ピュアオーディオ基準の高音質を追求したAVアンプ「DSP-AX2700」がヤマハから登場した。透明度の高い中高域を支えるしっかりとした低域、音マニアにうれしいピュアダイレクトの進化、一新したシャーシ構造が支える安定感ある音質、自然な音場効果など、上級志向ユーザーにふさわしいAVアンプに仕上がっている。
昨年来、得意のDSPによる音場効果だけでなく、アンプとしての本質、良い音を生み出すという基本に立ち返り、映画だけでなく音楽再生も良い音で楽しく聴けるAVアンプへと舵を取ってきたヤマハが、その集大成とも言える中上位モデルを発表した。
「DSP-AX2700」は、ハイファイアンプ的味付けのDSP-AX4600、最新のAVフォーマットや端子に対応したDSP-AX2600、それにネットワーク機能やiPod対応を強化したDSP-N600といった機種が持っていた機能や品質、コンセプトをひとまとめにしながら、ヤマハAVアンプラインアップの中軸を担うにふさわしい完成度の製品として登場した。
加えてDSP-AX2700は、ヤマハが培ってきたサラウンドプロセッサ技術の集大成とも言える新しい音場プログラムを投入。Cinema DSP-plusと名付けられた新DSPプログラムが、“これなら使える”と思わせる自然な音場効果をもたらしてくれる。
では、どんな部分が進歩したのか。いくつかの切り口で、実際の試聴結果や開発者のコメントを交えながら紹介していくことにしたい。
映画にしろ、音楽にしろ、“音の良さ”、“音の質感”はこのクラスのAVアンプを求めるユーザーにとって、もっとも大きな関心事だ。いくら音場効果が優れていても、音場補正機能が素晴らしくとも、機能的に優れた面があろうとも、音が良くなければ、その製品を選ぶ意味がない。
昨年発売されたDSP-AX4600は、AVアンプとして必要とされる要素はすべて含んでいたが、“音楽を奏でられるピュアオーディオアンプでもありたい”という、設計者の想いがその魅力の中心にあった。
DSP-AX2700は、形式名から類推するとDSP-AX2600の後継モデルとなるが、実際にはフェイスデザインの共通性からもわかるとおり、DSP-AX4600の後継モデルである。DSP-AX4600が目指したハイファイアンプ的な音作り、音楽を楽しめるAVアンプというコンセプトを引き継ぎつつ、DSP-AX2600の後継モデルという性格も併せ持つ。
モデル主務を担当したヤマハAV機器事業部 商品開発部 ハードウェア開発グループ技師補の前垣宏親氏は「DSP-AX4600を超える音質を実現することが、今回の新製品におけるひとつの課題でした。DSP-AX4600は一つの完成形です。その上に何を加えていくのか。その答えとして用意したのが、DSP-AX4600が持っていた音楽性の高さに、AV的要素を加えることです」と話す。
さて、実際にDSP-AX2700の音を聴いてみると、DSP-AX4600とは異なるキャラクターを持つ音が出てきた。S/Nがさらに改善され、透明度の高い中高域から高域にかけての耳障りの良い、しかし伸びやかな音が印象的だ。これだけ透明感が高くなると、音が薄く、少なく、寂しく感じられるものだが、本機にはそうした濃度の薄さを感じさせるところがない。
もっとも大きな違いは低域の鳴り方。DSP-AX4600はスピード感、音の立ち上がりの鋭さが特徴だったが、DSP-AX2700はもっと腰の据わった、出しゃばりではないが、しっかりと音場全体を支える力強さを感じさせる。
加えて、どちらかといえばクールにサラリと聴かせるDSP-AX4600に対して、上品さは失わないまま、もう少しエネルギー感、演奏者の熱気や感情表現が前へと出てくる。
「スピーカーの奥に音場が展開するのがピュアオーディオ的とするなら、AV的な表現ではスピーカーの前に音を出すことで迫力や緊迫感を演出します。今回はニュートラルに対しスピーカーよりも気持ち前ぐらいに音が出てくるように意識して設計しています。加えて低域の表現力。この部分は膨らませれば迫力を出せますが、表現力にまでは至りません。きちんと恐怖感、あるいは静けさを表現するには、低域を正しく制御しなければなりません。爆発時の音圧や音の移動感のわかりやすさなども、DSP-AX2700のテーマです」と前垣氏。
なるほど、それは狙い通りに製品へと反映されている。さらに付け加えるならば、S/N感の良さ。思わずボリュームが従来よりも大きくなりがちになる、そのS/N感の良さは従来のAVアンプには感じられなかったものだ。またS/Nが改善したことで、聴感上のダイナミックレンジが明らかに改善している。
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提供:ヤマハエレクトロニクスマーケティング株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年12月31日