日本サムスンの「YP-U1Z」は、USBメモリサイズの小型軽量なフラッシュメモリプレーヤー。小型軽量さはもちろんのこと、折りたたみ式UBSコネクタなどを備え、毎日携帯するデバイスとしての完成度の高さが魅力だ。
デジタルオーディオプレーヤーが人気を集めている。これまではPCスキルの高いユーザーが楽しむものとして普及してきたが、現在はポータブルCD/MDの買い換え対象として検討しているユーザーも多いはずだ。
しかし、CDやMDというメディアの制約を受けないだけに、各製品のスタイルはさまざま。大型液晶を搭載して視覚的な使い勝手を高めたモデルや、大容量HDDで自宅のCDライブラリーをすべて収録できる製品、小型軽量化を進めて携帯品としての存在感を増したモデルなど千差万別だ。
日本サムスンが販売を開始したフラッシュメモリプレーヤー「YP-U1Z」は、折りたたみ式のUSBコネクタやバックライト付液晶ディスプレイなどを備えながら、USBメモリのサイズを実現した携帯性重視モデルだ。これまでにも同社はラウンドキューブデザインの「YP-C1」や着せ替え可能な「YP-F1ZB」などの製品を展開しているが、新製品は既存モデルのいずれとも異なる魅力にあふれている。
YP-U1Zを手にした際の第一印象は「スッキリしたプレーヤー」。厚さは13.6ミリと同社製フラッシュメモリプレーヤーの中でも格段にスリムであるほか、重さも33グラムと軽量で、胸ポケットに入れておいても圧迫感を感じることはまったくない。
縦横サイズは25.6(横)×87.4(縦)で、本体下部にはUSBコネクタ、上部にはストラップを通すためのアーチが設けられている。USBコネクタは180度回転して本体内に収納される折りたたみ式で、収納時にはスライドカバーによってコネクタ本体が保護されるギミックが採用されている。
スティックタイプのフラッシュメモリプレーヤーを利用する場合、USBコネクタは本体と一体化している方が便利だが、キャップ式の場合にはキャップを無くしてしまうという不安がつきまとう。その点、本製品はキャップを無くす心配はない上に、コネクタが収納できるので不意のコネクタ破損を防ぐこともできる。なによりも、ペンケースやカバンにスッキリ収納できるのはうれしいところだ。
電源には内蔵のリチウムポリマー充電池を利用し、約2.5時間の充電で約13時間の連続再生が行える。外出先での電池切れに対応することは難しいが、13時間もの長時間利用が可能なので、出先で電池切れになる事態は想像しにくい。充電はACアダプタを利用せず、USBバスパワーで充電するスタイル。USBメモリとしても利用することを考えると、普段使いではUSBで充電できる方が便利だ。
充電はUSBバスパワーを利用する |
「リムーバブルディスク」として認識されるので、USBメモリとしても便利に使える |
本体前面にはバックライト付きの液晶ディスプレイとメインの操作ボタンである「ナビゲーションボタン」、側面にはA-Bリピート/録音ボタンに再生/一時停止ボタンが設けられている。ナビゲーションボタンの下にはホールドスイッチも用意されており、不意にスイッチが入ってしまうということもない。
各ボタンはホワイトの本体とマッチしたシルバーの仕上げが施されており、高い質感を持っている。押し心地もしっかりとしており、早送りを1回押したはずが2つ先までスキップされてしまった……などという事は起こらない。個人的に好感が持てたのは、再生/一時停止ボタンが独立して配置されているところ。最も使用頻度が高いボタンだけに、手探りでも押すことができるように配慮されているのはありがたい。
バックライト付きの液晶ディスプレイ |
再生/一時停止ボタンが独立しているのはありがたい |
再生できるファイルフォーマットはMP3/WMA/WAV/ASF/OGGの5種類。もちろんWindows DRMにも対応しているので、各種の音楽配信サービスで購入した楽曲も楽しめる。対応ビットレートはMP3が8Kbps〜320Kbps、WMAが48Kbps〜192Kbps、ASFが8Kbps〜192Kbps、OGGが128Kbps〜512Kbps。MP3のID3タグ(ID3 V1、ID3 V2 2.0)にも対応する。
すでにPCのHDD内に再生可能な楽曲データが存在する場合には、フォルダごとドラッグ&ドロップすることでも転送可能だが、付属ソフトの「Samsung Media Studio」を利用するのが便利だ。ただし、音楽配信サイトで購入したWindows DRMによる著作権保護が施されたファイルについてはWindows Media Playerで転送する必要がある。
Samsung Media StudioはYP-U1Zへの楽曲転送のほか、MP3/OGG/WMA形式でのリッピング機能を備えている。もちろん、インターネットを利用した楽曲検索サービス「Gracenote」の「CDDB」(CD DataBase)も利用可能で、音楽CDをセットするだけでアーティスト名やアルバム名、曲名を自動的に検出してくれる。
Samsung Media Studioによるリッピングと楽曲転送は非常に簡単。音楽CDをセットすると自動的にGracenoteのCDDBサーバーへアクセスが行われ(インターネット接続時)、中央の「曲リストエリア」に曲名/アーティスト名/アルバム名などが表示される。
