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5.1.2 ルーティングプロトコル
●RIP(Routing Information Protocol)

 RIPは,Distance-vector(Bellman-Ford)型ルーティングプロトコルの一形態である。各ルーターが宛先までの距離(またはコスト)の情報を保持し,最短距離になるように経路を制御する。距離に基づいて経路を決定するので,「距離ベクトル型」と呼ばれることもある。一般的には距離情報にホップ数が利用される。ホップ数は通過するルーターの数で示されることがあるが,高速回線とバックアップ用の低速回線がネットワーク間を平行に結んでいる場合,同じルーター数になり,誤ったルートを選択することがあるので注意してほしい。

 経路情報を格納したルーティングテーブルは,隣接するルーターに対してのみ送信される。つまり,隣接するルーター間でルーティングテーブルを交換しながら,ネットワーク全体に分散的に適用してゆくのである。そのため,すべてのルーターのルーティングテーブルが更新されるまでには,かなりの時間がかかる。ネットワーク上のすべてのルーターが自分のルーティングテーブルに正しいルーティング情報を格納していれば,すべてのルーティングが最適な選択肢で実施される可能性が高まる。しかし,リンクまたはルーターに障害が発生した場合には,新しいトポリジーを反映するために,ネットワークを再構成する必要がある。もし,その再構成に時間がかかると,ネットワーク内に一時的なブラックホールやルーティングループが発生するおそれもある。したがって,すべてのルーターのルーティングテーブルの更新が完了し,インターネットワーキングが安定するまで,ある程度の収束時間が必要となることに注意してほしい。

Fig.5-2 RIPの動作概念
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 RIPは,ルーティングテーブルの更新情報を,ネットワーク上のほかのルーターに対して定期的に通知している。RIPバージョン1(RFC 1058)ではIPブロードキャストを使用して通知していたが,RIPバージョン2(RFC 1388)ではIPマルチキャストを使用する。デフォルトでは,30秒ごとにルーティングテーブルをほかのすべてのルーターにブロードキャスト送信するので,構成が非常に簡単である半面,ルーター同士で定期的にルーティングテーブルを交換するため,トラフィックが増加する。また,ホップ数も15以下に制限されているので,RIPは大規模なネットワークやWANなどには適していない。ネットワークの構成が頻繁に発生しない,ルーターが50台以下である,といった条件を満たす小規模なインターネットワークで使用したほうがよいだろう。

 Windows 2000 Serverに実装されているRIPでは,RIP for IPとRIP and SAP for IPXの両方がサポートされている。RIP for IPは,RIPバージョン2とバージョン1に対応している。また,ルーティングテーブルの更新情報は,30秒間隔またはトリガ更新によって通知される。トリガ更新は,回線に障害などが発生してネットワークトポロジーが変化し,IPルーターからルーティング更新メッセージが送信されたときに発生する。

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