インターネットアプリケーション時代の企業ネットワーク再設計
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いまさら聞けない!?ネットワーク機器再入門
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すでに述べたとおり,本稿中で語る「サーバー」とは,厳密には「サービス」であり,1台のサーバーPCを指すものではない。Windows 2000やWindows NTは分散を基調として設計されているOSであり,1サービスは1サーバーPCに実装することが基本となる。しかし,コスト上の観点から考えれば,1サービスを常に1サーバーPC上に実装することは難しく,どのようにサービスを集約するかが問題となる。サービスの集約は,ハードウェアの性能,利用者の数と利用率などを検討しながら進めることになるため,一般的な基準を示すことは難しい。本稿では,サービスを集約する場合に検討すべき基本的な指針を示しておこう。
ここで示す指針は,複数のサービスが同居する場面を想定して開発されているサービスを用いる前提で示している。アプリケーションによっては,特定のサービスと組み合わせると正常に動作しないものがある。サービスを集約する場合には,開発元に問い合わせ,動作保証の範囲とサポートの範囲を確認する必要がある。
- 基本機能サーバー
- ここで指す基本機能とは,ディレクトリサーバー,ネーミングサーバー,DHCPサーバーである。これら3つのサービスは,1つのサーバーPCで稼動させることが基本となる。
- インターネット用のWebサーバー
- インターネット用のWebサーバーは,ファイアウォール上に実装されたDMZに配置する都合上,社内用の各種サービスと集約することはできない。一般的には,データベースを使用したWebベース型アプリケーションを実装する場合に,Webサーバーとデータベースサーバーの集約を検討する場面が多いだろう。この場合,そのWebサーバーで提供するサービスの内容によって,データベースサーバーと集約すべきかどうかを決めることになる。
一般に広く解放されたWebサイトである場合,インターネットからのアクセスは規模も内容も予想できないため,Webサーバーとデータベースサーバーは個別のサーバーPCに実装すべきだろう。
特定のアカウント向けのWebサイトである場合,アカウント数に応じて判断する必要がある。ここで注意すべきなのは,同時接続アカウント数の予想である。1万人のアカウントに対してサービスを提供するWebサイトであったとしても,同時利用率が低く,同時接続数は10アカウント以内と予想されるのであれば,1つのサーバーPCにWebサーバーとデータベースサーバーを集約して実装できるだろう。これに対して,たとえ1000人のアカウントに対してサービスを提供するWebサイトであったとしても,同時利用率が高かったり,利用時間帯が集中したりして,同時接続数が100アカウント以上と予想されるのであれば,Webサーバーとデータベースサーバーを個別のサーバーPCに実装すべきである。
- イントラネット用のWebサーバー
- イントラネット用のWebサーバーであっても,基本的な考え方はインターネット用のWebサーバーと同様である。特定部門用のWebサーバーであれば,アクセス頻度も少ないため,その部門用のファイルサーバーなどと集約することも検討できるだろう。
- ファイルサーバー
- すでに述べたとおり,IPセグメント内のノード数は100台以内に押さえる必要があるため,ファイルサーバーに対する同時接続数は,ある程度限定したものとなる。このため,利用者セグメントに配置するファイルサーバーは,前述した「基本機能サーバー」と集約することを検討すべきだろう。
一方,サーバーセグメントに配置されたファイルサーバーは,その拠点のすべての利用者セグメントからアクセスされるため,同時接続数が多くなる。同時接続数が100件未満であれば,サーバーセグメントに配置された「基本機能サーバー」との集約を検討すべきだろう。
- 電子メールサーバー
- 利用者部門に設置する電子メールサーバーは,「基本機能サーバー」との集約を検討すべきであろう。同時接続数が50件未満であれば,「基本機能サーバー」「ファイルサーバー」「電子メールサーバー」の3つを集約させることも検討することができる。
- データベースサーバー
- データベースサーバーの負荷は比較的高く,その役割は基幹的な業務システムと直結することが多い。そのため,Webベース型アプリケーションと結び付けられたデータベースサーバーに限り,Webサーバーとの集約化を検討することができる。クライアント/サーバー型アプリケーションなど,ほかの形態をサポートするデータベースサーバーの場合には,ほかのサービスと集約させるべきではない。
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