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head1.gif 6.1 Windows 2000のターミナルサービス

 Windows 2000 Serverに収録されているターミナルサービスでは,従来のターミナルサービスと比較して次のような点が改善されている。そのため,ターミナルサーバーとターミナルサービスクライアントとのあいだで必要とされる帯域幅は大幅に減少している(平均4K〜15Kbpsで利用可能)。

  1. 処理結果となる画面情報のうち,変更された部分のみを圧縮して送信できる
  2. 頻繁に利用されるビットマップデータをクライアントにキャッシュする(1.5MバイトのRAM領域と10Mバイトのディスク領域が必要となる)
  3. フレームサイズが改善されている

 そのため,低速回線で接続されたモバイルユーザーやリモートアクセスユーザーでも,社内LANで接続されたPCからアクセスするのとまったく同じデスクトップ環境を,手軽に利用できるようになる。また,クライアント側にはアプリケーションやデータなどを格納する必要がないので,メモリやディスクといったハードウェア資源が貧弱でWindows 2000を導入できないようなコンピュータでも,Windows 2000の環境を利用できるようになる。

注意 ターミナルサービスが必要とするメモリは,3Mバイト程度でしかない。また,クライアントに要求されるハードウェア条件は,(1) VGA(640×480ドット,16色)以上のディスプレイ,(2) マウスとキーボード,(3) TCP/IPの実装,(4) Windows 95やWindows 98であれば8Mバイト以上,Windows NTであれば16Mバイト以上のユーザー利用可能メモリ,(5) リモートアクセスサービスやダイヤルアップネットワークを使用するのであれば28.8Kbps以上の回線,となっており,非常に低水準である。これ以外にも,Citrix社からリリースされる予定のMetaFrameを利用すれば,MS-DOS,Windows 3.1,Macintosh,UNIXなど,さまざまなプラットフォームでターミナルサービスクライアントを動作させ,Windows 2000環境を利用できるようになる。また,RDP(Remote Desktop Protocol)を実装している各製造元のWBT(Windows-Based Terminal)も利用できる。

 ターミナルサービスでは,サーバー側にユーザー環境やアプリケーション実行環境を構築するため,クライアント側のリソースを利用することはほとんどない。唯一,キーボードやマウス,画面を利用できるだけである。したがって,ローカルのハードディスクやフロッピーディスクなどを使用する必要性はないし,使用することはできない。しかし,Windows 2000のターミナルサービスでは,ターミナルサービスクライアントに接続されているプリンタを自動的に検出・追加し,アプリケーションからローカルプリンタに印刷できるようになっている(この機能を「プリンタリダイレクション」と呼ぶ)。また,Windows 2000 SDKに含まれている仮想チャネルサポートAPIを利用すると,オーディオ機器, スキャナ, バーコード読み取り機など,カスタムデバイスやカスタム機能を追加することができる。

 さらに,Windows 2000のターミナルサービスでは,インストール時に2つのモードのどちらかを選択できるようになっている。1つは,Windows NT Server 4.0, Terminal Server Editionでサポートされていたのと同様に,複数のクライアントからターミナルサーバーにアクセスし,サーバー上のクライアントアプリケーションを実行する「アプリケーションサーバーモード」である。もう1つは,Windows 2000で新たにサポートされたモードで,管理者がサーバーを遠隔地からリモート管理するために利用する「リモート管理モード」である。2つのモードはターミナルサービスをインストールするときにのみ選択可能なので,モードを変更するためには,ターミナルサービスをいったんアンインストールして,再度インストールする必要がある。

 アプリケーションサーバーモードは,サーバー側での集中処理を目的として利用することもできるが,リモート環境でのカスタマサポートやトレーニングなどに活用されることもある。たとえば,Active Directoryをネイティブモードに移行する過程で,エンドユーザーの教育を目的として活用する方法もあるだろう。Windows 2000 ProfessionalやWindows 2000 Serverを満足に動作させることができない古いPCを新しいPCへと移行するまでのあいだ,アプリケーションサーバーモードを利用し,エンドユーザーにWindows 2000に慣れ親しんでもらうという運用である。もっともこの場合,既存のクライアント/サーバーアプリケーションを修正したり,サーバー側に処理が集中するためにサーバーの過負荷を考慮したりする必要がある。

 リモート管理モードは,SMS(System Management Server)などの運用管理ソフトウェアのように多彩な管理機能(たとえば,インベントリ管理,ネットワーク管理,通報管理,ジョブ運用管理,性能管理,ソフトウェア配布管理など)を提供するわけではないので,システム全体を自動で運用および管理するような用途には向いていない。しかし,小規模なシステムでリモートサーバーの状態を監視したり,クライアントのセッションに割り込んで問題を解決したりといった用途には便利である。Windows 2000では,主要な管理作業のほとんどをコマンドプロンプトから実行できるようになっている。そのため,コマンドプロンプトでの操作に慣れてしまえば,GUIの操作にこだわる必要はない。とはいえ,日頃利用しているのと同じGUIのデスクトップ環境でリモート管理をしたいというニーズは確実に存在するだろう。このような場合には,リモート管理モードを使用するとよい。

 なお,すでに冒頭の注釈で示したとおり,アプリケーションサーバーモードで利用するには,別途ターミナルサービスクライアントアクセスライセンス(またはWindows 2000 Professionalライセンス)とWindows 2000クライアントアクセスライセンスが必要となる。これに対して,リモート管理モードで利用する場合には,2セッション分のライセンスが含まれているため,特に追加ライセンスを購入する必要はない。

注意 ターミナルサービスクライアントアクセスライセンスを「TS-CAL(Terminal Service-Client Access License)」,Windows 2000クライアントアクセスライセンスを「NTS-CAL(NT Server Client Access License)」と呼ぶこともある。

 本稿では,ターミナルサービスのリモート管理モードを中心に,その機能を検証する。

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