開発経験がなくても分かるUML実践講座:情報マネージャとSEのための「今週の1冊」(23)
開発関係者にとって必須のノウハウとなっているUML。関連コンテンツ/書籍は数あれど、ゼロから解説された本書でもう一度学び直してみませんか。
ゼロからわかるUML超入門――はじめてのモデリング
システム開発に一層のスピードと品質が求められている近年、オブジェクト指向開発で使われる各種モデルの表記法を統一したUMLは開発関係者にとって必須のノウハウとなっている。UMLを使えば業務分析から設計、実装まで、同じ表記法による図で説明できることで、システムの概要設計を行うITアーキテクトや、詳細設計を担うSE、コーディングを行うプログラマなど、各関係者が正確にコミュニケーションを図れる――すなわち、上流工程の品質が高まり、後工程での余分な手戻りやコストの発生を大幅に低減できるためだ。
また、UMLは米国をはじめ、グローバル規模でも開発関係者の標準“言語”になっているほか、近年盛んなオフショア開発でもUMLによる仕様書を求められるケースが増えている。いまやUMLを使えないことは、あらゆる開発機会、ビジネス機会を逃すことにも直結するだけに、その重要性はますます増しているのである。
こうした状況を受けて、巷ではUMLをテーマにした数多くのコンテンツ/書籍類が提供されているわけだが、本書「ゼロから分かるUML超入門」は、そうした中でも異彩を放つ一冊と言えるのではないだろうか。
というのも、UMLを学ぶためには、まずオブジェクト指向についてある程度知っていることが求められる。よって、既存の書籍類の多くは現場経験、実務経験のある開発者をターゲットにしたものが多いわけだが、本書の場合、「ほとんど開発経験のない新人や学生などを対象」に、オブジェクト指向の考え方も含めて、タイトル通りまさしく「ゼロから」解説しているのだ。
構成も工夫されている。例えば目次を眺めてみると、「そもそもUMLって何?」「オブジェクトって何?」「UMLはどこからきたか」「モデルって何?」といった具合に、知識のない読み手が必ず引っ掛かるであろうキーワードを抽出し、分からない言葉を1つ1つつぶしながら徐々に本論に入っていく仕掛けにしている。
しかも、よく読んでみると、ただ「易しい」だけではないことが分かる。例えば、最初の「そもそもUMLって何?」では、「ことばで伝えるのは難しい」として、「駅までの道のりを説明する」シーンを想定させ、「言葉だけで説明するより、このように図を描いて説明した方が正確だし分かりやすい」と解説する。続けて今度は「ある人物の属性」を紹介するシーンを想定させ、「MさんはU社に勤務している」「Mさんは自分の携帯を持っている」と言葉で伝えるより、「U社、Mさん、携帯電話の図を描いて、関係性を示した方が分かりやすい」と述べる。
そして、このように「駅までの道のり」「人の属性」という“次元の異なる情報”と、それぞれを説明する図を示したうえで、「UMLとはこのような図の書き方を標準化したものです」と解説するのだ。すなわち、オブジェクト指向やUMLに対する深い理解に基づいて、ITアーキテクトやSE、プログラマなどが扱う、それぞれ「次元の異なる情報を相互に誤解なく伝えられる」というUMLの本質を注視し、さりげなく紹介しているのである。そして一般的なUML関連書籍なら冒頭に配置されるであろう「UMLとはオブジェクト指向開発技法のモデル表記法を1つに統一したもの」といった学術的な解説は、そうしたページの後になって初めて登場するのだ。
“UMLを使ううえで本当に大切なこと”から優先的に解説し、“知識として必要なこと”は後回しにする――このような“実践主体”のスタンスは本書を一貫しており、最終的にUMLモデリングを“体験”するレベルまで持っていくという点も、読者の学習意欲を大いに高めてくれるはずである。UML関連書籍らしく「図」を重視し、ページ当たりの文字数をTweet枠3つ分ほどに抑えている点も嬉しい。
「分かりやすく伝える」ことに本質があるUMLを説くものでありながら、分かりにくいUML関連コンテンツ/書籍も少なくない。そうした中、学ぶべき内容を無理なく整理してくれている本書は、「開発経験のない新人や学生」はもちろんだが、すでにUMLを使っている人にとっても、理解を深めるうえで有効なのではないだろうか。ちなみに、著者の河合氏は@IT情報マネジメントでも、「オブジェクト指向の世界」を2003年から連載している。こちらでは、本書のあとがきで述べられている「オブジェクト指向の美しさ」について、さまざまな視点から語られている。本書と併せて読んでみると、オブジェクト指向やUMLをまた違う視点から味わえて面白いかもしれない。
- 人はなぜ不正を働くのか?
- なぜIKEAは世界中で支持されるのか
- 今こそ「メディア」を考える
- 部下を信じ、尊敬する
- ご機嫌取りになれ
- “暗い未来”に漫然と向かわないために
- 1つの行動が社会を変革する
- あなたには確固たる「ミッション」があるか?
- 「会社に行きたくない」人ほど会社に依存している
- 失敗の2大パターンは“精神論とお役所仕事”
- コミュニケーションは、ツールではなく人が行うもの
- 社員が疲弊している会社は、経営層とITに問題あり
- ロジカルシンキングで成果が出ない訳
- 手段ばかりを求めていると、結果は出せない
- 「技術へのこだわり」という日本企業の根深い病
- 日本軍とまったく同じ、日本企業の“敗戦理由”
- “技術だけ”では、開発プロジェクトは失敗する
- 断捨離で、業務とシステムはもっと快適になる
- 仕事でモメたくない人のための教科書
- その油断と慢心が“炎上”を招く
- 本当は怖いフェイスブック
- 組織も自分もダメにする「自分大好き」という病
- 災害対策、コスト削減、システム改善は全て同じ問題
- あなたなら、自社システムをどう攻撃する?
- “想定外”から1年、見て見ぬふりはしていませんか?
- ナイトライダーも示唆する人とシステムのあるべき関係
- アップルが成功し、ソニーが失敗した理由
- 貴社のビジネス、ITシステムに“マインド”はあるか?
- 何のために働くのか? その回答はシンプルそのものだ
- 事故を起こす企業の特徴は、「責任者が不明」
- スマホ導入は、セキュリティポリシー設定がキモ
- 失敗は、「簡単なこと」「当たり前のこと」で起こる
- ITがどれほど進展しても、経営の基本は変わらない
- コピペやお絵かきが得意な人は“中毒”の疑いあり
- 情報は、人間関係があって初めて有効に活用できる
- “顧客”や“ユーザー”との関係作りを見直そう
- システム導入・浸透のポイントは“楽しさ”にあり
- “当たり前”を覆すチャンスはまだまだ埋まっている
- ソーシャルメディア・リテラシが収益を左右する
- 技術者はアーティストであり、製造業者ではない
- 分析するのは「ツール」ではなく「人」である
- ブランドは、消耗品である
- 当然のことを当然にこなすための指南書
- リスクを知っていてこそ、スマホは使いこなせる
- 個人でも企業でも、“ナンパ野郎”はウザいだけ
- 「見える化」だけでは、ビジネスは進まない
- 2ちゃん、ニコ動、外務省。次の標的は貴社のサイト!?
- あなたの会社は「突然死」の危機にさらされている
- BCPは、業務部門と情シスが連携して初めて成功する
- 仕事や人生、そして復興にも、秘策はない
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