液晶テレビ、今年はグレア化が急速に進む?:本田雅一のTV Style(2/2 ページ)
不景気な話題が続くテレビ市場。今年は各社がさまざまな魅力的な機能をテレビに盛り込む“総力戦”となりそうだ。そうした中、画質面で注目したいのが液晶パネルの光沢仕上げ(グレア液晶)だ。
とはいえ、ハーフグレアといっても、ノングレアの一種であることに変わりはない。きちんと低反射処理コーティングを行ったフィルムを貼り付けたグレア仕上げの方が、はるかに画質はいい。ノングレア処理の度合いによっても異なるが、ノングレアとグレアの明所コントラストは15〜30%ほどグレアの方が有利になる。
もちろん、これはメーカーも理解しているのだが、それでもハーフグレアという中途半端な、悪くいえばポリシーのみえない仕様を採用していたかといえば、せっかく売れている液晶テレビ人気に水を差したくなかったからなのだろう、と思う。
たかが表面仕上げとはいえ、店頭での見え方はかなり異なる。家庭のリビングよりはるかに広く、びっしりと天井に蛍光灯が配置され、さらにテレビの向かい側に何らかの光源を持った機器が並ぶといった状況では、いくら低反射コートを施しても映り込みは避けられない。
とくにこれまで、「液晶は強い光源があっても写り込まないので、目がチラチラしません」といって販売してきたメーカーの場合、今さら急に液晶もグレアの方がキレイですとは言いにくいというのもあるのかもしれない。実際、シェアをほとんど失っていた三菱電機がREALシリーズを立ち上げたあと、業界でも最も早い時期に(日本ではおそらく初めて)液晶テレビのグレア化を行った。一昨年のことだ(→“光沢”液晶テレビの挑戦)。
当時、三菱電機の担当者と話したのを覚えているが、家庭の中では画面への直接の映り込みがあるケースは少ないので、それならば画質の良い方がいいからグレアに挑戦するとして、グレアパネルの国内初採用を進めていた。
そもそも、ガラスパネルを前面に配するプラズマテレビの場合、ほぼすべての製品(一時、過去には異なるものもあったので“ほぼ”と書くが、現行モデルでいえば全機種)がグレア処理となる。それでも低反射コートを施せば、実際に問題になることはあまりなく、むしろ利点の方が大きいと分かっているからノングレアを使わなかった。グレアのテレビは、既に大きな実績がある。「グレア仕上げは映り込みでチラチラして、テレビ視聴に集中できない」といった説は、対プラズマに対するセールストークの一部と考えるべきだろう。
実際に店頭にあるグレア仕上げとノングレア仕上げの製品を見比べるとよく分かる。異なるメーカーだったりすれば、当然、色再現などはそもそも比較できない。しかし、シャープさや精細感、それにコントラストや色純度の高さといった面ではグレアの方が良好と感じると思う。
過去はどうあれ、今、何が顧客にとってベストなのかを考えれば、当然、グレア仕上げの製品が増加するだろう。もう過去の経緯や店頭での見え方に拘っている時代でもない。実際にユーザーにとって良いと思われる方向をメーカー自身が向かなければ、インターネットで情報が素早く駆けめぐるこの時代、ユーザーは価格の安い製品ばかりに流れていってしまう。小さなことでも画質や音質を改善できることならば、プライドを捨ててでもきちんとユーザーの利益を追求する姿勢こそがブランドを育てるということに、メーカーも既に気付いていると思いたい。
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