洋式トイレに取り付けることで、より快適さを増す「温水洗浄便座」。最近では公共施設でも取り付けられるケースが増えており、賃貸住宅でも標準装備されることが増えています。「ウォシュレット」「シャワートイレ」と呼ばれることもありますが、全社はTOTO、後者はLIXILの登録商標で、各社の製品でのみ使われます。
そんな温水洗浄便座ですが、ここ数年で結構進化しています。この記事では、税込み実売価格が5万円を切る、手頃な温水洗浄便座の選び方と、それをふまえたお勧め商品を紹介します。
温水洗浄便座を買う前に、設置場所の物理的な条件をよく確かめる必要があります。先の「おことわり」で述べた通り、設置場所によっては追加工事が必要になるからです。どのようなポイントをチェックすべきか、簡単に列挙します。
温水洗浄便座は、コンセントからの給電で水を噴射したり温水を生成したりします。そのため、トイレにコンセントがあるかどうかを必ず確認してください。ない場合は、追加工事が必要です。
温水洗浄便座が使う水は、原則として水洗トイレへの配水管から取ります。具体的には、トイレ内にある「止水栓」と水タンクへの配水管の間に「分岐水栓」を挟み込むことで、温水洗浄便座にも水を供給できるようにします。
原則として、温水洗浄便座には分岐水栓が1つ付属しており、必要な工具さえあればDIY(自力の工事)でも取り付けられます。メーカーも、取り付け手順をWebサイトで公開しています。
しかし、分水栓の形状によっては、付属する分岐水栓を挟み込めない場合があります。分岐水栓を挟み込めない場合は、止水栓を取り換える工事が別途必要です(専門業者への依頼をおすすめします)。
分岐水栓から温水洗浄便座に水を供給するための「給水ホース」も、温水洗浄便座に付属しています(分岐水栓と一体化している場合もあります)。これも、必要な工具さえあればDIYで取り付けられます。
ただし、止水栓の位置によってはホースが長すぎる、あるいは短すぎる場合があります。付属するホースの長さは、カタログや取扱説明書に記載されています。止水栓から便座の給水口までの距離に応じて、以下の対応を取るとよりキレイに設置できます。
自分で温水洗浄便座を設置する場合、事前に以下の工具類を準備しておきましょう。
工事は必ず水道の元栓を閉めて行ってください。
温水洗浄便座を設置する際に、便器や付帯する機器(タンクなど)の寸法を必ずチェックしてください。寸法が足りない場合、便座のふたを開けられなかったり、うまく座れなかったりする可能性があります。
最近の国内メーカーの便器はJIS(日本工業規格)で定められたサイズに従っており、便器の開口部の長辺の長さは以下のいずれかに収まっています。
(※1)TOTOでは「エロンゲート」と呼んでいます
最近の後付けタイプの温水洗浄便座は、基本的にJIS規格の「標準」「大型」どちらの便器にも組み合わせられる設計となっています。この場合、標準サイズの便器に設置すると便器から少しはみ出る場合がありますが、利用上の問題はありません。
一方で、現行のJIS規格に従っていない古い便器では、温水洗浄便座を取り付けられない、あるいは取り付け時に別売パーツが必要となる場合があります。
JIS規格に従っている場合でも、異なるメーカーの便器と組み合わせると、細かい仕様の差異によってしっかり固定できない場合があります。この場合、固定するための別売パーツが用意されていることが多いです。
購入する前に、便器やタンクの寸法と、便器の型番(場合によってはタンクの型番)を調べておくことを強くおすすめします。
検討する前の前提条件を説明した所で、チェックすべきポイントを見ていきましょう。
温水洗浄便座は、温水でおしりを洗浄するわけですが、その温水を生成する方法が大きく2つに分かれます。
「貯湯式」は便器内のタンクにためた水をヒーターで温めておく方式で、今回紹介する価格帯の商品で多く採用されています。1度にたくさんのお湯を使えることが何よりのメリットですが、タンクが空になるとお湯が出てこない、保温のための電気代がかかるというデメリットもあります。貯湯式を選ぶ場合は、ノズルの噴射量に対するタンク容量も合わせてチェックすると良いでしょう。
「瞬間式」はノズルの近くにあるヒーターで随時水を温める方式です。都度温めるため、湯切れの心配がないことや電気代を節約しやすいというメリットがある一方で、本体価格が高い、一気に噴射できる水量が少ないというデメリットもあります。
温水洗浄便座は、シャワーの噴射/停止などの操作を「リモコン」で行います。このリモコンは、便座と一体となっている場合と、便座から分離している場合があります。
便座と一体となっているリモコンは、取り付ける場所を考えなくて済むことが何よりのメリットです。リモコンのために追加の電源が必要ないことも利点で、賃貸住宅でも壁に傷を付けずに設置できます。
一方で、リモコンが一体化されることで設置に伴い横幅を余計に取ることがデメリットです。床掃除の際にリモコンが邪魔になることもあります。
リモコンが便座から分離している場合は、横幅に制約がある場所に設置しやすいことがメリットです。また、リモコンを操作しやすい高さに調整しやすいことも利点です。何より、リモコンが床掃除の邪魔をしません。
一方で、リモコンを壁面に設置することになるため、壁への穴開けに一定の制限がある賃貸住宅には設置しづらいことが大きなデメリットです。また、同じ機能やスペックを備える「リモコン一体型」と比べると価格が高くなることにも注意しましょう。
後付けできる温水洗浄便座の価格帯は、非常に幅広いです。もちろん、高価格帯の商品の方が多機能ですが、場合によってはそれほど多機能でなくてもいいという人もいるはずです。
この記事では、税込みの実売価格が5万円以下となるベーシックなモデルの中から、特におすすめの商品を紹介します。
温水洗浄便座の草分け的存在であるTOTOの「ウォシュレット」シリーズのエントリーモデルです。ボディーカラーは「ホワイト」「パステルアイボリー」「パステルピンク」から選択できます。
温水供給は貯水式で、タンクは0.64Lを備えます。洗浄後の汚水がかかりにくい「斜め吐水」設計のノズルを採用しており、万が一汚れが付いた場合もサッと掃除できるようになっています。トイレの利用頻度を学習して、利用しない時間帯に便座の温度を自動で下げる機能も備えています。
使い終わった後に迅速に脱臭する「パワー脱臭」機能も備える他、便座の下部を掃除しやすい工夫もなされています。
東芝ライフスタイルの温水洗浄便座「クリーンウォッシュ」シリーズのエントリーモデルです。ボディーカラーは「パステルアイボリー」のみです。
温水供給は貯水式で、タンクは約0.6Lを備えます。洗浄水に気泡を混入することで当たりを柔らかくする「エアイン洗浄」や、ノズルを前後に動かす「ムーブ洗浄」にも対応しています。
着座する度に自動で脱臭運転を行う「オート脱臭」にも対応しています。
LIXIL(INAXブランド)の温水洗浄便座「シャワートイレ」シリーズのエントリーモデルです。ボディーカラーは「オフホワイト」のみです。脱臭機能付きのないモデル(CW-RG1)と、あるモデル(CW-RG2)の2つを取りそろえています。
温水供給は貯水式で、タンクは約0.63Lを備えます。着座後にスイッチを押すとノズルを清掃する機能を備えている他、ノズルの先端部を簡単に交換できるようになっています(交換用ノズルは別売です)。他メーカーの製品とは異なり「おしり用」「ビデ用」で分けていることもポイントです。
便座の下部を掃除しやすい工夫もなされています。
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