表示された内容で問題がなければ、PCのHDDにリッピングするか、YP-U1Zへ転送すればよい。リッピング形式は標準ではMP3/128kbpsとなっているが、フォーマットはMP3以外にWMAとOGGが選択可能で、ビットレートもMP3は32Kbps〜320Kbpsの13段階、WMAは48Kbps〜128Kbpsの6段階、OGGは0Q(64Kbps)〜10Q(500Kbps)の11段階と非常に細やかな設定が行える。
CDリッピングの設定 |
リッピング中の画面 |
OGG(Ogg Vorbis)はあまり聞き慣れない名称かもしれないが、MP3などと同じく不可逆圧縮方式を採用したフォーマットだ。MP3やWMAのように特定の企業が特許を所有するフォーマットではないために、それら企業の方針に左右されないほか、MP3と同じビットレートでもファイルサイズを小さくできるという特徴を持っている。
Samsung Media StudioはこのOGG形式のリッピングを行うこともできるので、試しに12曲/54分45秒のCDをOGG/128Kbps、MP3/128kbps、WMA/128kbpsの設定でリッピングしてみたところ、トータル(12曲分)のファイルサイズは以下のようになった。
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同ビットレートの条件下では、MP3/WMAに比べてOGGは1割弱ではあるもののファイルサイズを小さくすることが可能であることが分かった。音質についての詳細な検討は難しいが、いずれのフォーマットを利用してもYP-U1Zでリスニングを楽しむにはまったく問題ないレベル。少しでも容量を節約したい場合にはOGGを積極的に活用したい。
転送が完了すれば、YP-U1Zで音楽が楽しめる。本体前面に備えらえている液晶はモノクロだが白色LEDバックライトを備えており、認識性も高い。日本語や英語はもちろんのこと、中国語(簡体・繁体)、韓国語、フランス語、ロシア語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、オランダ語、ハンガリー語、ポーランド語、ポルトガル語、スウェーデン語の表示も可能になっている。
再生/一時停止ボタンの長押しで電源のON/OFFが行え、音楽ファイルをルートに転送しているならばそのまま再生でき、ナビゲーションボタンの左右で曲の早送り/早戻し、上下で音量の調節が行える。再生/一時停止ボタンは独立して配置されているほか、早送り/早戻しなどの機能を示すマークがプリントされており、操作に迷いを覚えることはない。
ナビゲーションボタンの周囲には各機能を示すマークがプリントされている |
再生中の画面。画面下部には次曲のタイトルが表示される |
YP-U1Zにフォルダを作成し、「アーティスト名」―「アルバム名」といった階層構造を構築している場合には、ナビゲーションボタンを押して「ナビゲーション」画面を呼び出した後に、目的のフォルダ/ファイルを探して再生ボタンを押せばよい。ナビゲーション画面ではナビゲーションボタンの左で上位フォルダに移動、右で下位フィルフォルダに移動、上下で同一ディレクトリ内の移動となっている。
ナビゲーションボタンを長押しすると、メインメニューが現れる。メインメニューに用意されている項目は「再生画面」「ナビゲーション」「プレイリスト」「setting」のみと非常にシンプル。settingからはイコライザーやバスブーストの設定が行え、イコライザーはクラシック/ジャズ/ロックなどのプリセットが用意されているほか、9バンドのユーザー設定も行える。
音楽再生については、ナビゲーション画面で選曲、再生ボタンでスタートという2アクションだけ覚えておけばよく、5分も触っていれば自然と操作方法が理解できる。また、ボタンプッシュへの反応も機敏で、操作していてストレスがたまることもない。
メニュー画面。液晶のバックライトはかなり明るく、視認性も高い |
イコライザーのユーザー設定は9バンドで可能 |
小型ポータブルオーディオの場合、いくらデザインが優れていても操作時にストレスを感じるようでは失格だ。本製品は直感的な操作インタフェースとクイックなレスポンスを兼ね備えており、毎日利用する製品としては必要不可欠な“操作時の快適さ”を提供してくれる。33グラムという小型軽量さや、カバンやペンケースにスッキリと収まる折りたたみ式のUSBコネクタという要素も、毎日持ち歩くものとしての価値を高めている。
1Gバイトいう大容量フラッシュメモリを搭載しながらも、同社直販サイト「サムスンダイレクト」での価格は1万2800円と非常にお手頃。1Gバイトの容量があれば、通勤時にはポータブルオーディオとして音楽を楽しみつつ、自宅と会社で利用するデータの持ち運びに利用することも可能だ。
ダイレクトエンコーディングやFMラジオなどの機能は搭載しないが、機能を音楽再生だけに絞り込むことによってシンプルな操作性と高いコストパフォーマンスを実現しており、“毎日持ち歩く、軽量なポータブルオーディオが欲しい”と考えるユーザーには最適な製品だといえる。
パッケージ内容。本体のほかヘッドフォン、ネックストラップなどが付属する |
パッケージには利用に際しての最低限の説明をまとめたクイックリファレンス「かんたんガイド」も付属している |
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提供:日本サムスン株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2005年12月31日