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» 2006年09月08日 12時00分 公開

CMSビジネス活用術(2):企業にとって資産となるWebサイトの作り方

「商品紹介用のWebサイトは、紙のカタログをデジタル化したものだ」──そんなふうに考えていないだろうか? Webサイトの設計をユーザー/顧客視点で行うことは、商品情報というコンテンツの価値向上につながるものだ。

[デジタルアセット研究会,@IT]

 企業における企業活動の1つの指針として、「デジタル化度合」という尺度がある。イノセスというコンサルティング会社のWebサイトに掲載された記事「デジタル化がもたらす企業価値」によると、デジタル化度合とは、

デジタル化度合=デジタル化された情報量/総情報量


と定義されている。今回はこのデジタル化度合という観点を交えて、コンテンツのデジタル化の在り方について考察する。

資産になるコンテンツとは?

 コンテンツはデジタル化されることにより、移動性・検索性・精度・保存性などが高まり、それらに必要なコストが低減する。とはいえ、どのようにデジタル化するかによって、得られる効果は大きく違う。

 具体的な例を挙げて、問題の本質をはっきりさせてみよう。

 いま流行のデジタル一眼レフカメラを買った人間がいるとしよう。この人が交換レンズを追加購入したいと思い、オプションレンズにどのようなものがあるかを調べるためにカメラメーカーのサイトを訪れたとする。このとき、まずは自分の所有するカメラのページに行き、オプションに何があるかを探すであろう。ところがカメラ本体とオプションレンズの組み合わせは別のページに品番の表があるだけなので、ユーザーは自分の所有するカメラの品番をメモして、これを表で照らし合わせるという手間を強いられる……。

 なぜ、このようなサイトになるのであろうか?

 これは、印刷された製品カタログの構成をそっくりサイトに持ち込んだためだ。カタログでは紙面の制限や見た目の美しさの面から、カメラ本体の紹介ページとオプションの紹介ページ、そして組み合わせ表のページが別々になっている。その構造がそのままサイトに反映されているのである。

 この商品情報は、カタログ作成段階(DTP)ですでにデジタル化され、サイト構築の際にもそのデータを流用した。したがって「デジタル度合」の尺度から判断すると、デジタル化はなされていることになる。

 しかし、このデジタル化はBSC(バランスト・スコアカード)の「顧客の視点」からすると、高い評価を与えることはできない。完全なOne to One(個別顧客対応)とはいわなくても、“○○カメラ”のページを訪れるオーディエンスはそのカメラに興味を持っていることがほぼ確実なのだから、このページからの閲覧には“○○カメラ”に関する情報を整理して表示し、関係しない製品の情報は隠しておくべきなのである。この例の場合、単純に考えても対象カメラに装着可能なオプションを右ペインあたりに表示してあれば、かなり使い勝手のよいサイトになる。

▼(左)交換レンズ情報は別ページ (右)その機種で利用可能なレンズを表示

交換レンズ情報は別ページその機種で利用可能なレンズを表示 図1 興味の対象となっている製品に関連する情報が同時に表示されていれば、ユーザーはいちいち探す必要がない

 このとき、アイテムの数が多ければ、組み合わせの数も莫大なものとなり、手作業で各ページを作ることは難しくなる。そこで、製品・オプションごとに製品名/品番/価格などのスペックとともに、組み合わせや親子関係をデジタル情報として定義し、その規則に合わせて表示させるような仕組みを作ればよい。

 ここでのポイントは、同じデジタル化/Webサイト化といっても、単にカタログの延長線でデジタル化したものと、「顧客の視点」でデジタル化したものでは大きな差があるということである。「顧客の視点」の有無によって、サイトの出来上がりには大きな開きが出る。コンテンツが顧客にどのように利用されるのかということまで考えてサイトを設計することは、その企業サイト──ひいては企業やブランド全体の顧客価値の向上につながるのである。

顧客の視点からの商品情報データベース

 企業が提供する商品やサービスに関連するコンテンツを1つにまとめ、マルチパーパスに利用する商品情報データベースをPIM(Product Information Management)と呼ぶ。PIMでは、前述のカメラメーカーの例であればカメラ本体とオプションレンズの親子関係といった商品情報も一括して管理する。

 世界的に有名な流通業のBestBuyは、約100万点の取扱商品を管理するPIMを構築した。PIMに登録されたコンテンツは多様に活用することができ、BestBuyにとって重要なデジタル資産となっている。

【参考リンク】
BestBuyのPIM構築事例[PDF](FatWireサイト)

 流通業以外にも、製造業でもPIMは使われている。ヨーロッパにある某多国籍製造業ではPIMがほかの基幹業務システムと連動し、各代理店に情報が配信されている。

図2 ヨーロッパにある某多国籍製造業のBtoBディーラーサイト。各業務システムと連動して、最新情報を配信する

CMSによる商品情報構築事例

 顧客の視点でPIMを構築するということは、コンテンツを顧客にとって有用なものとすることである。日本国内でもCMSでPIMを構築し、顧客の視点でWebサイトを構築した会社が出現した。それは万年筆で有名な株式会社パイロットコーポレーション(以下、PILOT)である。

 PILOTではWebサイトのリニューアルに合わせて、会社情報やIR情報よりも更新頻度の高い製品情報サイトに重きを置いて、筆記具・文具の製品情報の構造化を行った。紙ベースのカタログに基づいていたWebサイト上の商品情報を、ペン先の硬さ/色/種類など製品個別の仕様に基づいたデータ構造に変え、CMSに載せたのである。

 さらに「楽しく」「機能的に」「こだわって」という分類を設置し、利用者に新たな提案を含めた見せ方を提供できるようにした。その商品アイテムを表現・構成するデータがどのようなものか、きちんと定義できていれば、ルールに従って最新情報に更新することは簡単だ。

 いったん製品情報がPIMとして構築されると、そのコンテンツをBtoCのほかに、BtoBやBtoEに転用するといった柔軟性も高まる。新たなイノベーション、企業競争の源泉を生み出す可能性が高まるといえるだろう。PILOTの事例は、製品情報サイトを考えるうえで大きな示唆を与えてくれるのではないだろうか。

著者紹介

デジタルアセット研究会

事務局 FatWire株式会社2003年から2005年度までの2年間、CMSをビジネスに活用するための各種技術や事例などをユーザー、SIer、デザイナー、印刷会社など20名程度の有志が毎月研究会を行っていた。この連載は、デジタルアセット研究会で話し合われてきた内容を基に構成したものである


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