サムスンの液晶モニタ新製品「SyncMaster 970P-R」は、トリプルヒンジ採用で、チルト/スイーベル/高さの全てで調整幅が非常に広く、さらにピボット機構付きという意欲作。表示性能も非常に高く“プレミアム液晶モニタ”と呼ぶにふさわしい。
現在では、すでに多くのユーザーに愛用されているサムスンの液晶モニタだが、最初に大きな注目を浴び、また性能や機能の面においても高い評価を得たのは「SyncMaster 172T」(および、SyncMaster 152T)だったと記憶している。デュアルヒンジの採用により、洗練されたデザインを実現。しかも、台座を畳むとそのままVESAマウントで壁掛け可能という独特のスタイルで、さらには自社製PVA方式のパネルの表現力も確かなものだった。
今年9月から発売開始されたばかりの新製品「SyncMaster 970P-R」は、その「SyncMaster 172T」登場時にも似た新鮮さを感じさせてくれる19型プレミアム液晶モニタだ。トリプルヒンジデザインの採用で、チルト、スイーベル、高さ、すべてにおいて調整幅が非常に広くなり、さらに、ピボット機構まで取り込んだという意欲作である。
パネルは19型のa-si TFT/PVA液晶で、解像度は1280×1024ピクセル(画素ピッチ0.294ミリ)となる。輝度250カンデラ/平方メートル、コントラスト比1000:1と表示性能は高く、さらに、RTA(Response Time Accelerator)回路の搭載により、動画に多用される中間階調の応答速度は6msと高速。また、サムスンの液晶では、伝統的に視野角が広い製品が多いが、この製品では水平/垂直とも178度という限界に近い数値になっている。
モニタ本体、アーム、スタンドベースとも、すべて表面素材にはホワイトアクリルを使用。柔らかなイメージを演出しつつ、画面周辺部のベゼルにはアクセントとしてシルバーが配され、全体の印象を締めている。また、アーム部の両端、つまり、モニタ本体およびスタンドベースとの接合部もシルバー仕上げだ。この接合部はともに丸い形状なのだが、これは決して単にデザイン的な処理ではなく、モニタ本体側はピボットを、スタンド側はスイーベルを実現するために円形なのである。
ピボット時は縦画面(右へ90度回転)に加え、180度回転、つまり天地逆のポジションまでとれる。180度回転など使い道がないようにも思えるが、実はそうでもない。スタンドを最大に伸ばした(“く”の字)状態で、後方へ最大限(150度)までチルトさせると、真後ろ(やや上向き)に画面を向けられる。このスタイルで画面を天地逆にすれば、スタンドをまったく動かさずに、反対側からの閲覧が可能。たとえば、金融系などのカウンター業務で対面の顧客に画面を見せるといった用途が想定されているようだ。
また、スイーベル機構により、画面は左右とも最大90度まで回転可能。真横へも向けられることになる。しかし、ダブルヒンジの効果が最も生かせるのは高さ調整だ。画面底部をスタンドと密着させれば、最も低いポジション。そこからアームを伸ばしきると、画面は15センチの高さまで上げられる(スタンド上面から画面底部までの間隔は13.4センチ)。アームの伸縮は楽に行え、特に伸ばす際には軽快な動作だ。
また、アームを完全に畳むと、画面を真上に向けた、いわゆるフラットなスタイルとなるが、トリプルヒンジ構造ゆえに高さは最小でも12センチ。もっとも、画面サイズの大きさもあり、「SyncMaster 172T」のような壁掛けスタイルは考慮していないようだ。ただ、アームを伸ばしきった状態で画面を上向きにすることもでき、この場合の高さは30センチとなる。それが何の役に立つと言われれば終わりだが、たとえば、リビングのガラステーブルの下に置いて、ゲームセンターのテーブルタイプ筐体の気分を味わうのもいいかもしれない。
映像や電源の入力端子は、本体上ではなく、スタンド背面にケーブル接続された小さなシグナルボックスに装備。映像入力端子はDVI-Iで、製品にはDVI-Dケーブルのほか、DVI-I→D-subケーブルも標準で付属するため、デジタルRGB、アナログRGBともに対応できる。
前述のとおり、「SyncMaster 970P-R」はシンプルな外観が魅力的だが、さらに、操作ボタン類もまったくといっていいほど見当たらない。唯一、スタンドの手前部分には電源ボタンがあるが、これも目立たないように、うまく処理されている。そして、電源を投入すると青色に点灯し、穏やかに存在を主張し始める。
操作ボタン類がないのは、さまざまな入力信号に対する自動調整機能に自信を持っているためだろう。また、明るさやコントラスト、カラーコントロールといった映像のチューニングに関しては、付属ソフトウェア「MagicTune」(Windows 98SE/Me/2000/XP対応。Windows2000以降を推奨)をインストールすることで、PCから操作できる。これは決してPC側でのグラフィック出力調整ではなく、VESA規格のDDC/CI(Display Data Channel Command Interface)を利用し、制御コマンドを映像ケーブル(DDC信号線)経由でディスプレイ側に伝え、“リモートコントロール”を行う仕組みだ。なお、電源ボタンの長押しでも自動調整機能を働かせることができる。
また、同社のMagicTuneウェブサイトでは、Macintosh版「MagicTune for MAC」もダウンロード可能(http://www.samsung.com/Products/monitors/magictune/magictune_05s.htm)。さまざまな映像チューニングがMacでも行えるようになる。
MagicTuneでは、「映像」タブの明るさ、コントラスト、「カラー」タブの色温度、カラーコントロール(R/G/Bを各々0〜100に調整可)、ガンマ(−0.5〜+0.9)といった値をユーザーが自由に変更できるほか、表示内容に応じたプリセットも「テキスト」「インターネット」「ゲーム」「スポーツ」「映画」の5モードが用意されている。プリセットはMagicBrightという項目から呼び出せ、ユーザー設定値も「お気に入り」としてMagicBright内に保存可能だ。
文章の入力/編集作業に適した「テキスト」は、明るさをやや抑えている。また、「インターネット」は明るさは中程度だが、ガンマを少し上げたもの。「ゲーム」では明るさ・コントラストとも若干高め。「映画」では明るさが最大に。「スポーツ」では同じく明るさを最大限に上げ、色味はやや青を強調している。
さらに、付属ソフトウェア「Magic Rotation」の自動ピボット機能(オートピボット)でもDDC/CIを利用。最近のグラフィックスカードでは画面回転機能を備えており(オートピボットでもこれを利用)、画面のプロパティなどから実行可能だが、オートピボットを使えばその操作が不要となり、非常に快適だ。つまり、ユーザーがモニタを回転させると、それに合わせて、自動的に画面表示を回転してくれる。
最近ではXGA表示、つまり横幅1024ピクセルを基準にしたWebサイトが多くなっているが、「SyncMaster 970P-R」ではピボットで縦画面にした場合でも横1024が確保され、しかも、縦1280という広さを存分に生かして、実に快適なWebブラウジングが可能だ。
最後に映像品質に触れておくと、鮮明かつ安定した表示で、落ち着いて見ていられるという印象。動画表示においても、当然ながら残像などは見受けられず、追従性は高いと感じた。また、19型という画面は決して小さくなく、一方で本体が大きすぎることもなく、机の上に置いて、作業からエンターテイメントまで幅広く利用するには最適なサイズだと思う。16:9映像を閲覧する場合でも、約37×21センチというワイド17型相当の表示エリアを確保可能なので、DVD再生も十分に堪能できるだろう。
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提供:日本サムスン株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2005年12月31日