NECアクセステクニカの「Aterm WR8400N」は「高速」「安全」「簡単」の3つを非常に高いレベルで実現したブロードバンドルーターだ。さっそくその凄さを見てみよう。
NECアクセステクニカから、新しいブロードバンドルーター「Aterm WR8400N」(以下、WR8400N)が登場した。WR8400Nの特徴は簡単に言って「高速」「安全」「簡単」の3つを非常に高いレベルで実現したことにある。WR8400Nの何がすごいのか。早速その凄さを見てみよう。
WR8400Nの一番の魅力は、理論値で最大300Mbpsという高速無線LAN環境の実現だ。無線LANの規格であるIEEE802.11a/gでは最大速度は54Mbpsであるし、本製品の前モデルにあたる「Aterm WR8200N」のように、802.11n ドラフト1.0に対応した製品でも最高速度は130Mbps。既存製品に比べ、一気に倍以上の高速化が実現したということになる。
この秘密は新製品が6月28日に出されたばかりの省令改正をうけ、利用が解禁された5GHzないし2.4GHz帯の2つの無線チャネルを同時に使う「デュアルチャネルモード」を搭載したためだ。これまで、1チャンネルあたりの帯域は20MHzだったが、このモードではそれを倍の40MHzに拡大することで、飛躍的な速度の向上を果たしたのだ。
本製品ではさらに、既存製品から導入されていた複数のアンテナで同時にデータを送受信するMIMO技術を搭載。送信3×受信3のアンテナを備えることで、最大300Mbpsという超高速を実現したのだ(5GHz帯利用時)。もちろん、IEEE802.11nの最新規格である「ドラフト2.0」にも対応している。
300Mbpsはあくまで理論値であり実環境でここまでの速度は出ないが、2.4GHz帯とは違って干渉が少ない5GHz帯の場合、ほかに無線機器を使っていても速度低下は起こしにくい。同社が木造一戸建て(4LDK)の家屋で実験したところ、どの部屋で使っていても90Mbps以上の速度を記録したそうだ。既存製品「Aterm WR7850S」で5GHz帯を利用した際の速度が30Mbps強であることを考えると、実速度でも3倍近い速度を達成したことになる。
筆者宅の場合、外部へ接続するインターネット環境は光ファイバー化されているが、有線LANを利用しても通信速度は通常30〜40Mbps程度(通信速度測定サイトで計測)。無線LANのルーターにはアップルの「AirMac Express」を利用し、802.11gで無線アクセスをしている。802.11gの理論値は54Mbpsだが、この環境での速度は15Mbps前後。つまり、いままでは無線LANがボトルネックになっていたのだが、WR8400N(5GHz帯802.11n)を使ったところ、あっさり30Mbpsを超えてしまった(いずれも使ったクライアントは機材はNEC「VersaPro J VJ21A/W-2」+無線LANカード「WL300NC」)。
現在802.11b/gに対応したルータが数多く普及しているが(筆者宅でも実際に利用していた)、これをDraft11n対応のWR8400Nに変えただけで一気に倍の速度になったわけだ。
しかし、これではWR8400Nの本当の実力が分からないので、家庭内LAN環境でその通信速度を試してみた。「録画してデスクトップPCに保存したTV番組やビデオの映像を寝室のノートPCで観たい」という状況を想定して、ビットレート15Mbpsの動画をネットワーク経由で視聴してみた。すると、ストリーミング再生ではまったくコマ落ちなく、なめらかに再生された。HDD内に保存したビデオを観るような感覚で違和感がない。
さらに、長時間のムービーを想定した1.83GBの巨大なファイルをデスクトップPCからコピーしたところ、約4分31秒(3回試行の平均)でコピーが終了。Windowsのコピー時に表示されるコピースピードは最大で7MB/s(56Mbps)を超えていた。有線LANでアイ・オー・データ機器のLAN接続型HDDにコピーした場合も7MB/s前後だったので、我が家の有線LAN機器と同等のスピードを発揮していたことになる。それに対して802.11gではやはり2MB/s程度のスピードしか出すことができなかった。
実際に試してみて、WR8400Nはその通信速度だけでなく、干渉への強さ、障害物への強さを遺憾なく発揮してくれた。WR8400Nを使うことで、単に「家庭内LANを無線化する」だけでなく、部屋が離れていても安定した速度で無線化することができるだろう。
5GHz帯の利用については既存モデルでも利用されているW52/W53(36〜64ch)に加え、2007年1月から利用開始となったW56(100〜140ch)に対応したことにも注目したい(本製品ではW56のデュアルチャネルモードは利用できない)。無線LANの利用時に速度低下の一因となるのは近接チャンネルによる干渉だが、W56はまだまだ対応機器が少なく、ほとんど干渉の心配はない。干渉を避けたい際には利用したい機能といえる。
