最近、テレビ放送やインターネット動画だけでなく後からアプリを追加して便利に使える「スマートテレビ」が増えています。特に40型台以上の大画面テレビでは、スマートテレビの比率が高まりつつあります。
スマートテレビには幾つかのプラットフォーム(OS)があるのですが、一番採用するメーカーが多いのが「Android TV」です。ソニーの「BRAVIA(ブラビア)」、シャープの「AQUOS(アクオス)」、TVS REGZA(旧東芝映像ソリューション)の「REGZA(レグザ)」などがAndroid TVを使ったスマートテレビをリリースしています。
この記事では、スマートテレビの“そもそも”論やAndroid TVの長所と短所を解説した上で、主要なメーカーのAndroid TV搭載スマートテレビ紹介していきます。
特記のない限り、「Android TV」には「Google TV」を含みます。両者の“違い”は後述します。
デジタル放送に対応するテレビは、超廉価モデルを除いて「双方向データ放送」に対応しています。双方向データ放送を利用するにはインターネット接続が必要となるため、インターネットに接続する機能を備えるテレビ自体は少なくありません。中には、インターネット接続する機能を生かして、家庭内のネットワークにつながっているレコーダーやパソコンにある動画(録画番組)を楽しむ機能やネット動画を楽しむ機能を備えるものもあります。
スマートテレビは、テレビのネット接続機能をより進化させて、後からアプリを追加したり更新できるようにしたものです。モデルによってはOSのバージョンアップや発売時に無かった機能の追加が行われるケースもあり、ある意味でスマートフォンに近いテレビといえます。
スマートテレビのOSは幾つか種類があり、メーカーによって採用するものが異なります。主要なスマートテレビ用のOSを簡単に紹介します。なお、各メーカーにおいて全モデルがスマートテレビ用OSを採用しているとは限らないので、カタログなどで採用状況はしっかりと確認してください。
「webOS」は、LG Electronics(LG)が開発しているスマート家電用OSで、同社製のスマートテレビに採用されています。
元々、webOSはPalm(現在のHP)という企業が「Linux(リナックス)」をベースにスマホ/タブレット向けのOSとしてとして開発を進めていました。しかしLGが2013年にHPから事業ごと買収して、現在に至っています。
LGはwebOSを他社にもライセンスするとしていることから、今後同社以外のメーカーからもwebOSを採用するスマートテレビが登場する可能があります。
「Firefox OS」は、Webブラウザ「Firefox」で知られるMozzilla(モジラ)がLinuxをベースに開発していたOSです。スマートテレビ用OSとしては、パナソニックが採用しています。
「開発していた」という言葉からも分かる通り、Mozilla自身は2016年をもってこのOSの開発とサポートから撤退していますが、パナソニックがスマートテレビ用OSとして開発を継続しています。
「Fire OS」は、Amazonが自社ブランドの「Fireタブレット」や映像投影デバイス「Fire TVシリーズ」で利用するためにAndroid OSをベースとして開発したOSです。Amazonが提供するアプリストアから各種アプリをダウンロードして使うことができます。
海外では、Amazon自らが手がけるものを含めて複数のメーカーからFire OSを搭載するスマートテレビが発売されています。日本では今まで未発売でしたが、3月4日にヤマダホールディングスが発売する船井電機製の「FUNAI Fire TVスマートテレビ」が初めてのFire OS搭載スマートテレビとなります。
この記事で紹介する「Android TV」は、その名の通り◆◇スマホやタブレット端末で使われている「Android OS」をテレビ用にアレンジしたOS◆です。詳しい説明は後の項目に任せますが、冒頭で触れた通り採用するメーカーが多いため選択肢も多いことが魅力です。
Android TVを搭載するのはスマートテレビの他、HDMI入力端子を備えるテレビやディスプレイにつないで使う「セットトップボックス(STB)」や映像投影デバイスでも採用例が多く、手持ちのテレビをスマート化するのにも使えます。
Android TVを搭載するスマートテレビにはどのようなメリットがあるのでしょうか。主なものをチェックしていきます。
先述の通り、Android TVはAndroid OSをベースとしており、Android用のアプリを利用できます。アプリのインストールは、スマホやタブレットでもおなじみの「Google Play」から行えます。
Android TVに最適化されたアプリであれば、リモコンを使ってスムーズに操作可能です。スマートテレビのUSB端子、あるいはBluetoothによるワイヤレス接続を利用すればキーボードやマウスをつないでより快適に利用できます。
Android TVでは、Googleの音声認識エージェント「Googleアシスタント(Google Assistant)」を利用できます。AndroidスマホのGoogleアシスタントと同様に、音声認識でインターネット検索をしたり、アプリを起動したり、「Google Home」に対応するスマートデバイスを操作したりできます。
なお、AndroidスマートフォンやGoogleアシスタント対応のスマートスピーカー/スマートディスプレイでは「OK Google」「ねえ、Google」「Hey Google」といったウェイクワード(音声認識を開始するための呼びかけ)を言ったり画面上のマイクボタンを押したりして操作をしますが、Android TV搭載のスマートテレビではリモコン上のGoogleアシスタントボタンを押してリモコンに話しかけるようになっています(※1)。下手なスマホやスマートスピーカー/スマートディスプレイと比べると誤操作が少なくなるのもメリットといえます。
(※1)リモコンのマイクを常時待機できるモデルの場合は、ウェイクワードによる認識操作も可能です
