Exchange 2000徹底解剖
変貌するExchange 2000

「サーバー集約」の真実

 本文中で,Exchange 2000は分散プラットフォームの基盤であり,Exchange 2000を用いることで任意のサービスをネットワーク上の複数のサーバーに論理的にも物理的にも分散可能である旨を説明した。しかし,サーバーの物理的な分散が必ずしもTCO(Total Coast of Ownership)の削減に直結しないことは,読者諸氏もご承知のとおりであろう。そのために,「サーバー集約」という潮流が生まれていることも事実である。しかし,この「サーバー集約」のことを,「単なる分散PCの統合」あるいは「複数のPCサーバーを単一のUnixサーバーへと代替すること」と勘違いしている向きもあるように思われてならない。しかし,このような理解は,「サーバー集約」で果たすべき真の目的を歪めてしまうおそれがある。

 確かに,計画性のないサーバーの分散は,耐障害性や可用性を向上させないばかりか,かえって管理コストを上昇させたり,ユーザーの利便性を低下させたりすることがある。実際,組織内にボトムアップ的にLANやITインフラを導入した結果,IT部門の管理下にないネットワークやサーバーが組織内に点在し,組織の管理ポリシーが完全には反映されない独立自治区が生まれたり,管理コストが上昇してしまったりする例は少なくない。というより,LANの黎明期からネットワーク化に取り組んできた組織であれば,程度の差こそあれ,このような状況に陥っている側面があると思われる。

 本来,「サーバー集約」という潮流は,このように組織内に点在してしまったネットワークやサーバーをIT部門の管理下に再結集し,組織全体の管理ポリシーを適用しやすい生産的なネットワークに再編しようという考えから生み出されたものである。視点を変えてアプリケーション開発の側面から見れば,LANのネットワーク環境やクライアントのソフトウェア環境(たとえばDLLファイルのバージョン)などに左右されることがないように,ビジネスロジックをサーバー上に実装し,アプリケーションをn階層化しながらWebに対応させるために生まれた考えともいえる。

 どちらの角度から見るにせよ,「サーバー集約」という概念は,必ずしも分散PCプラットフォームを単一のUnixプラットフォームなどで置き換え,サーバーコンピュータの台数を単純に減少させることを意味するものではない。重要なことは,組織全体を管轄するIT部門が定めた管理ポリシーを確実に末端まで伝達できるようにネットワークを再設計する点にある。その結果として,サーバーコンピュータの台数が減少することもあり得るだろうし,変わらないこともあるだろう。

 くり返すが,「サーバー集約」という概念は,必ずしもサーバーコンピュータの物理的な台数を減少させることを意図したものではない。必要不可欠な範囲内でサーバーの管理をIT部門に集中させつつ,物理的なサーバーの配置を分散させたり,物理的なサーバーの台数を増やしたり,末端の管理作業を各部署の管理者に委任したりするほうが,必要な性能を維持するための管理コストや導入コストが低下したり,ユーザーの利便性が向上したりすることは十分にあり得る。この点は,肝に銘じていただきたい。

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