企業のための、“失敗”しないTwitterの使い方:情報マネージャとSEのための「今週の1冊」(43)
Twitterをはじめとするソーシャルメディアを企業活動に生かす動きが高まっている。だが、慣れてきたときこそ事故は起こりやすいもの。Twitterを使い慣れた今、自社のメディアリテラシーをあらためてチェックしておきたい。
ツイッターノミクス
先日、大手企業の従業員がTwitterで来店客を中傷した事件が報道された。高級ホテル従業員がTwitterで来客者情報を漏らした事件も記憶に新しい。Twitterをはじめとするソーシャルメディアはここ数年で急速に浸透し、昨今はビジネスに活用する動きも高まりつつある。だが企業の場合、効果的かつ安全に使うためにも、この辺りで“ソーシャルメディアのメディアリテラシー”を見直しておくべきなのではないだろうか。
本書「ツイッターノミクス」はそうした目的に最適な作品だ。2010年3月という初版の時点では、多くの企業にとってソーシャルメディアは、まだ“これから使っていくもの”だったかもしれない。だが今あらためて読むと、使う上での考え方、ポイントなど、あらゆる指摘を実感とともに復習できる。
例えば、ソーシャルメディアは「ソーシャル・ネットワークで結ばれた人同士の間に時間をかけて育まれる信頼。あるいは尊敬。あるいは評価」の増加・蓄積が重要といった指摘は、今となっては肌感覚として理解できよう。よって、「企業が資金力にモノを言わせてソーシャル・ネットワークを牛耳ろうとすれば、かえって企業ブランドを低下させてしまう」ということも“常識”として受け止められる。
特にTwitterについては、「ただ一人の顧客を想定する」という指摘をあらためて肝に銘じておきたい。前述の通り、ソーシャルメディアで大切なのは、「時間をかけて育まれる信頼。あるいは尊敬。あるいは評価」の獲得である。よって、グループセグメントの考え方で、不特定多数に向けて最大公約数的なメッセージを投げ掛けてもうまくはいかない。企業がTwitterを使う場合も、「心地よく実り多い対話」ができるよう、「実在する顧客」に向けて、同じ一人の人間として対等な視点で語り掛けることが大切であり、そうすることで初めて信頼の輪は広がって行くのだ。
また一方で、「信頼。あるいは尊敬。あるいは評価」が大切という指摘は、「ソーシャル・ネットワーク上でやってはいけないこと」に対する注意も喚起してくれる。特に第4章「ウェブ上で顧客を増やす八つの秘訣」にはそのエッセンスが凝縮されている。
いくつかを紹介すると、「コメントには必ず返事をする」「批判を個人攻撃と受け止めない。相手は、わざわざ時間を割いて改善すべき点を指摘してくれたのである」「有益な指摘やアイデアには公に感謝する」「フィードバックを生かして(製品・サービスなどを)こまめに改善する」「フィードバックを待つのではなく、こちらから探しに行く。コメントやメールが来なくても、顧客は100%満足しているわけではない」――。
いかがだろう。こうしてポイントを列挙すると、返事をする、感謝する、具体的なレスポンスを返すなど、一社会人が「信頼。あるいは尊敬。あるいは評価」を獲得するために、いや、それ以前に「社会に参加する上で必要なこと」と、何ら変わらないことが分かる。“ソーシャル”メディアと呼ばれる一つのゆえんも、この点にあるのではないだろうか。
先の事件では、つぶやいた本人にそうした“ソーシャル”という自覚・認識が抜け落ちていたのかもしれない。この点を考えると、第4章の内容は、ジャーナリスト、津田大介氏が本書解説で述べているように、まさしく「(企業に限らず)ウェブを利用している全ての人が学ぶべきリテラシー」と言えるだろう。
ソーシャルメディアを収益・ロイヤルティ向上に生かしている企業は着実に増えつつある。すでに読了した人も含めて、本書で経営に生かす「攻め」の方法を復習するとともに、「危機管理マニュアル」という観点でも精読してみてはどうだろう。自社アカウントのつぶやきや運用体制から、先の事件を笑い飛ばせない意外な実態が見えてくるかもしれない。
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