東京モーターショーから名称を変更し、2019年以来4年ぶりに開催された「ジャパンモビリティショー2023」。自動車業界をはじめ、さまざまなモビリティ産業が出展し、二輪メーカー各社は近日中に発売予定のニューモデルを展示しました。
その中から今回は、来場したライダーの心をつかんだ小排気量車を中心とした新機種を紹介しましょう。
モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。
国内4メーカーの250ccクラスに、久しぶりにネオクラシカルなネイキッドモデルが復活しました。「W230」をジャパンモビリティショー(以下、JMS)で発表したカワサキは、かつて「エストレヤ」という250ccのネオクラモデルを1992年からラインアップしていました。
しかし、排ガスなどの法規制が厳しくなったことから、2017年のファイナルエディションをもって日本での販売を終了しています。
W230は、そんなエストレヤをほうふつさせるスタイリングを採用しており、排気量的にも後継機種といえるでしょう。しかしエンジンをはじめ、シャシーや外装はエストレヤとは全く異なります。
エンジンは、オフロードモデル「KLX230」の空冷シングルをベースに、外観をクラシカルに仕立てたもの。フレームは専用設計で、ホイールはフロント18インチ、リア17インチを採用しています。
カワサキはJMSでW230の国内販売を宣言したものの、発売時期や価格、そして詳細なスペックは未発表のままです。展示した車両も試作品ということで、発売までに細部が変更される可能性は少なくありません。
しかしかつてのエストレヤがそうであったように、リリースされたら若者や女性ライダーから人気を集めることは間違いないでしょう。
先に紹介したW230と同時に発表されたのが、兄弟モデルの「メグロ S1」です。車名に含まれる「メグロ」とは、かつて存在した目黒製作所という二輪メーカーのブランドのことで、1924年に創業し、1963年にカワサキ傘下となりました。
そして2020年11月、カワサキは55年ぶりにこのメグロブランドを復活させ、「メグロ K3」という800ccのモデルを発売しました。
メグロ S1は、新生メグロシリーズにおける第2弾にあたるモデル。W230をベースに、外装だけでなくエンジンの見た目もよりクラシカルに仕立てています。ちなみに、かつてのエストレヤは1964年に発売された「カワサキ 250メグロSG」をモチーフにデザインされており、メグロ S1という車名はそれに由来します。
こちらもW230と同様に発売時期や詳細スペックは未発表ですが、価格はW230よりもやや高めになるでしょう。
今春開催の東京モーターサイクルショーで市販予定車として展示されていた、ヤマハの原付二種ネイキッド「MT-125」が11月10日に発売されました。JMSのヤマハブースに展示されていたのは最新の量産モデルであり、一目見ようと初日から多くの人が集まっていました。
MT-125に搭載される水冷単気筒エンジンは、可変バルブ機構のVVAをはじめ、レバーの操作力が軽くなるアシスト&スリッパークラッチや、スロットルの開けすぎによるスリップダウンを軽減するトラクションコントロールなど、原付二種としてはなかなかに凝った技術を採用しています。加えて、49万5000円という価格はこのクラスにおいて非常に競争力が高く、人気が出ること必至でしょう。
先に紹介したMT-125をベースに、ネオクラシカルな外装を与えたのがヤマハの「XSR125」。12月8日に発売されます。昨今はネオクラ系の人気が高いことから、本命はスポーティーなMT-125よりもXSR125といえるでしょう。
直径37mmの倒立式フロントフォークやデルタボックスフレーム、そしてVVA採用の水冷シングルエンジンなど、プラットフォームはMT-125と共通で、XSR125の方が車重が1kg軽く仕上げられています。なおXSRシリーズは900/700とも根強い人気があり、125がそれに続くのは間違いないでしょう。
現在、原付二種クラスの販売台数はホンダの独壇場となっていますが、ヤマハがMT-125やXSR125、そしてここには掲載していませんがフルカウルスポーツの「YZF-R125」を投入することで、勢力図が大きく変わる可能性があります。
ホンダがこれをどう迎え撃つのか、スズキやカワサキに何か秘策はあるのかなど、各メーカーの今後の動向を期待せずにはいられません。
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