“想定外”から1年、見て見ぬふりはしていませんか?:情報マネージャとSEのための「今週の1冊」(91)
最悪の事態に備えた対策を「過剰で感傷的な対応として一蹴」したり、コストを掛けずに済むように、考えるべきリスクを見て見ぬふりをしたりしてはいないだろうか?
危機管理・事業継続ガイド
「自社の危機は、あくまでも、実態に即して自社で対策を練って対応策をまとめることで活きた対策に」なる。「BCPを作りっぱなしで安心していては、企画倒れのBCPとなり、PDCAサイクルが回らずに心もとない状態になってしまう」。「まず、自社の各資源や各対応ポイントを洗い出し、整理して、自社の事業継続マネジメントシステムの在り方を決めたら、いったん、マニュアル類を見なくても重点ポイントに関して自然と実践できるように身に付くまで訓練、トレーニングしていく」べきだ――。
本書「危機管理・事業継続ガイド」は、東日本大震災の教訓を生かし、あらためて危機管理、事業継続のポイントを解説した作品である。特に東日本大震災が起こった直後には、「しきりに各企業の経営陣やマスコミなどで語られた」「想定外」という言葉にあらためて着目。「知を超え、まったく想定すらできなかったリスク」「(コストの事情により)想定・対応しないことにしたことによって出てきた想定外リスク」「想定されるリスクすら検討・対応しなかったことで、必然的に想定外となってしまったリスク」の3つに分類し、「想定外リスクをゼロにする」ことはできないが、各社がリスク管理の在り方を振り返り、「自社がどのようなリスクをどの程度までコントロール・減災対応し、逆に、コントロールや減災対応することを見送っているリスクは何でありどの程度のものか」について、しっかりと検分するべきだと指摘している。
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中でも強調するのは、「危機管理や防災対応、事業継続対応というのは、緊迫感を高めたより現実の状況に近い訓練を通じてでしか実効性が高まらない」という点だ。「自社内の会議室で、危機管理訓練のシナリオを棒読みしても、実際の危機時は、自社の天井崩落や火災や津波や余震での揺れなど、さまざまなパニックに陥るような状況があったり、自社建物から退避している可能性」もあり、そうした訓練は役に立たない。BCPや危機管理マニュアル類などは、「自社なりの訓練で活用するための教科書のようなもの」と考え、「訓練を徹底することが大切」だと訴えている。
「さまざまなステークホルダーの理解を得ておく」ことも勧める。自社のビジネスは株主や仕入先、従業員や顧客など、さまざまな利害関係者に支えられている。従って、「重要なステークホルダーに対して、それぞれどのような影響力や関係性を持っており」「必要な価値提供をどのようにすれば満足いただけるかをまとめた上で、各ステークホルダーの重要度を高中低で付けていきながら」、災害時には「まずどのステークホルダーにどのような対応をとるかをまとめておく」べきだとアドバイスする。さらに「事業再開や継続、納期、サービス提供にかかる所要日数や時間等をうまく危機の際に伝達して、取引先のつなぎ止めをスムーズに行う」ための「危機管理広報」も重要だと説いている。
昨年は多くの企業がBCPに乗り出し、事業継続・危機管理といった言葉はIT業界においても1つのキーワードとなった。だが、すでに作り上げたその対策は、起こり得る最悪の事態を「過剰で感傷的な対応として一蹴」したり、「コストを掛けたり面倒なことをしたりしないで済むように、本来は手をつけるべきリスク対策すら逸脱域として扱ったり」したものになってはいないだろうか? 「想定されるリスクすら見て見ぬふり」をしている傾向はないだろうか? 本書を1つの参考にして、自社の対策を振り返ってみてはいかがだろう。
最後に、著者が紹介している「リスクマネジメントに役立つ3つの格言」を紹介しておこう。「利己的ではない好意的な行いが、最も高い利子をもたらす」――ゲーテ/「正直は最善の策である」――セルバンテス/「何事も完璧でなければ役に立たない、という行動原則は結果的に何の動きもとれない麻痺状態をもたらす」――チャーチル。
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