ちなみに、逆に他のGoogleアシスタント対応デバイスからAndroid TV搭載スマートテレビを操作することも可能です。例えば「OK Google、(テレビの名称)の電源を付けて」と話しかければ、当該のテレビの電源をオンにできますし、「OK Google、(テレビの名称)の電源を切って」と話しかければ電源をオフにできます。「OK Google、(テレビ局名またはチャンネル番号)に切り替えて」と話しかければテレビのチャンネルを切り替えられます。
Android TV搭載スマートテレビの多くは「Chromecast built-in」認証を取得しています。その名の通り、この認証はGoogleのキャストデバイス「Chromecast」の機能を内蔵していることを示しています。Chromecast(Google Cast)対応のアプリから映像を投影できる他、一部のAndroidスマホでは画面表示をそのまま投影できます。
Chromecast対応アプリ/スマホから映像を投影する場合は、Android TV搭載スマートテレビと同じローカルネットワーク(LAN)につなげる必要があります。ただし、ルーター/アクセスポイントの設定によってはうまく投影できない場合もあるので注意してください。
一方で、Android TV搭載スマートテレビにもデメリットはあります。スマートテレビに共通する“課題”的なデメリットも含めて、購入の検討に当たってはしっかりと考慮すべき事項なので頭に入れておきましょう。
スマートテレビでは、セキュリティ上の問題に対する「セキュリティ更新」、OSのバージョンアップや機能追加を目的とするファームウェア(ハードウェアを稼働するためのソフトウェア)の更新が行われます。スマホやタブレットと比べると頻度はそれほど多くありませんが、おおむね2〜6カ月に1回は更新が配信されます。
一方で、スマートテレビはファームウェアの更新がいつまで行われるのか不明瞭であるという問題点があります。このこと自体は一般的なデジタルテレビでも同様なのですが、アプリを自由にインストールできるスマートテレビの場合、ファームウェアのアップデートが行われない場合のセキュリティ上のリスクがより大きくなります。
Androidスマホの場合、法人(企業)での利用を想定した機種に対する「Android Enterprise Recommendation」という認証プログラムがあり、認定機種は少なくとも1回のOSバージョンアップとセキュリティパッチの配信保証期間の明示(※2)を義務付けられます。しかし、Android TVはOSバージョンアップの実施やセキュリティパッチの配信保証期間を保証する仕組みはないので、購入時の想定より早く更新が終わってしまう可能性も否定できません。
多くのメーカーでは、テレビの補修部品の供給期間(生産終了から5年)を目安にファームウェア面でのサポートを終了するものと思われます。いつかは更新されなくなるということは考慮に入れるようにしましょう。
(※2)セキュリティパッチの配信は、Googleが公開してから90日以内に行う義務もあります
先ほどのファームウェアと同様に、スマートテレビの要となりうる各種サービス(アプ)リのサポートがいつまで行われるかも不明という点も留意すべきポイントです。
スマホ向けのサービスでは、リリースから5年以上を目安に端末(OS)にサポートを打ち切るかどうかが検討される傾向にあります。Android TV搭載スマートテレビでも、発売から5年を経過すると利用できないサービスが出てくる可能性があることは念頭に置いておいた方が良いかもしれません。
主要な動画配信サービスには、Android TV向けアプリが提供されています。しかし、一部の動画配信サービス用アプリは特定のモデル(機種)でのみダウンロードとインストールを許可する「ホワイトリスト」制を取っています。対応機種に含まれないスマートテレビでは、Google Playでアプリの検索が行えなかったり、インストールはできても起動できなかったりすることもあります。
特に、以下の動画配信サービスを使いたい場合は、買おうとしているモデルで対応をうたっているかどうか必ず確認するようにしてください。
なお、「非対応サービスをどうしても使いたい!」という場合は、スマートかどうかはさておき、キャストデバイスを別途購入してつなぐと対応できます。
最近、一部のメーカーから「Google TV」を搭載するスマートテレビが登場しました。「Android TVと何が違うの?」と思うかもしれませんが、結論からいうとGoogle TVもAndroid TVの一種です。
「じゃあ、何でわざわざ名前を変えてるの?」という点ですが、Google TVはホーム画面のユーザーインタフェース(UI)が新しくなっており、具体的には以下の特徴があります。
日本国内でAndroid TV(Google TV)を搭載するスマートテレビを発売している主なメーカーは以下の通りです。
ソニーのテレビ「BRAVIA(ブラビア)」では、4K(3840×2160ピクセル)以上の液晶/有機ELパネルを搭載する現行モデルでAndroid TVを採用しています。比較的新しいモデルは新UIであるGoogle Homeに準拠します。
メーカー独自の機能として、Appleの「AirPlay」を使った無線による映像投影や、同社の「Apple HomeKit」やAmazonの音声エージェント「Alexa(アレクサ)」を使った音声操作にも対応します(HomeKit/Alexa対応デバイスのコントロールはできません)。
シャープのテレビ「AQUOS(アクオス)」では、4K以上の液晶/有機ELパネルを搭載する現行モデルのうち「ネット動画対応」となっているものがAndroid TVを採用しています。
独自アプリ「COCORO VISION(ココロビジョン)」を使うと、同社製スマート家電との連携機能を含む便利な機能を利用できます。また、放送とネットサービスを高度に融合した
TVS REGZA(旧東芝映像ソリューション)の「REGZA(レグザ)」では、4K液晶/有機ELパネルを搭載するモデルのうち、2021年モデル以降の「タイムシフトマシン」非対応モデル(シリーズ名の末尾が「K」)においてAndroid TVを採用しています。
REGZAはゲーミング機能が充実していることが特徴で、Android TV搭載モデルも例外ではありません。ゲーミングPCや据え置き型ゲーム機用のディスプレイとしてもおすすめです。
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