DLNA (2)――デジタル家電のホームネットワーク:デジモノ家電を読み解くキーワード
異種機器間でコンテンツの共有を可能にするDLNAは、“標準化された技術の寄せ集め”的な特徴を持つ。今回は、そのガイドラインの詳細と著作権保護技術への対応について解説しよう。
基本はサーバー/クライアント
DLNAでは、異機種の接続を“つなぐだけ”で実現する。その中核となる技術が、Microsoftを中心に制定された「UPnP」(Universal Plug and Play)だ。
ユーザー側から見たUPnPの特徴は、IPネットワークに接続できること、設定なしに通信を含めた各種機能が利用できること、有線/無線LANやIEEE 1394など幅広い通信機器をサポートすることの3点。DLNA 1.0では、そのうち物理層として有線LAN(Ethernet 10/100BASE-T)と無線LAN(IEEE 802.11a/b/g)をサポート、「DMS」と「DMP」の2種に分類される機器によりTCP/IP上を流れるHTTPプロトコルで通信を行う仕組みだ。
そのDMS(Digital Media Server)は、コンテンツを他の機器に提供するサーバーとしての機能を果たす。一方のDMP(Digital Media Player)は、DMS上のコンテンツを再生するクライアントだ。DMSにはDVDレコーダーなど保存能力のある機器を、DMPにはテレビのように表示/再生能力を持つ機器を想像すれば理解しやすいだろう。
メディアフォーマットの定義
対応するメディアフォーマット(コーデック)についても規定がある。動画や音声など、コンテンツの種類ごとに必須とオプションが決められ、DLNA 1.0ではJPEGやMPEG-2が必須とされた。
さらに現行バージョンのDLNA 1.5では、固定型の機器と比べ再生能力に乏しいモバイル機器向けにコーデックを定義(下表)。DLNA 1.0ではDMSとDMPというシンプルな構成も、DLNA 1.5ではDMC(Digital Media Controller)やM-DMS(Mobile Digital Media Server)など、新たに10種が追加されている。
DLNA 1.5が対応するメディアフォーマット | ||
---|---|---|
種類 | 必須 | オプション |
一般向け動画 | MPEG-2 | MPEG-1、MPEG-4、WMV9 |
一般向け静止画 | JPEG | GIF、PNG、TIFF |
一般向け音声 | LPCM | AAC、MP3、AC3、WMA9、ATRAC3plus |
モバイル向け動画 | MPEG-4 AVC/H.264 | MPEG-2、MPEG-4、VC-1、H.263 |
モバイル向け静止画 | JPEG | GIF、PNG、TIFF |
モバイル向け音声 | MP3、MPEG-4 AAC LC | MPEG-4 AE-AAC、MPEG-4 AAC |
デジタル放送も共有可能
DRNA 1.5におけるもう1つの変化が、DLNAリンクプロテクションガイドラインの設定。DTCP-IPを必須の、Windows Media DRM for Network Devices(WMDRM-ND)をオプションのDRMとしてサポート、プロテクトされたコンテンツが再生可能になった。
DTCP-IPはデジタル放送の出力インタフェースとして承認されているので、DLNA 1.5準拠の機器を購入すれば、地デジなどコピーワンスの番組もネットワーク上で共有可能だ。社団法人電波産業会(ARIB)が定めた運用規定では、クライアントは最大8台、かつ同一のサブネットに限定されるが、対応機器が順調に増えればコピーワンスのコンテンツもかなり扱いやすくなることだろう。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
関連記事
- DLNA、伝送路上の権利保護を進める新ガイドラインを発表
「CEATEC JAPAN 2006」3日目の基調講演。DLNA社長兼ボード議長のスコット・スマイヤーズ氏が、ネットワーク伝送路上の権利保護を目的とする「DLNAリンクプロテクション・ガイドライン」を発表した。 - 「DLNA」 (1)――デジタル家電のホームネットワーク
ビデオで録った映像はビデオで、PCに保存した写真はPCで、というデバイス間の垣根が取り除かれつつある。今回は、異種機器間でコンテンツの共有を可能にする「DLNA」について解説する。 - デジモノ家電を読み解くキーワード:「地デジ時代のテレビ録画」――テレビとビデオの役割分担が変わる?
「テレビは視るものビデオは録るもの」という常識が変わりつつある。今回は、デジタル放送の普及にあわせ変貌するテレビ録画のあり方について考える。 - デジモノ家電を読み解くキーワード:HDMI(2)――デジタル時代のAVケーブル
ハイビジョン対応AV機器の分野で採用が進む「HDMI」。今回は、その規格の変遷と現状を見てみよう。 - デジモノ家電を読み解くキーワード:HDMI(1)――デジタル時代のAVケーブル
薄型テレビなどのハイビジョン対応AV機器で採用が進む「HDMI」。今回は、デジタルAV機器をケーブル1本で接続できる「HDMI」について解説する。 - デジモノ家電を読み解くキーワード:EXIF(2)――JPEG画像を引き立たせる「EXIF」
デジタルカメラで撮影するJPEG画像には、さまざまな情報を保存するために「EXIF」と呼ばれる規格が利用されている。今回は、そのEXIFを応用した活用方法を紹介しよう。 - デジモノ家電を読み解くキーワード:EXIF (1)――JPEG画像を引き立たせる「EXIF」
デジタルカメラで撮影した写真には、知らず知らずのうちたくさんの情報が記録されている。今回は、その「EXIF」が制定された理由と基本的な仕組みについて説明しよう。 - デジモノ家電を読み解くキーワード:MPEG-4(5)――MPEG-4のつくりかた
これまでMP4コンテナの仕様を中心にMPEG-4ムービーファイルを説明してきたが、MPEG-4編ラストとなる今回は、MPEG-4生成ツールについて考えてみたい - デジモノ家電を読み解くキーワード:MPEG-4(4)―― MPEG-4とコーデックの関係
MPEG-4コンテナの要件を満たすファイルが「MP4」だが、世の中には“映像部分だけMPEG-4”なAVIファイルが流通している。今回は、MPEG-4とコーデックの関係をふまえつつ、そのようなAVIファイルとの違いを説明してみよう。 - デジモノ家電を読み解くキーワード:MPEG-4(3)――動画のクオリティを決定づける「プロファイル」と「レベル」
前回はMPEG-4に採用された概念「コンテナ」について説明した。今回は、そのコンテナにどのようなコンテンツを詰め込むか規定する「プロファイル」と「レベル」について説明する。 - デジモノ家電を読み解くキーワード:MPEG-4(2)――動画や音声などを“食べる”ための「トレイ」
前回はMPEG-4がいわば“カフェテリアのトレイ”となっている構造について簡単ながら説明した。今回は動画や音声などを実際に再生するために必要な概念である「トレイ」について解説する。 - デジモノ家電を読み解くキーワード:MPEG-4(1)――“カフェテリア”方式の動画フォーマット
よく見るけれど、人に説明できるかと言われればちょっと……。この連載ではデジモノ家電を理解する上でキモになる各種のキーワードを解説していく。今回のテーマは、よく耳にするものの正確な説明が難しい「MPEG-4」。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.