新世代映像ソフト時代に求められるAVセンターの姿とは――。この問いに一番近い答えが、ヤマハAVアンプの新製品「DSP-AX3800」だ。新音声フォーマットへの対応度を、機能だけでなくDSPプログラムやアンプとしてのチューニングにフォーカスを当てて眺めてみた。
AVアンプの歴史は、映像ソフトの音声フォーマットの歴史でもある。それは、単にサラウンドフォーマットの進化やコーデックの変化といった、新しい技術要素に対応し続けてきた歴史というだけではない。映像ソフトに収録された音声の質が向上してきたことで、AVアンプの音作りに対する考え方も変化してきている。
そしてBlu-ray DiscやHD DVDといった新世代フォーマットを採用するソフトウェアが登場してきたことで、AVアンプの音は大きく変化しようとしている。メーカーはこの変化をどのように読み取り、製品に反映しようとしているのか。ヤマハのミドルクラスAVアンプ「DSP-AX3800」および「DSP-AX1800」を紹介しながら、新世代映像ソフト時代に求められるAVセンターの姿を透かしてみよう。
かつて、AVアンプに入力されるサウンドの質は、残念ながらさほど高いものではなかった。ソフトに含まれる情報量は少なく、DSPを用いて音場を“補う”必要があった。何かを作り出して補わなければ、どこか寂しい少ない音数で囲まれた音場になってしまうからだ。アンプ自身も、ハイファイ路線よりも、音をふくよかに表現できる音場を自ら作り出す味付けが求められる。
その後、音声フォーマットの進歩やソフトに含まれる音声の質が高まってきたことで、DSP処理の味付けも何かを付け足す方向から、音場をシミュレートしたり、整えて聴きやすくさせるといった、よりナチュラルな方向へと振れてきた。アンプ部も音場感を演出するよりも、ストレートにソースの情報を表現できるハイファイ調が好まれるようになってきている。
このように「DSP処理」「アンプとしての音作り」の両面で、音声フォーマットの変化と、それに伴う品質の向上がもたらす影響は小さなものではない。しかも新世代の映像ソフトには、非圧縮のリニアPCM、あるいはTrue HDやDTS-HD Master Audioといったロスレス圧縮の音声が含まれる。オーディオで言えば、MP3の世界から一気にCD品質を超え、DVD-AudioやSACDの領域に近付いた。
元ソースに含まれる音声情報が圧倒的にリッチになってくれば、もはや“失われた何か”をDSPやアンプの味付けで補う必要はない。求められるのは、元ソースが持つ情報を失わずに音場を整えるDSP能力と、高品質な音声ソースを正確に表現できる癖のないアンプ設計である。
もちろん、ロスレス圧縮音声のデコード機能や、最新のHDMI規格に対応することも必要だが、中級クラスのAVセンターがこれらの技術に対応するのは当然とも言える。その上で製品を選択する上で重視すべきは、高品質な音声フォーマットを受けた後、それを適切に扱っているかどうかではないだろうか。
DSP-AX3800/AX1800には様々なスペック面での強化が図られているが、今回は主に新しい音声フォーマットへの対応度を、機能だけでなくDSPプログラムやアンプとしてのチューニングにフォーカスを当てて眺めてみた。
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提供:ヤマハエレクトロニクスマーケティング株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年10月31日