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【付録】タンブラー・枕・ポーチ……ヒット連発の宝島社グッズ 人気ブランドとのコラボ秘話、リーズナブルな価格戦略などを担当者に聞いてみた

» 2023年04月15日 10時00分 公開
[南たな子Fav-Log]
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 宝島社は、ファッション雑誌を中心に付録付き雑誌やムックでもおなじみの出版社。特に、人気ブランドとコラボしたアイテムや「Uber Eats」の配達用バッグ型ポーチなどのユニークなグッズが話題となっています。

フォト 宝島社『ROPE PICNIC 推し活がはかどる! スマホショルダーバッグBOOK』

 今回は、同社マルチメディア編集局局長の藤定さんに、その特徴や強み、そして今後についてうかがいました。

南たな子

南たな子

Fav-Log編集部員として雑誌・書籍や生活家電、キッチン用品、スマートウォッチなどを担当。大学卒業後はテクノロジー関連の専門誌の記者や経済系メディアの記者・編集者として働く一方で、私生活では2児の母。趣味は読書で、好きなジャンルはハードボイルド。大沢在昌作品は見逃しません。また温泉巡りも趣味。愛車はホンダ・フリード。

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通常の雑誌やムックと異なる“マルチメディア商品”という位置づけ その強みとは

――宝島社の雑誌・ムックのさまざまな付録が話題で人気です。どのような経緯で誕生したのでしょうか?

マルチメディア編集局 局長 藤定(以下、藤定):従来から、弊社社長の意向として出版流通を使ってグッズがメインとなる本を売りたいという考えがあり、アイテムが主体となる本格的な商品は、2005年頃から発売を始めました。現在に至るまでさまざまな商品が生まれています。

――雑誌やムックとはアプローチが異なるということでしょうか?

藤定:雑誌は、定期的に刊行している出版物で、一般的に週刊・月刊・季刊などがあります。さまざまなテーマの記事を掲載しています。

フォト 宝島社『リンネル 5月号』(出典:Amazon

 ムックは、「magazine」と「book」をかけ合わせた造語で、雑誌と書籍の中間に位置するような刊行物です。雑誌に似ていて、大きめの版型で写真や図版が多いものが一般的ですが、異なるのはワンテーマを掘り下げるような内容になっていることです。弊社では、レシピ本や健康、マネー、旅行、飲食店などをテーマにしたムックを多数刊行しています。

フォト 宝島社『自分だけの一杯を見つける 美味しいコーヒーの淹れ方』(出典:Amazon

 そしてアイテムが主体となる刊行物を、弊社では“マルチメディア商品”として力を入れています。本として流通しており、冊子(本部分)も商品に含まれています。

――なるほど、マルチメディアはアイテムが主な商品となるのですね。その強みとは何なのでしょうか?

藤定:”マルチメディア商品”は、出版流通にのせることで、全国に行き渡らせることができ、書店やコンビニエンスストアで販売が可能なため、購入者にとって気軽に入手しやすいという強みがあります。

 また、コラボ企業にとっても通常商品とは異なる販路として、書店やコンビニの雑誌コーナーに置かれるので、パブリシティや認知拡大、新規顧客の獲得というメリットがあります。その企業やブランドの店舗がない地域にも行き渡らせることができるのも大きな利点です。

 さらに、”マルチメディア商品”にはコンビニでは透明のパッケージで販売しているという特徴もあります。昨今はオンラインで購入できる商品も増えていますが、実際に商品を見て購入したいというニーズも多く、そうした声に応えた戦略です。アイテムが主となる商品だからこそ、現物を見ることができるように工夫しています。

フォト 宝島社『釣り竿セット付きBOOK』(出典:Amazon

 通常の雑誌付録と比較すると、“マルチメディア商品”はサイズや価格の自由度が高いため、布団やマクラ、釣り竿など、さまざまなアイテムを制作することができます。さらに定期刊行物ではないため、基本的には販売終了期間が明確に設けられず、人気のアイテムを長期にわたってお届けできるのも魅力です。

 一方、雑誌にはその雑誌ごとの読者がいて、各読者のニーズに合わせたブランドやアイテム付録を制作できる強みがあります。また、月刊誌ならではの、基本1カ月など販売期間が決まっているからこそ希少価値を感じられるなど、雑誌、”マルチメディア商品”で比較するとそれぞれに別の強みがあると考えています。

人気ブランドのグッズが低価格で手に入る! その理由とは

――「CLATHAS スマホポーチBOOK」など、人気ブランドアイテムを低価格で販売できる秘訣・理由はあるのでしょうか?

