インターネットアプリケーション時代の企業ネットワーク再設計
>
アプリケーション形態の変革と物理ネットワークの再設計
|
|
|
Micorosoft社は,2000年6月22日に行われたForum 2000において,「.NET Framework」を発表した。.NET Frameworkのなかには,CLR(Common Language Runtime:共通の開発言語実行環境)などの重要なテクノロジも含まれるが,本稿ではSOAPのみに話を絞ってゆくことにする。
Forum 2000の発表によれば,2001年には,Windowsプラットフォーム上の新しい開発環境である「Visual Studio.NET」がリリースされ,SOAPも全面的にサポートされる。本稿の執筆時点でも,「.NET Framework SDK」を利用したり,現行バージョンの開発ツールであるVisual Studio 6.0に「SOAP Toolkit for Visual Studio 6.0」を組み合わせたりすることでSOAPを利用することは可能だが,本稿執筆時点ではWSDL(Web Services Description Language)やDisco(Discovery of Web Services)のドラフトにのみ対応している段階であるため,Microsoft社の開発製品で本格的にSOAPを利用できるようになるのはVisual Studio.NETのリリース後と考えたほうがよいだろう。
.NET Frameworkでは,SOAPサーバー(SOAPインタフェースを実装したサービスを提供する側)のことを「Web Service」,SOAPクライアント(SOAPインタフェースを実装したサービスを利用する側)のことを「Web Application」と呼ぶ。Web ServiceやWeb Applicationは,新たなWeb開発環境である「ASP+(Active Server Pages +)」というランタイムサービス上に展開される。このことからわかるとおり,Web ServiceはWebサーバー上に実装されることとなる。Web Applicationは,Visual BasicやVisual C++,あるいは新しい開発言語であるC#によって実装され,あたかもCOM(Component Object Model)のようにWeb Serviceを呼び出すことができる。
Fig.1-7 .NET Frameworkの概念図(図版をクリックすると拡大可能)
従来,ブラウザでホームページを表示するときには,(1)ブラウザからWebサーバーにHTTPリクエストを発行し,(2)それに応じたHTMLデータをWebサーバーがブラウザに返送し,(3)受け取ったHTMLデータをブラウザが解釈して表示画面をレンダリングする,という手順を踏んできた。しかしSOAPを利用する場合には,通常,開発者がVisual Basicなどで実装したWeb ApplicationによってHTTPリクエストが発行される。とはいえ開発者は,HTTPリクエストを発行するような手続きをわざわざ自分で実装する必要はない。Web Applicationのコードには,COMと同じような(COMをよく知らなければサブルーチンと考えてもよい)メソッドの呼び出し手続きを記述するだけですむ。つまり,Visual Studio.NETでは,プログラム内で実行されたWeb Serviceに対するメソッドの呼び出しが,内部的に適切なHTTPリクエストに変換されるのである。このHTTPリクエストは,イントラネット上またはインターネット上で公開されているWeb Serviceに送信される。HTTPリクエストを受け取ったWeb Serviceは,HTTPリクエスト中のSOAPインターフェイスを読み取り,必要な処理を実行し,結果をSOAPのインターフェイスで返すことになる。
以上のように,Web ServiceはWebサーバー上に実装される。Web Applicationから見た場合,Webサーバーは1つのDLL(Dynamic Link Library:実行時に動的結合されるプログラムの集まり)と考えればよく,ASP+は1つのCOM Class(1つのプログラム)を提供するものと考えることができる。SOAPによって,Webサーバーは単なる「コンテンツ発信サーバー」から「プログラムライブラリ」に変化するのである。
| 14/18 |
