ブロードバンド、1000万人への道
2004年末には2000万人に。主役はしばらくADSL
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2003年5月末、日本国内のブロードバンド利用者数がついに1000万件を超えた(総務省の「インターネット接続サービスの利用者数」による)。ここでは、1000万という数字を1つの区切りととらえ、これまでのブロードバンド普及の道のりを振り返るとともに、今後を占ってみたい。大和総研・新規産業情報部主任研究員の神谷孝氏に話を聞いた。
普及の立役者は低価格化
下図は神谷氏が試算した2007年までのブロードバンド加入件数の推移だ(2002年までは実績値)。現在、ブロードバンドの中心であるDSLが加入件数を伸ばしたのは2001年から。ちょうど、低価格なYahoo! BBが登場し、他キャリアも月額費用を7000円台から4000円前後に値下げした時期だ。
「4000円前後ならナローバンドの月額費用と変わらない。常時接続でネットを存分に楽しめるADSLの普及に火がつくのは必然だった。そして、ユーザーは4000円という価格にその価値を見いだしている」
2007年までのブロードバンドユーザー数予測
2003年1月に神谷氏が作成したもの。2002年までの数値は、総務省「インターネット接続サービスの利用者数」などをもとにした実績値
共存の道をたどるADSLとFTTH
月額4000円前後で最大12MbpsのADSLより、月額7000円前後で最大100MbpsのFTTHの方が、帯域あたりのコストパフォーマンスは高いが、ユーザーはそこに価値を見いだしているわけではないというのだ。
「インターネットの主な活用方法は情報収集だ。映像や音楽のストリーミングといっても、パソコン上で視聴する以上、ユーザーは情報として扱ってしまう」と神谷氏は指摘する。パソコン上の情報である以上、月額4000円以上は払わないだろうという。
「高画質なビデオオンデマンドやインターネット放送など、CATVや衛星放送のように“エンターテインメント”として楽しめるようになれば、そこに価値を見いだし、プラス3000円を払うユーザーも出てくる。それには、パソコン以外の機器でも楽しめることが必要」
7月には、Yahoo! BBが「BBケーブルTV」の本格課金を開始するなど、ブロードバンドをノンPCに利用する動きは活発化している。FTTHも、今後はこうした分野を主戦場として戦う必要があるだろう。
一方で、FTTHも低価格化の兆しがある。北海道江別市の地域プロバイダ・WebONEは、Bフレッツ用光ファイバー回線をNTTから借り受ける「アンバンドル」という方式を利用し、月額4980円のFTTHサービスを開始した。今後、このような形態のサービスが増えれば、FTTH普及にも弾みがつく。
以前よりADSLはFTTH普及までの「つなぎ」のサービスだといわれていたが、神谷氏はそれを否定する。
「FTTHがADSLを完全に抜くことは当分ないだろう。確かに2005年には、ADSLとFTTHの加入増加数は逆転が始まるが、価格と導入のしやすさから、主流はADSLのままだろう。これからは、手ごろな常時接続回線が欲しいユーザーはADSL、ヘビーユーザーはFTTHというすみ分けが進むはずだ」
「ブロードバンド」は消える!?
さて、次なる目標となる「2000万人」の達成はいつごろになるのだろうか。
「2004年末には2000万件を突破するだろう。ナローバンドからの乗り換えも進み、3年後くらいにはインターネット普及率=ブロードバンド普及率、といえるようになる。ブロードバンドという言葉がなくなるのも近いのではないだろうか」
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