藤定:全ての商品において、読者にとって買い求めやすい価格設定となるように企業努力を行っています。

 弊社では2005年から付録の枠をこえた本格的なグッズを付ける企画を実施していて、アイテムの制作はもちろん、出版流通の制約をクリアして、安定して流通可能なパッケージの制作も含めたノウハウがあります。常に読者に喜んでもらえるように、コストや品質の部分においても、編集者自らが担当して、生地や材料の選択、仕様設計、また輸送時のコンテナに入る数の考慮までしています。

フォト 宝島社『CLATHAS スマホポーチBOOK』
フォト 宝島社『CLATHAS スマホポーチBOOK』

――出版流通の制約とは、具体的にどのようなことなのでしょうか。

藤定:出版流通には、パッケージに対する決まりがあります。例えば、本屋さんで陳列できるよう平たくなければならなかったり、本の形(A4など)であったりなど必要とされる項目があります。

 魅力的なアイテムづくりをすることはもちろんですが、それが出版流通で流通できないものは販売が難しいので、アイテムづくり+パッケージ制作のノウハウも必要不可欠となります。

フォト 宝島社『CLATHAS 超軽量 2WAY SHOULDER BAG BOOK』
フォト 宝島社『CLATHAS 超軽量 2WAY SHOULDER BAG BOOK』

――リーズナブルにアイテムを販売できる、“マルチメディア商品”ならではの理由・強みはありますか?

藤定:同じ商品でもサイズ違いや柄違いなどを制作するアパレル商品などと比べると、“マルチメディア商品”は全国の書店やコンビニに1つの商品を広く展開するため、1商品当たりのロット数が大きく、スケールメリットがあります。そのため、いいものを安くお届けできます。

フォト 宝島社『ROPE PICNIC 推し活がはかどる! スマホショルダーバッグBOOK』
フォト 宝島社『ROPE PICNIC 推し活がはかどる! スマホショルダーバッグBOOK』

ユニークなグッズはどのようにして誕生しているの?

――「Uber Eats 配達用バッグ型 2WAY ポーチ BOOK」など、ユニークな商品が多いですが、こういった企画・アイデアはどのように出てくるのでしょうか?

藤定:リサーチする際、SNSでのトレンドを追うことはもちろん、日常生活の中でどんなものを多く目にするかを意識しています。また、友人との会話で多く出てくる話題も、企画を考えるときのヒントになります。

フォト 宝島社『Uber Eats 配達用バッグ型 2WAY ポーチ BOOK』
フォト 宝島社『Uber Eats 配達用バッグ型 2WAY ポーチ BOOK』

 例えば Uber Eats は、

1.日常会話でもよく出てくる

2.街中でもバッグをよく見る

3.自分や周りの人もよく利用している

 と、世の中で需要の高い企業であり、分かりやすいアイコンがあるブランドだなと思いポーチ化を考えました。アイテムを作る編集部なので、知名度が高く、モノとの親和性の高いコンテンツを常に探しているからこそできた商品だと思います。

 弊社の企業理念が「人と社会を楽しく元気に」で、単なるグッズに留まらず、持っていて嬉しい気持ちになったり、写真を撮影してSNSでアップしたくなったり、お部屋に置いておいて癒されたりなど、付加価値がある企画で重要視しています。

――どれくらいのアイデアが出るのでしょうか?

藤定:毎週の企画会議で、100本近くの企画出しが行われ、そこから厳選された企画を商品化しています。カルチャーが好きな編集者が集まっているので、ファッション、音楽、キャラクター、イラスト、インフルエンサー、企業コラボなど、幅広いジャンルからネタ探しを行っています。

もっとも反響のあった商品とは

――もっとも反響があった商品や、思い入れのある商品はありますか?

藤定:「真空断熱タンブラー」はシリーズ累計で470万部を突破しています。タンブラーが真空断熱の二重構造になっていて、飲み頃温度が長時間続くのが売りの商品です。

 2014年度に初めて『驚異の保冷・保温力 真空・断熱ステンレスタンブラー』として発売しました。当初は、ビールなどお酒を飲む男性をターゲットとした商品だったのですが、その後、女性編集者の発案で、コンビニで売られているアイスのカップコーヒーがそのまま入る「カップコーヒータンブラー」が生まれて、女性のお客様に受けるデザインを採用し、真空断熱タンブラーの購入者層が劇的に広がりました。

フォト 宝島社『Disney CUP COFFEE TUMBLER BOOK produced by サーティワン アイスクリーム』CHOCOLATE MINT with DONALD、VERY BERRY STRAWBERRY with DAISY、POPPING SHOWER with MICKEY、LOVE POTION #31 with MINNIE、A LOT OF LOVE with MICKEY & MINNIE、SHARE THE JOY with MICKEY & MINNIE
フォト 宝島社『Disney CUP COFFEE TUMBLER BOOK produced by サーティワン アイスクリーム POPPING SHOWER with MICKEY』

