部下を信じ、尊敬する:情報マネージャとSEのための「今週の1冊」(112)
統合参謀本部議長、さらには国務長官として、米国国家の中枢で長きにわたって奮闘してきた著者が語るリーダーシップとは。
リーダーを目指す人の心得
本書は、米国の統合参謀本部議長として陸軍、海軍、空軍、海兵隊という4つの軍を統括し、湾岸戦争を指揮、さらには国務長官として2001年から2005年にわたり、ジョージ・W・ブッシュ政権を支えたコリン・パウエル氏が、人生や仕事、リーダーシップに対して考えを綴った1冊である。
パウエル氏には、20年以上前から人生において座右の銘にしている「13カ条のルール」というものがある。
(1)何事も思うほどには悪くない。翌朝には状況が改善しているはずだ。
(2)まず怒れ。その上で怒りを乗り越えろ。
(3)自分の人格と意見を混同してはならない。さもないと、意見が却下されたとき自分も地に落ちてしまう。
(4)やればできる。
(5)選択には細心の注意を払え。思わぬ結果になることもあるので注意すべし。
(6)優れた決断を問題で曇らせてはならない。
(7)他人の道を選ぶことはできない。他人に自分の道を選ばせてもいけない。
(8)小さなことをチェックすべし。
(9)功績は分け合う。
(10)冷静であれ。親切であれ。
(11)ビジョンを持て。一歩先を要求しろ。
(12)恐怖にかられるな。悲観論に耳を傾けるな。
(13)楽観的でありつづければ力が倍増する。
例えば、ビジョンを持つことについて、本書ではあるエピソードを交えて説明している。あるとき著者が見ていたドキュメンタリー番組で、エンパイアステートビルディングの地下室にある大量のゴミ袋を作業着姿の5人の男がゴミ収集車へ投げ込んでいるというシーンがあった。彼らに対し取材アナウンサーが「どういう仕事をしているのですか」と尋ねると、作業員の一人はにっこり笑って「我々の仕事は、明日の朝、この素晴らしいビルに世界各地から多くの人が訪れたとき、ビルがピカピカに光るほどきれいで美しい状態であるようにすることです」と答えたという。
彼らは自分たちが単にゴミを運搬しているとは思わず、自分たちが毎日行っているのは決して欠くことのできない仕事だと理解している。この仕事の目的というのは、最上階にいるビルの経営陣と一体化しているのである。つまりは、偉大なリーダーとは、あらゆる階層の部下に刺激を与え、各自が目的を自分のものとして理解し、真剣に取り組むように導くことができるのだという。裏を返せば、チーム全員が目的を信じて仕事に突き進まなければ、目的が達成されることはないのである。
パウエル氏の人生観や仕事観を形作る上で大きな影響を与えたのが、軍隊での経験である。軍人として厳しい環境の中で日常生活を送ることで、ごく自然と組織論やリーダーシップ論を体得することとなった。部下を信じ、自分から尊敬することが第一で、そうでなければ人の心を動かすことなどはできないという。
パウエル氏にとってリーダーとは何か。パウエル氏は「責任を持って受け持つ勇気のある人物。人々が反応し、この人にならばついていこうと思える人物」と本書の中で述べている。こうしたリーダーになるためには、まず、他人とのつながりや親近感を持って生まれ、子ども時代に両親や教師がそのような感覚を奨励し、引き出してくれなければならない。さらには、訓練や経験、メンターの指導によって、しっかりした形となり、その上でいろいろと学ぶことで優れたリーダーになることができるのだという。
リーダーシップに対するこうした考え方は企業組織においても通じることだろう。管理職の方やこれからリーダーを目指す方にぜひ一読をお勧めしたい。
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