世界自然遺産に登録されている「屋久島」。「白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)」は、屋久島観光の中でも外せないスポットです。ジブリ映画「もののけ姫」の舞台となったことでも知られ、神秘的な森を鑑賞するために多くの人が訪れます。
今回は、「苔むす森」や歴史深い屋久杉の巨木など、見どころが詰まった「白谷雲水峡」をレポートします。
フリーランスライター兼アウトドアショップスタッフ。富士登山をきっかけにアウトドアにはまり、登山やキャンプ、トレイルランニングなど幅広いアクティビティを一年中楽しんでいます。勤務するアウトドアショップのお客さまから寄せられるお悩みや自身の山体験を生かし、リアルで深い内容を発信! リモートワーカーのため、仕事や日常を快適かつ生産的に行うためのガジェット選びも得意です。
白谷雲水峡は、鹿児島県・屋久島の北東部に位置するスポットで、林野庁が定めた自然休養林の1つです。もののけ姫の舞台であるとされており、劇中に出てくるようなコケ植物がびっしりと生えた岩や木の根が重なる神々しい雰囲気を味わうため、1年を通して多くの人が訪れます。白谷雲水峡の入り口までは、屋久島空港から車で約45分、フェリーなどが停泊する宮之浦港から車や路線バスで約30分。そこから歩いて森の中に入っていきます。
屋久島は雨が多く、水が豊富な土地でもあります。白谷雲水峡は林野庁の「水源の森百選」にも選出されており、透き通った美しい清流が眺められるのもポイントです。
筆者が白谷雲水峡を訪れたのは2021年3月中旬。入り口付近の川では、そのまま飲めてしまいそうなほどクリアな水がたっぷりと流れていました。天気に恵まれ、水面がキラキラと輝く様子も癒されます。
白谷雲水峡は、6.5kmほどの遊歩道が伸びているエリアで、自分の体力や時間に合わせてコースを調節できますが、最大の見どころである「苔むす森」は必ずおさえたいスポットです。入り口から90分ほど歩いた場所にあり、標識が立っていました。
ここは名前通り、青々としたコケ植物が森一面に広がるエリアです。高い木が多いので森の中は薄暗く、しっとりとした雰囲気。筆者が訪れた時間はまだ他の観光客も少なく、小川に流れる水の音だけが響いていました。人間の手が加えられていない森からは自然のパワーが感じられ、時間を忘れて見とれてしまいました。あまりに神秘的なので、サンや山犬のモロ、こだまが顔をのぞかせるのでは? と思ったほどです。
雨が頻繁に降り湿気が多い白谷雲水峡では、いたる所にコケ植物が生えています。屋久島には600種類以上のコケ植物が生息しているとされており、これは日本全体で生育しているものの3分の1にあたるそうです。
岩や木の根に近づいてみると、背丈や色、葉の形が異なるコケ植物がいくつも重なっているのが観察できました。これまでコケ植物を意識して見たことがなかったのですが、奥が深いですね。白谷雲水峡に行く際には、ぜひ間近で観察してみてください。
コケ植物を傷つけないよう、手のひらで優しく触れてみるとフワフワ、しっとり。ひんやりとしていて、トレッキングで火照った手のひらをほんのり冷やしてくれました。
屋久島を訪れたらぜひ注目したいのが、個性的な屋久杉の数々。15〜25mもの樹高を誇る巨木や空洞のある木など、特徴の異なる杉の木を見て回るのも面白いです。
七本杉は、途中で折れてしまった幹から7本の枝が千手観音のように生えている木。まっすぐに伸びた幹は堂々としていて、見上げると後ろにのけぞってしまいそうになります。
女神杉は、太い幹の周りに細い根が巻きついた形をしています。しなやかな曲線を描いていることから女性らしさが連想されて名付けられたようです。日光が当たるからかコケはあまり生えておらず、つるつるとした触り心地も楽しめました。
大きな空洞が特徴的な三代杉。そばに立てられていた説明看板によると、生きていた時代の異なる3つの杉が重なっているため、三代杉と呼ばれているのだとか。およそ1500年前に倒れた1代目の上に2代目が成長し、その上に3代目の杉が生え、現在も生きているそうです。テントのような形の空洞は、人が入れるほどの大きさ。屋久島に生息するヤクシカやヤクシマザルも、ここで雨宿りやお昼寝をしているのでしょうか。
体力や時間が許せば、苔むす森の先にある「太鼓岩」や「ウィルソン株」まで足を伸ばすのもおすすめです。太鼓岩は、苔むす森からさらに1時間弱歩いたところにある展望スポット。つるんとした丸い岩からは、屋久島の森や日本百名山である宮之浦岳を含む山々が見渡せます。森の中を歩くのとは一味違った開放感で、爽やかな気持ちに。何度も深呼吸をして、時間を忘れてのんびりしました。高度感があってスリル満点なので、高所恐怖症の人は要注意です!
空を見上げるとハート型に見えるウィルソン株も人気スポットです。樹齢3000年以上とも言われる屋久杉の切り株が空洞になっており、中に入ることができます。ちなみに、どこからでもきれいなハート型に見える訳ではないため、ベストポジションを探すのは少し難しく、筆者は10分ほどかかってしまいました……。足元に注意しながら、見上げる位置や角度を少しずつ変えてみてください!
白谷雲水峡に行く際には、動きやすくぬれても乾きやすい服を選びましょう。できれば、登山ウェアをはじめとするスポーツウェアが望ましいです。また、レインウェアの携帯も忘れずに。屋久島は雨の日が多く、湿度も高いので、乾きにくい服装だと不快感や熱中症につながります。また、登山靴など滑りにくい靴を履きましょう。舗装された道はほとんどなく、岩がゴロゴロと転がる道や、滑りやすい木道などが多くあります。安全にトレッキングを楽しむためにも、服装には注意しましょう。
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