 コンビニでアイスコーヒーを購入して、デスクで飲む際に、氷が6時間溶けないのと、結露ができないのが好評なポイントです。「一度使うと、もうこれなしでは仕事ができないほどの必須アイテムとなった」と言っていただけています。

――シリーズ累計470万部とは、大ヒットですね。商品化する際に工夫した点などあれば教えてください。

藤定:2014年の『驚異の保冷・保温力 真空・断熱ステンレスタンブラー』の第1弾の開発時は、読者の皆様が口に含むものなので、安心安全な商品を届けたいという気持ちで、中国の工場まで赴いて検品をしてきました。真空断熱構造を作る巨大な製造装置を見たり、全数一個一個真空断熱に不良がないかの検品の様子を工場で見て、安心したのを覚えています。

 マルチメディア編集部の編集者は、アイテムのコストは追求しながらも、品質やデザイン、機能については、読者の人に喜んでもらえるように常に追求しています。

――逆に、「これは失敗だった」といった商品があればぜひお聞かせください。

藤定:書店では、雑誌と同じ商品棚に並ぶ関係で、基本A4判型のパッケージにおさまるようにサイズを設計しています。ある編集担当者が、その条件の中で布団を書店で売るという企画を検討したところ、上から見るとA4サイズには収まっていたのですが、厚み(高さ)が1m以上の巨大なサンプルが出来上がってしまい、これは流通も販売もできないと、断念してしまいました。

 それから、布団がダメならマクラをと考え、『天使の深睡眠マクラBOOK』が生まれました。こちらはシリーズ累計136万部のヒット商品となっています。

フォト 宝島社『天使の深睡眠マクラBOOK』
フォト 宝島社『天使の深睡眠マクラBOOK』
フォト 宝島社『ホテルマイスター監修 天使の深睡眠マクラBOOK ホテル仕上げ BOX PACKAGE』

――失敗したアイデアからも、ヒット商品が生まれるのですね。その他、「こんな案もあったけれど、商品化に至らなかった」ものなどありますか。

藤定:機能を追求した財布づくりをしていて、ある編集者が「通帳も実印も入る財布」があったら便利なのでは!? というアイデアを元にサンプルまで作成したのですが、社内商品会議で、この財布を落としてしまったら大事なものがすべて無くなるので大変! とのことでボツになりました。

“マルチメディア商品”の今後について

――どのような読者層が多いのでしょうか。傾向などあれば教えてください。

藤定:書店に加えて、コンビニエンスストアでも販売されているので、幅広い層に購入されています。今は40代〜50代の女性に、スマホショルダーや多機能財布が人気です。また「お部屋ライト」シリーズは、20代も含めた幅広い層に人気のグッズです。

フォト 宝島社『クロミ お部屋ライトBOOK special package ver.』
フォト 宝島社『ハローキティ お部屋ライトBOOK special package ver.』
フォト 宝島社『ポムポムプリン お部屋ライトBOOK special package ver.』
フォト 宝島社『シナモロール お部屋ライトBOOK special package ver.』

 『呼び込み君 ポポ〜ポ ポポポ♪ ポ〜チ BOOK』は、TikTokで知ったけど、どこで売っているんですか? という問い合わせなどがありました。

フォト 宝島社『呼び込み君 ポポ〜ポ ポポポ♪ ポ〜チ BOOK』

――読者層は幅広いのですね。また、商品を知るきっかけも多様化している印象を受けます。工夫している点などあれば、教えてください。

藤定:今はSNSで知っていただく機会も増えています。これから夏にかけては真空断熱タンブラーも発売しますが、真空断熱タンブラーは男性の購入者も多いです。

 また同じ商品でも、書店とコンビニエンスストアでは滞在時間や来店目的、客層なども全く異なると思いますので、パッケージを変えて、読者の皆様に訴求しています。

――今後の商品展開について、方針や目標があればお願いします。

藤定:読者の方に「こんな商品あったんだ!」とか、「生活が楽しくなった」「癒される」「かわいい」など、お褒め言葉をいただきます。それは編集者にとっても開発の励みになっています。今後も、老若男女問わず大勢の読者に方に喜んでいただける、楽しい商品を作っていければと思います。

今回、取材にご協力いただいた、マルチメディア編集局局長 藤定さん

フォト 宝島社 マルチメディア編集局 局長 藤定さん

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