今こそ「メディア」を考える:情報マネージャとSEのための「今週の1冊」(113)
メディアについて知り、うまく活用することが、あらゆるビジネスを推進していく上で重要な基礎リテラシーになるという。
MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体
インターネットの普及が社会やビジネスに与えたインパクトは計り知れない。今では世界中の人々とリアルタイムでコミュニケーションを取ることが可能であるし、ECを利用すれば物理的な店舗に訪れなくても欲しいものを手に入れられるようになった。そのほかにもさまざまな面で変化が起きていることは枚挙にいとまがない。
メディアの世界にも大きな変革をもたらした。ニュースサイトなどWebメディアの登場によって、情報伝達のスピードが飛躍的に向上しコンテンツは多様に、さらには市井に流通する情報量そのものが爆発的に増大した。受け手にとって良くも悪くも情報過多の時代となった。
本書はこれからのメディアのあり方について書かれた1冊だ。著者は、リクルートが刊行するフリーマガジン「R25」の立ち上げにかかわったのを皮切りに、「livedoorニュース」や「livedoorブログ」、オピニオンリーダーのブログ記事を集約した「BLOGOS」、さらには「VOGUE」「GQ JAPAN」「WIRED」のWebサイトやデジタルマガジンの運営に携わった経験を持つ。
著者によると、メディアとは、そこに情報の送り手と受け手の二者が存在し、その間を仲介し、両者間においてコミュニケーションを成立させることを目的とするものだと定義する。現在、さまざまな形態のメディアが世の中にあふれているが、そのどれもが定義に当てはまるという。
一方で、数多くのメディアがある中で、きちんと読まれ、読み手の心を動かし、世の中に対する影響力を継続的に発揮できているものが、果たしてどれくらいあるのだろうかと、著者は疑問を投げ掛ける。実感としてかなり少ないというのが現状ではないかという。例えば、総務省がメディア上を行き交う情報流通量の時系列での推移について調べた情報流通インデックス調査(2009年)によると、インターネット上を流れる情報流通量は、2001年から2009年までの8年間で71倍に激増した。しかし、実際にユーザーに受け入れられ、受容され、消費される情報量は、8年間でたった2.5倍程度にしか拡大していない。今や情報を発信すること自体はまったく価値がなく、読み手に届くメディアを作り、運営を継続できるかどうかこそが生命線なのだという。
では、しかるべきメディアが成立するために必要なものとは何か。「発信者」「受信者」「コンテンツ」の3つが不可欠で、この3要素間の関係性を取り持つものとして、広義のメディアは成立すると著者はいう。さらに、コンテンツの内容に関して、ストックとフロー、参加性と権威性、リニアとノンリニアという3軸が基本フレームになるという。メディアを運営する上では、この3次元の軸に基づき、しっかりした方向感覚を持ち、デバイス環境やユーザーの可処分時間の動向までを含め、現在のメディア潮流がどのように変化しているのかを、自分自身の立ち位置とともに正しく把握することが重要だとしている。
本書は、メディアに直接かかわる仕事をしている人だけのためのものではない。冒頭で述べたように、今やメディアが作り出す力がビジネス世界に大きな影響を与えている。スマートフォンが普及し、いつでもどこでもインターネット接続ができ、コンテンツとハードウェアの融合が進む現在では、メディアについて知ることが、あらゆるビジネスをしていく上で重要な基礎リテラシーになりつつある。
また、一般の企業や個人であってもメディアの立ち上げや運営にかかわる機会が増えている。企業であれば自社のマーケティング戦略を推進するためのオウンドメディアが代表的で、個人であれば、メールマガジン(最近は有料メルマガによるマネタイズも盛んになっている)、あるいは、ブログやFacebook、Twitterといったソーシャルメディアも個人型メディアと呼べるだろう。
どのようなビジネスに携わるにせよ、メディアの価値を理解し、いかにうまく活用していくかがこれからの社会で求められている。本書はその基本動作を学ぶことができる1冊だといえよう。
- 人はなぜ不正を働くのか?
- なぜIKEAは世界中で支持されるのか
- 今こそ「メディア」を考える
- 部下を信じ、尊敬する
- ご機嫌取りになれ
- “暗い未来”に漫然と向かわないために
- 1つの行動が社会を変革する
- あなたには確固たる「ミッション」があるか?
- 「会社に行きたくない」人ほど会社に依存している
- 失敗の2大パターンは“精神論とお役所仕事”
- コミュニケーションは、ツールではなく人が行うもの
- 社員が疲弊している会社は、経営層とITに問題あり
- ロジカルシンキングで成果が出ない訳
- 手段ばかりを求めていると、結果は出せない
- 「技術へのこだわり」という日本企業の根深い病
- 日本軍とまったく同じ、日本企業の“敗戦理由”
- “技術だけ”では、開発プロジェクトは失敗する
- 断捨離で、業務とシステムはもっと快適になる
- 仕事でモメたくない人のための教科書
- その油断と慢心が“炎上”を招く
- 本当は怖いフェイスブック
- 組織も自分もダメにする「自分大好き」という病
- 災害対策、コスト削減、システム改善は全て同じ問題
- あなたなら、自社システムをどう攻撃する?
- “想定外”から1年、見て見ぬふりはしていませんか?
- ナイトライダーも示唆する人とシステムのあるべき関係
- アップルが成功し、ソニーが失敗した理由
- 貴社のビジネス、ITシステムに“マインド”はあるか?
- 何のために働くのか? その回答はシンプルそのものだ
- 事故を起こす企業の特徴は、「責任者が不明」
- スマホ導入は、セキュリティポリシー設定がキモ
- 失敗は、「簡単なこと」「当たり前のこと」で起こる
- ITがどれほど進展しても、経営の基本は変わらない
- コピペやお絵かきが得意な人は“中毒”の疑いあり
- 情報は、人間関係があって初めて有効に活用できる
- “顧客”や“ユーザー”との関係作りを見直そう
- システム導入・浸透のポイントは“楽しさ”にあり
- “当たり前”を覆すチャンスはまだまだ埋まっている
- ソーシャルメディア・リテラシが収益を左右する
- 技術者はアーティストであり、製造業者ではない
- 分析するのは「ツール」ではなく「人」である
- ブランドは、消耗品である
- 当然のことを当然にこなすための指南書
- リスクを知っていてこそ、スマホは使いこなせる
- 個人でも企業でも、“ナンパ野郎”はウザいだけ
- 「見える化」だけでは、ビジネスは進まない
- 2ちゃん、ニコ動、外務省。次の標的は貴社のサイト!?
- あなたの会社は「突然死」の危機にさらされている
- BCPは、業務部門と情シスが連携して初めて成功する
- 仕事や人生、そして復興にも、秘策はない
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