貴社のビジネス、ITシステムに“マインド”はあるか?:情報マネージャとSEのための「今週の1冊」(88)
「これからのビジネスに必要になっていくのは、サービス提供者とプレイヤーが相互で築き上げていく関係性ではないか」。貴社のビジネス、システムに、「利用者に純粋に喜んでもらいたい」という“マインド”はあるだろうか。
ゲームにすればうまくいく
「『ゲームの要素をゲーム以外の領域に応用する』というゲーミフィケーションの発想は、よくよく考えていくと、利用者の気持ちを真に理解し、利用者が本当に喜んでくれるように仕組みをつくり上げること、そしてそれを日々チューニングし続けることを意味しています。これはそもそも、『おもてなし』という言葉で表現されることと同じことなのではないか」――。
本書「ゲームにすればうまくいく」は、モバイルECシステム、メール配信システムなどモバイル向けサービスの開発・提供を行っている株式会社ゆめみ 代表取締役社長の深田浩嗣氏が、自社の経験を基にゲーミフィケーションの取り組み方を解説した作品である。
ビジネスにゲームの要素を取り入れるゲーミフィケーションという言葉自体は着実に浸透しつつあるが、「無料のゲームコンテンツを提供する」「自社の製品やサービスを知ってもらったり、興味を持ってもらったりするきっかけとしてゲームを用意する」と理解されているケースもある。
だが本書の場合、そうした取り組みに対し、「ある程度の集客効果は見込めるのかもしれません。しかし、そのゲームを自社の製品やサービスと関連付けることはどこまでできるのか」と問題提起。製品・サービス本来の価値とは関連性の薄いゲームを用意して「ゲームをつくる」のではなく、「自社の製品やサービスを提供する本来のビジネス活動全体の中に、ゲームの要素を入れていく」ことで、自社の魅力を伝える過程そのものを「ゲームにする」ことが大切だと説いている。
目を引かれるのは、そうした「ビジネスにゲームの要素を入れていくためのデザインプロセス」策定のためのフレームワークとして、「g―デザインブロック」という概念図を紹介している点だ。これは「目標」「可視化」「世界観」などゲーミフィケーションを行うための9つの要素と、その関係をブロックの図で可視化したものだが、本書では、誰もが自社に応じたゲーミフィケーションを実現できるよう、各要素のあるべき取り組み方を体系的に説明しているのだ。
中でも、「おもてなし」という要素が「g―デザインブロック」のコンセプト図の一番下に位置し、「すべてのブロックを支える構造となっている」点は興味深い。この「おもてなし」とは「その道具をどう使うかというマインド」を意味するものだが、この「利用者に純粋に喜んでもらいたい」というマインドこそが、ゲームという道具をビジネスに使う際に必須の心構えになるのだという。
さらに、著者はこの「おもてなし」というマインドは、「今までのビジネスで欠けていた視点かもしれない」と指摘する。「例えば、CRMでは、顧客データを分析し、地域や性別、年齢などに応じてダイレクトメールを送るような一方的なコミュニケーションを取ることが多いものです。顧客は本当にそれを望んでいるのでしょうか?」「これからのビジネスに必要になっていくのは、サービス提供者とプレイヤーが相互で築き上げていく関係性ではないか」と力説するのである。
さて、いかがだろう。B to Cのビジネスを展開する企業にとって参考になるのはもちろんだが、以上の「サービス提供者とプレイヤー」を、「情報システム部門とユーザー部門」に置き換えて読んでみても、1つの示唆を与えてくれはしないだろうか。
特に印象的なのは、「その道具をどう使うかというマインド」が大切という下りだ。ITシステムを開発・導入する際には、どうしてもコストをはじめ情報システム部門側の視点だけで考えてしまいがちなのものだ。だが、ツールを自社で開発するにしても、外部から調達するにしても、真の意味でビジネスにシステムを浸透させるためには、「利用者に純粋に喜んでもらいたい」という“おもてなし”のマインドが不可欠なのではないだろうか。本書の考え方を基に、自社のビジネスやシステム開発・導入の在り方を見直してみてはいかがだろう。
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