「モバイル放送」を追いかけた2500キロ――Sバンドを求めて西へ:4日間同行レポート(前編)(4/4 ページ)
「モバイル放送」をじっくりと体験するチャンスは記者といえどもなかなかない。と思っていたら、「もうお腹いっぱい」と涙目になるほど堪能できるチャンスがめぐってきた。東京〜福岡を4日間かけてクルマで往復し、その間は搭載したチューナーでモバイル放送を“見っぱなし”という企画である。これを逃したら記者魂が廃ろうというもの。早速同行することにした。
昨晩の到着時に分かっていたことだが、京都のように高層建築がない街でも、道路脇に3〜4階建て程度のビルがあると受信が途切れることがある。歩道の幅や車線の方角なども微妙に絡む問題だが、やはりこの程度の規模の都市になると、ギャップフィラーの設置は必須なのではないだろうか。京都駅で記者の方を一人降ろし、京都らしいところを背景に写真を撮ってから、西へ向けて出発した。
本日は一般道を通って行けるところまで行き、時間がなくなりそうだったら高速道路に切り替えて、夜までには福岡に到着する予定である。油小路のあたりから国道一号線に入り、そのまま大阪方面を目指す。
大阪市内は通過したのみだったが、やはりこれだけの都市になると建物の陰はもとより、道路の上も覆われていることが多く、受信はかなり厳しい。実は、大阪近辺へのギャップフィラー設置はすでに行われているのだが、免許の関係でまだ電波を発信できないだけだという。
当初は大阪市内をうろついて受信状況でも調べてみるかとのんきに構えていたのだが、この時点ですでに出発から2時間が経過している。このペースでは今日中にはとうてい福岡に到着できないので、そのまま通過して神戸へ向かった。
国道一号線沿いにはやはりビルが多く、またそのビルのある方向がちょうど南なので受信状況も途切れがちである。ただ、2車線のうち中央よりの車線を走ることが多かったため、ビルまでの距離がやや離れていれば、けっこうな高さのビルでも影響がない場合もあった。ちょうど渋滞してせいで、車内で大丈夫な例と受信できない例が撮影できたから紹介しよう。
神戸市内へ着いた時点で12時過ぎ。ポートアイランドで撮影をしたのち、新神戸駅で記者の方が一人降りた。このままのペースでは、とても間に合わないことが判明したので、山陽自動車道に入ることにする。
トンネルを抜けるとまたトンネルだった
山陽自動車道は、関東に住んでいる私にとってはなじみのある道ではないため知らなかったのだが、驚くほどトンネルが多い。山間部を走る中国自動車道よりも、海に近い山陽自動車道のほうがトンネルが多いのはなんとも不思議だが、今回はそんなことに感心している余裕はない。
トンネルに入るたびに受信が途切れるので、かなりストレスとなる。いっそ切れっぱなしなら諦めもつこうというものだが、途切れ途切れながら放送されるので気になって仕方がない。
ちょうどこのときは、懐かしのTVドラマを見ていたのだが、トンネルに入る前までの話と、出た後の話が飛びすぎていて話が見えなくなってしまう。「脳内エラー訂正」を試みてストーリーを補完しようとしたが、とうてい追いつくものではない。最後は音楽番組に切り換えてしまった。
ここで思ったのは、クルマでの走行のようにいつ途切れるかわからない状態では、ドラマやストーリー性のある番組の視聴は適さないということである。
一方、ミュージックビデオなどの番組は、中断されてもドラマほどはアタマに来ない。一番いいのは音声のみの音楽番組で、これは途切れてもほとんど気にならなかった。
モバイル放送では音声放送も30ch用意されていて、ジャンルも豊富だ。映像の派手さに目を奪われがちだが、24時間絶え間なく受信できる音声チャンネルは、いわば有線放送がモバイル環境で受信できるようなもの。こちらの方が地味ながらもキラーコンテンツになりそうな気がする。
山陽自動車道から中国自動車道に合流したあたりで、トンネルの数も減ってきた。午後5時頃には壇ノ浦PAに到着。夕暮れの関門海峡を背景に撮影。あと少しで福岡だ。
関門海峡をくぐり、福岡までは九州自動車道でおおむね受信状態も良好であった。ただ、福岡市内に入るとやはりビルの陰になってしまい途切れがちになる。ホテルに到着したのは午後8時5分。せっかくなので、携帯端末を持って行き、屋台をバックにモバイル放送をパチリ。
旅はやっと折り返し地点まで来たところだ。( 後編へ続く)
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