる体制を構築していきましょう。
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