HDMI+DisplayPort付き30型ワイド液晶「3008WFP」を攻略する:WQXGAなのに8系統入力(3/3 ページ)
デルの「3008WFP」は、DisplayPortやHDMIなど全8系統もの映像入力を備えたWQXGA対応の30型ワイド液晶ディスプレイ。まさにモンスター級の液晶だ。
高彩度の色を表現できる広色域パネル
3008WFPの液晶パネルは広い色域を備えており、Adobe RGBの色域も広い範囲でカバーしている(Adobe RGBカバー率は非公開)。OSDメニューのプリセットモードにも「Adobe RGB」の設定が用意されているので、デジタル一眼レフカメラで撮影したAdobe RGB色空間の画像をPhotoshop CS3で表示し、その品質をチェックしてみた。
表示は緑成分が少し強いように感じるが、やはり高彩度の色表現が優秀だ。一般的なsRGB色域の液晶ディスプレイと比較すると、特に緑から青、赤系の色相で発色の違いがはっきり分かる。彩度の高い赤や緑のディテールがよく表現できており、色飽和をほとんど感じさせず、高彩度領域の階調も上々の視認性だ。
モノクロやカラーのグラデーションも滑らかな表示で、不自然な縦筋(トーンジャンプ)は中間調から暗部にかけて目を凝らすと判別できる程度だった。シャドウ側の階調がつぶれやすいようだが、輝度とコントラストの調整である程度は改善できる。3008WFPはハードウェアキャリブレーション機能を持たないが、市販のキャリブレーター(測色機)でソフトウェアキャリブレーションすれば、Adobe RGB色空間の画像もかなり適切な発色で扱えるだろう。
ただし、「sRGB」モードの表示品質は、それほど正確とはいえない。sRGB色域の液晶ディスプレイ(sRGB色空間でキャリブレーション済み)と比べると、全体的な発色に深みがなく、パネルの色域を狭めた表示がうまく最適化されていない感がある。モノクロやカラーのグラデーション表示では、ところどころにうっすらと目立たない程度のトーンジャンプが見られ、階調全域でトーンカーブを持ち上げているような印象だ。
一方、動画やゲームの表示には大きな不満はない。アクション系やシューティング系のゲームだと、背景の動画ブレやキャラクターの残像感が見えやすいシーンもあるが、この辺りは個人差が大きい部分だ。ゲーム以外の動画コンテンツであれば、かなりシャープな印象で鑑賞でき、ダイナミックコントラストで映像にメリハリが付く効果も高い。ダイナミックコントラストの有効と無効、プリセットモードの選択肢による表示品質の違いは、一通り確認しておきたい。
30型ワイドと液晶パネルが大きいだけに、表示の均一性も気になるところだが、今回入手した機材は画面の左5分の1程度が明るく、わずかに色ズレが見られた。とはいえ、こうした表示傾向は画面全体に単一の色を表示して凝視するようなことがなければ気付かないレベルで、大画面ワイド液晶パネルとしては健闘している。普段の使用で表示ムラが問題になることは少ないだろう。
安くはないが第一線で長く使えるハイエンドディスプレイ
デルの直販サイトにおける3008WFPの価格は、標準構成で22万8000円と高価なのは否めない。とはいえ、30型ワイドで2560×1600ドット表示の製品としては安価な部類だ。このクラスの製品はグラフィックスや写真といったプロ向けのモデルがほとんどだが、3008WFPの位置付けは微妙に異なる。
3008WFPの特徴は、HDMIをはじめ多数のAV入力と柔軟なスケーリング機能、USBハブやメモリカードスロットを搭載するなど、個人用途で使いやすい機能を満載していることだ。30型クラスでここまで豊富な機能を持つ製品はほかに見られない。PC入力で2系統のデュアルリンクDVI-DとDisplayPort、AV入力でHDMIがあり、いずれもHDCP対応なので、将来的にも多目的に活用できる大画面・超高解像度ディスプレイとして長く使い続けられるだろう。
前述の通りネガティブな面もあるが、全体を通して見ればコストパフォーマンスは決して悪くない。多少は割高になっても、数年先を見越して分割払いで購入する手もあるだろう。広色域での厳密な色再現を求める向きにはハードウェアキャリブレーション対応のディスプレイが最適だが、入力端子が豊富なWUXGA超の高解像度環境を欲している個人ユーザーや予算に余裕があるビジネスユーザーにとって、3008WFPは唯一の選択肢になりうる存在だ。
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