「ハイビジョンで残す」時代のレコーダー選び:バイヤーズガイド(3/3 ページ)
次世代DVDレコーダーの世代交代が一気に進んだ2007年後半。やはり注目すべきは、ソニー、東芝、パナソニックの3社が投入したH.264(MPEG4-AVC)対応製品だろう。今回は、そうした次世代DVDレコーダーを中心に各社の製品を比較してみよう。
VHSユーザーの移行を意識したHDDレス
H.264製品を3メーカーが投入する中、異なるアプローチの製品を登場させたのがシャープだ。HDDレスのBDレコーダー「BD-AV1/AV10」は、2層BDメディアであれば地上デジタル放送がTS録画でも6時間録画できる点を生かし、HDDを内蔵しないことで価格を抑えた製品。アナログチューナーや外部入力まで排除し、録画はデジタル放送とi.Link経由のダビングのみと思い切り良く機能を絞り込んだ。
コアユーザーの視点で見れば、この製品は2つの見方ができる。1つは最初からBDメディアにハイビジョンで残すための録画専用に割り切って購入すること。もう1つは手持ちのi.Link(TS出力)対応レコーダーと組み合わせ、BDへのダビング用に購入することだ。メディアが保存用としては少々割高なBD-REのみのサポートであり、頻繁にBDへのダビングを行う人は運用コストで相殺されてしまう可能性も高いが、BDへのハイビジョン録画、ダビング環境を整えられる選択肢としては注目したい。
他のハイビジョンレコーダーの動向は?
ここまでにピックアップした製品以外に目を向けると、やはり注目を集めたのはパナソニックのDVDレコーダーだろう。上位となるBDレコーダー同様にH.264録画をサポートし、DVDへのハイビジョン録画も可能にした。次世代DVDレコーダーであれば懐疑的な部分も残るDVDへのハイビジョン録画だが、価格が安いDVDレコーダーでは魅力的な機能に映るだろうし、ハイビジョンのままディスクメディアに残せるという選択肢を持つ意味は大きい。
もちろんHDDへもH.264録画ならハイビジョンで長時間の録画が行えるし、MPEG2-TSでのレコーダー間の移動が可能なi.Link端子も下位モデルまですべて備えているなど、既に次世代DVDレコーダーを所有している人の2台目レコーダーとしての資質も高い。予約録画機能はベーシックで、またBDレコーダー同様にハイビジョンのDVDダビングでは分かり難い部分もあるが、DVDレコーダーの最新モデルとして魅力的であることは間違いない。
液晶テレビが好調なこともあり、ハイビジョンレコーダーでもここ数年で急速にシェアを拡大したシャープは、BD/HDDレコーダー2モデルを投入(発売は2008年2月中旬に延期)したが、1Tバイト/500Gバイトの大容量HDDを搭載して「ダビング10」への対応を表明している以外には、機能的には従来のBD/HDDレコーダーとあまり変わらない。同社の製品はレコーダーとしての機能は比較的ベーシックで、ダブルチューナーを意識させない2番組同時録画機能など使い勝手も悪くないが、製品単体としてみるとパンチに欠ける感は拭えない。ただしH.264録画にこだわらない人なら、ダビング10対応と強力なAQUOS連携は魅力だろう。
日立製作所は、DVDレコーダー3製品を投入したが、機能的にはVHSを含む3 in 1モデルが目新しい程度で、全般にファミリーユースを意識したシンプルな使い勝手を追求したモデルになっている。同社の企業イメージにはマッチした方向性とも言えるが、真っ先に1TバイトのHDDやダブルデジタルチューナーを導入したときのような先鋭感が薄れてしまった点は残念だ。
東芝のDVDレコーダー最新モデルは、厳密に言うと2007年秋モデルということになる。H.264録画もサポートしていないので大きな注目ポイントがある訳ではないが、PC連携を含めた伝統の多機能さは顕在で、DVDレコーダーとしての資質は高い。
また東芝のDVDレコーダーでは、もっともベーシックな「RD-E301」を除き、スカパー!連動録画機能を備える最後のモデルになりそうな点は注目しておくべきだ。「RD-A301」では赤外線リモコンを利用する外部チューナー連動機能に変更された形になるが、こちらはスカパー!チューナーをサポートしていない。PPVを除けばコピーコントロールが導入されておらず(一部強制コピーワンスになるチューナーもあるが)、録画後の編集やダビングの自由度が高いスカパー!を当面録画し続けるという人は一応確認しておきたい。
次世代DVDレコーダーも「買い」の時代へ
2007年末以降に投入されたハイビジョンレコーダーで注目されるのは、やはりH.264対応だ。しかし同時に次世代DVDレコーダーの価格レンジも広がり、下位モデルは10万円を切る価格で販売されていることも珍しくない。
下位モデルはHDD容量が250G〜300Gバイト程度で、旧世代であればハイビジョン、つまりTS録画での録画可能時間が心許ないわけだが、H.264録画対応機であればこの点は随分と緩和される。価格面以外にも各社の新製品が軒並み「ダビング10」への対応を表明するなど、“待ち”の要素は薄れた。パナソニック製品は少々強気の価格で推移しているが、下位モデルとはいえ実売価格が10万円を割り込んだことで次世代DVDレコーダーも本格的に「買い」の時代に突入した。
一方、DVDレコーダーもHDD容量が300Gバイト程度のエントリーモデルは実売5〜6万円台まで低価格化が進んでおり、ダブルチューナーモデルも随分と買いやすくなった。タイムシフト利用が中心、光学メディアへの保存はDVDクオリティでも十分という人には悪くない選択になる。アナログチューナー世代のDVDレコーダーの例から推測しても、ここからさらに大幅な値下がりは期待しにくい。
対して、大容量HDDを搭載したDVDレコーダーの上位モデルは、次世代DVDレコーダーの下位モデルと価格がオーバーラップしつつあり、積極的に買いとは言いにくくなった。もちろんHDDにハイビジョンで溜め込めば良いのであれば上位モデルも否定はしないが、次世代DVDレコーダーの下位モデルでもH.264録画対応ならHDD容量は実質倍程度の価値があると言えなくもない。1年前ならi.Link出力対応の大容量HDD製品を購入しておき、次世代DVDレコーダーに備えるという考え方もあったと思うが、次世代DVDレコーダーの低価格化で既にそういう時期は過ぎたと思われる。
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