新旧問わず世界中のアニメや映画が視聴できる「Amazonプライム」。11月の視聴ランキングは、新作が出そろい『ダンダダン』や『MFゴースト 2nd Season』をはじめ、秋アニメの人気作が固まってきている印象を受けるラインアップ。一方で『ルックバック』など話題のアニメ映画がランクインするなど、イレギュラーな作品も存在感を発揮しています。
今回は「Amazonプライム11月の視聴ランキング(日本)」の上位3作品のアニメを紹介しつつ、ランキング結果の分析を行います。気になる作品があれば、ぜひチェックしてみてください。
本記事は、Amazon.co.jpのプライムビデオ視聴ランキング(2024年11月11日23:00現在)に基づいてランキングを集計しています
フリーライターとして、家電、家具、アニメ等の記事を担当。大学時代から小説や脚本などの創作活動にはまり、脚本では『第33回シナリオS1グランプリ』にて奨励賞を受賞、小説では『自殺が存在しない国』(幻冬舎)を出版。なんでも書ける物書きの万事屋みたいなものを目指して活動中。最近はボクシングをやりはじめ、体重が8kg近く落ちて少し動きやすくなってきました。好きなのものは、アニメ、映画、小説、ボクシング、人間観察。好きな数字は「0」。Twitter:@kirimachannel
総閲覧数4億4000万回超えのメガヒットを飛ばし、現在「少年ジャンプ+」にて連載中の漫画『ダンダダン』。漫画家・龍幸伸氏が描くオカルティック青春物語がサイエンスSARU制作のもとにアニメ化され、10月から放送がスタート。先月の5位から順位を上げ、11月は3位にランクアップ。日によっては1位や2位に入ることも度々見られ、安定した人気を獲得している模様で、今期の覇権アニメに推す人も少なくない状況です。
宇宙人の存在を信じる主人公オカルンと、幽霊の存在を信じるヒロイン・モモの2人が織りなす、オカルト×ラブコメ×バトルのおいしいもの全部乗せのドエンタメ作品。原作の魅力はさることながら、制作会社サイエンスSARUや主題歌を担当した「Creepy Nuts」との相性も抜群で、原作を知らない層にも一気に注目されることになったようです。
『ダンダダン』というタイトルが持つ擬音のリズミカルなイメージは、作中のテンポの良いバトルシーンや会話劇を思い起こさせるところがあります。この点については『ピンポン THE ANIMATION』や『映像研には手を出すな!』、『夜は短し歩けよ乙女』、『犬王』をはじめとした、サイエンスSARUの作品に見られる独特なダンスシーンと親和性のあるところで、原作と制作会社の作風がピッタリ合うポイントと言えそうです。
また「Bling-Bang-Bang-Born」で大ヒットを飛ばした「Creepy Nuts」の放つ、聞いていると踊り出したくなるようなテンポの良いラップも『ダンダダン』のノリ、作中のバトルや丁々発止な会話劇などのアップテンポなリズム感とフィットする印象です。オープニングテーマ「オトノケ」の映像も、11月12日時点ですでに960万回再生を突破。「Bling-Bang-Bang-Born」には及びませんが、昨今の音楽シーンをけん引する「Creepy Nuts」の力を存分に感じさせる数字と言えるでしょう。
このように原作、アニメーション、音楽が奇跡的な相乗効果を果たし、TVアニメ『ダンダダン』はなかなか見られない傑作として仕上がっています。そして、そのハイクオリティな作品に対し、純粋に観客の多くが魅了されている状況と言えそうです。
走り屋たちの熱い戦いを描いた名作『頭文字D』の未来を舞台に展開される、新たな公道最速伝説『MFゴースト 2nd Season』が先月に引き続き2位にランクイン。原作はしげの秀一氏によって「ヤングマガジン」にて絶賛連載中の漫画で、累計発行部数580万部を超えるヒット作です。
一見すると自動車にスポットライトを当てたややニッチな作品に思われますが、数ある秋アニメの中で2カ月連続で2位をキープしており、必ずしも車に詳しくないような視聴者層まで幅広く見られている模様です。
物語は世界の自動車のEV化が完了した近未来。そんな中、日本ではガソリン車を使って公道レースを行うモータースポーツ「MFG」が開催されており、世界中で人気を博していました。公道最速の称号を得ようと世界から実力者が集まり、しのぎを削っている中、1人の天才ドライバーが日本へ降り立ちます。