最近では光ファイバーによるインターネット環境を導入する家庭も増えているが、ほとんどの場合で速度は理論値の100Mbps。実測値では90Mbpsを達成することもまれだが、それでも室内のLAN環境が30Mbps程度ではせっかくの高速インターネットのメリットをスポイルしてしまう。実測値で90Mbps以上を達成するWR8400Nならば、もはや無線LANがブロードバンド環境の足かせになることはない。
これだけの通信速度が出れば、どんな大容量データでも無線LANでやりとりできる。最近は地上デジタル放送や大画面テレビ、ビデオカメラと、ハイビジョン対応製品が急速に増加しており、録画したHDコンテンツを家庭内LANでストリーミング配信するのも珍しいことではなくなった。90Mbps以上の帯域を確保できるならば、コマ落ちなく映像を楽しめるはずだ。
最近は家庭にギガビットイーサネット環境(1000Mbps)を導入する例も増えているが、まだ100Mbps環境が圧倒的に多いだろう。WR8400Nは100Mbpsの有線LAN環境を十分置き換えられる実力を備えているのだ。
2.4GHz帯は無線LAN以外の機器の干渉が多く帯域幅自体も狭いため、今回のようなデュアルチャネルモードの運用は難しい。しかし、5GHz帯ならば干渉が少なく、離れた場所で使っても通信速度の減衰は少ない。同社では「今後の無線LANは5GHz帯がスタンダードになると」として、5GHz帯の利用を推奨している。
5GHz帯を推奨しているとはいえ、WR8400Nは802.11b/gもサポートしており、2.4GHz帯を使う802.11nも利用できる。家庭内にどの無線LAN規格を使う機器があっても、まったく悩むことなく扱える懐の深さも魅力だ。
速度だけではなく、使い勝手の良さもWR8400Nの魅力だ。無線LAN機器は設定に手間取ることもあるが、WR8400Nでは「らくらく無線スタート」機能を搭載。ボタン操作で簡単に無線LAN機器を接続することができる。面倒なSSIDや暗号化キーの設定も自動的にPCなどにダウンロードして設定できるので迷うことがない。
ありがたいのはPCだけでなく、家庭用ゲーム機もサポートしている点だ。たとえばソニーのPSPやPlayStation 3、ニンテンドーDS、Wiiといったゲーム機は無線LAN機能を搭載しているが、「らくらく無線スタート」ならば簡単に接続できる。
無線LANで気になるセキュリティも万全。最近は強固な暗号化であるWPAを使うのが一般的だが、ニンテンドーDSなどWPAをサポートしていない機器もある。この場合、これまでだったら、このような機器にあわせてPCの暗号化もWEPに統一してしまうこともあっただろう。
しかしWR8400Nでは、複数のSSIDによって接続する機器を判別し、「802.11n+WPAで接続する機器」「802.11g+WPAの機器」「802.11b+WEPの機器」のように複数の環境を同時利用できる「Multi SSID機能」によってこの問題を解決してくれる。
セキュリティに関してはさらに、ネットスターが提供する「インターネット悪質サイトブロック」機能を搭載。PCはもちろんのこと、ゲーム機やネット家電からでも、危険なサイトへのアクセスをブロックしてくれる。しかも「子供が使うゲーム機はブロックレベルを厳しく」「お父さんの使うPCはレベルを緩く」といった個別の設定もできる。これは年額3150円の有料サービスだが、60日間の無料体験が付属しているので、一度その効果を試してみるといいだろう。
使い勝手については、「らくらくネットスタート」も注目だ。ボタンを長押ししながら電源を入れるだけで、「PPPoEルータモード」「ローカルルータモード」「アクセスポイントモード」の中から適切な動作モードを自動判別してインターネットに接続するほか、WAN側が回線業者から提供されたモデム一体型ルーターでも問題なし。自動的にルーターにあわせた設定を行ってくれる。
使い勝手や安全性についても多いに注目したいが、やはり、WR8400Nの凄さはなんといってもその驚くべき無線LANのスピードだ。せっかく光ファイバー環境にしたのに、自室のノートPCだとあまり速くなった気がしない、リビングのHDDレコーダーに保存したフルHD映像を、ホームネットワーク経由で寝室のノートPCでも快適に観たい――そんな場合は、WR8400Nを試してみてもらいたい。きっと「LANケーブルとはもうおさらばだ」と感じるに違いない。
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提供:NECアクセステクニカ株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年10月9日