Web/印刷をコスト改善するマルチパーパスCMS構築:CMSビジネス活用術(3)(2/2 ページ)
WebサイトのためだけにCMSを構築するのはもったいない。社内のコンテンツを一元管理することで、さまざまな目的に応用することができるのだ。
印刷コンテンツとのワンソースマルチパーパス
前述のコタツ事例の通販会社では、季節ごとに分厚い紙のカタログをすべての顧客へ膨大な印刷コストと配送コストを掛けて送っている。紙のカタログは情報一覧性が高く、美しいデザインや雰囲気のある写真などで商品訴求力を高めることができるため、Webがあるからといって廃止することはないようだ。
印刷カタログが必須だとするならば、CMSで管理するコンテンツを印刷カタログの制作に連携・利用できないものだろうか。これはCMSのコンテンツを印刷物のレイアウトを行うDTPソフトに渡すことで可能だ。
図1はDTPソフトで有名なAdobe InDesignとCMSを連動した例である。アドビ製品はXMP(Extensible Metadata Platform)をサポートし、データファイルにXMLメタデータを持つことができるので、XMLを介してCMSと連携できる。
さらに、DTPソフト上で行った文字修正などをCMSに戻すというソリューションも可能だ。問題は発注者と印刷会社間の実務的なワークフロー(EPSファイルなどの扱いを含む)をどのようにするかといった点である。実際にCMSとAdobe InDesignを連携・活用している例として、共同印刷のTrueNextがある。
【参考リンク】
TrueNext(共同印刷)
CMS導入による印刷物への効果
一般の企業にとってカタログ類の印刷費は、製品・商品の品質に直接影響するものではないため、できるだけコストを抑えたいというところだろう。図2はCMSで商品情報などのコンテンツを管理し、WebおよびDTPシステムに配信する仕組みを構築した場合に、いくら印刷コストが削減できるかを試算した例である。
分析してみると製品の紹介ページの「情報入力」「校正」のコストダウンにつながっている。CMSを商品情報管理システム(PIM)として必要なデータを一元管理できていれば、Webページを作ってはチェック、印刷物を作ってはチェックという手間を省くことができる。校正工程の省力化は、大きなコストインパクトがあるはずだ。また、これはミスの削減にもつながり、印刷のやり直しリスクの最小化にも効果があるだろう。
印刷に必要なソースデータを自社管理するということは、印刷会社や制作会社に競争原理をもたらすことにもつながる。間接財のサプライチェーンのように、いくつかの取引先から最適な納期とコストを提示したところに、任意に発注するという方法も可能になるかもしれない。
さらにコンテンツのデータベース化は、印刷物(特に繰り返し作成される定形カタログなど)の作成・修正リードタイムを短くすることにつながる。小ロット発注で最新カタログを常備し、しかも無駄なものを作らないという印刷ジャスト・イン・タイムにも道が開ける。あるいは製品付属の取扱説明書のようなものであれば、本体製品の製造プロセスと同期するように生産管理システムと連携するといったことも考えられるだろう。
Webサイト構築をWebだけ単独で考えずに、マルチパーパスにどう使えるかを構想して、コンテンツの粒度や構造を定義して“PIMを整備する”という視点で取り組めば、さまざまなシステムの基盤となり、BSCの4つの視点のすべてに大きなインパクトがあるだろう。これは将に、中長期的に挑戦する価値のある経営課題ではないだろうか。
著者紹介
デジタルアセット研究会
事務局 FatWire株式会社2003年から2005年度までの2年間、CMSをビジネスに活用するための各種技術や事例などをユーザー、SIer、デザイナー、印刷会社など20名程度の有志が毎月研究会を行っていた。この連載は、デジタルアセット研究会で話し合われてきた内容を基に構成したものである
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