イギリスのレーシングスクールを卒業し、とある伝説の男から訓練を受けた青年カナタ・リヴィントンはチャレンジャーとして、世界最高峰のマシンが集う公道レース「MFG」への参加を決めます。ポルシェやフェラーリ、ランボルギーニなどの強力なマシンが並ぶ中、カナタが扱うのはトヨタ86GT。他と比べて非力なマシンで、カナタはレースを勝ち抜くことができるのか、新たな公道最速を決める戦いが繰り広げられます。
他と比べて劣るマシンで周りをアッと言わせる下剋上的な展開が魅力の1つです。また主人公のカナタ自身が、目的や素性、能力、過去などが分からない謎の天才として描かれており、徐々にカナタの秘密が開示されていく、ミステリー作品のような特徴も備えています。
さらにカナタの居候先で出会う女子高生&レースクイーンの西園寺恋との、ひとつ屋根の下で繰り広げられるピュアな恋模様、そしてレースを盛り上げる個性的なライバルたちとの戦いや友情劇など、ワクワクドキドキする描写が満載です。
サッカー選手として将来を有望視されている300人の高校生が、日本代表のストライカーの座を勝ち取るために、熾烈な争いを繰り広げる、異色のサッカーアニメ『ブルーロック』の第2期が1位に輝きました。
原作コミックスが累計発行部数4000万部を超えるメガヒットを記録している他、今年の春に公開された『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』は観客動員130万人のヒットを飛ばし、各種コラボカフェやコラボイベントが精力的に行われるなど、第2期放送前の時点で人気にブーストを駆ける要素が満載で、順当に1位を獲得する格好となりました。
物語としても、過酷なセレクションを生き残った35人の高校生たちが、U-20日本代表と試合をすることになる、熱い展開が描かれており、注目のシーズンとなっています。
第1期でオープニングテーマを手掛けた「UNISON SQUARE GARDEN」が第2期でも疾走感のあふれるオープニングテーマ「傍若のカリスマ」を担当し、11月12日時点ですでに125万回以上の再生数を記録しています。鬼気迫るアニメーションはもちろん、第1期同様に音楽の力が作品の人気を後押ししている模様です。
10月に首位を獲得した『推しの子 第2期』に続き、11月は『ブルーロック VS. U-20 JAPAN』が1位となり、2カ月連続できれいごとを許さない、競争社会の厳しさや生々しさが描かれる作品が1位になっているのは印象的です。シビアな現実を生きる現代の観客の意識とリンクする部分があるのかもしれません。
3位の『ダンダダン』や5位の『ルックバック』、6位の『BLEACH 千年血戦篇』など計3作のジャンプ原作のアニメがランクインしており、先月に引き続きジャンプの勢いは強いままです。
一定数のファン層がすでに存在するシリーズものは盤石の人気を獲得しており、1位の『ブルーロック VS. U-20 JAPAN』や2位の『MFゴースト 2nd Season』、4位の『シャングリラ・フロンティア』、6位の『BLEACH 千年血戦篇』、7位の『Re:ゼロから始める異世界生活』、8位の『ドラゴンボールDAIMA』の6作品が入っています。
異世界転生ものも引き続き好調で、4位の『シャングリラ・フロンティア』、7位の『Re:ゼロから始める異世界生活』、9位の『歴史に残る悪女になるぞ』の3作品がランクインしている状況です。
また各世代に刺さるコンテンツがランクインしているのも興味深いポイントと言えます。『ブルーロック VS. U-20 JAPAN』や『ダンダダン』はまさに今の若者、Z世代を中心に人気の作品ですが、原作の連載時期が少し古い『BLEACH 千年血戦篇』はミレニアル世代やゆとり世代と呼ばれる層に刺さっているコンテンツと考えられます。
さらに昔、1984年に連載が始まった『ドラゴンボール』や、1990年代に連載が始まった『頭文字D』の世界観を引き継ぐ『MFゴースト 2nd Season』は、ミレニアル世代からX世代に刺さるコンテンツと言えます。
こうしてランキング結果を見ると、アニメを見る層が若者だけでなく中年層まで多様化していることが伺えます。昨今のリブートブームの傾向から考えても、今後は若者向けの新作アニメだけでなく、各世代に特化した形のアニメも増えてくることが予想されます。
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