「iVDR」――撮りためて持ち運び、外で見るメディア:デジモノ家電を読み解くキーワード
レコーダーのHDDに録画したデジタル放送を自宅以外で見る際、現在ではBDなどにダビングするため手間がかかる、これを解決するのが、HDD内蔵のカートリッジ型メディア「iVDR」だ。
iVDRの特徴
iVDR(Information Versatile Disk for Removable usage)は、デジタル時代の情報機器をターゲットにしたリムーバブルメディア。現在は最大320Gバイトのカートリッジが販売されており、HD品質の映像を長時間かつ繰り返し録画できるうえ、その形状ゆえに取り外しと携帯も容易だ。現在の主な用途はビデオ(テレビ)コンテンツの記録だが、将来的にはホームサーバなどでの利用も検討されている。
iVDR最大の特徴は「データの“持ち運び”が容易」という点だろう。耐衝撃性に優れたカートリッジ構造を採用するという物理的な意味のほかに、後述するコンテンツ保護技術「SAFIA」により保存したコンテンツを録画した機器以外でも再生できるというソフト的な意味もある。
対応製品を扱うメーカーは現在のところ、日立製作所(薄型テレビ Woooシリーズ)や日立マクセル、アイ・オー・データ機器(いずれもカートリッジならびにレコーダー、プレーヤー)と決して大きな勢力とはいえない。しかし、この7月には三洋電機からiVDR対応デジタル放送チューナー「repoch」(レポック)が発表され、シリーズ化が検討されるなど、普及の兆しが見えはじめた。
iVDRにデジタルコンテンツを記録する場合、「iVDR-Secure」(iVDR-S)のロゴが表示されたカートリッジを選ぶ必要がある。iVDR-Sはコンテンツ保護技術「SAFIA」(Security Architecture For Intelligent Attachment device)に対応しており、デジタルテレビ放送やデジタルオーディオの不正コピーを防止しつつ、同規格を満たす機器さえあればどこでも再生できる点が特徴だ。ただし、現時点ではダビング10をサポートしていないため、録画した番組はコピーワンスとなる。iVDRコンソーシアムはダビング10のサポートに向け、作業を進めている段階だ。
iVDRの今後
iVDRには、2009年7月時点で4種類のカートリッジ規格が存在する(iVDR microは暫定)。現在の主流は2.5インチHDD内蔵の「Standard」で、現在販売されているWoooシリーズやメディアプレイヤーはこのサイズのみに対応している。iVDR Extremeは耐衝撃性を高めた規格で、データのバックアップなど業務用が想定されている。容量は現在のところ160/250/320Gバイトの3種だが、年内には最大500GBにまで拡張される予定。
iVDRに関する規格策定を行う「iVDRコンソーシアム」では、iVDRの国際標準化作業を進めている。2009年12月には承認される見込みで、そうなれば海外市場での普及も視野に入る。今後に注目の規格といえる。
iVDRのカートリッジ規格 | ||
---|---|---|
規格名 | サイズ(幅×奥行き×厚み) | 搭載HDD |
iVDR micro | 50×50×8mm | 1インチHDD |
iVDR mini | 80×67×10mm | 1.8インチHDD |
iVDR standard | 80×110×12.7mm | 2.5インチHDD |
iVDR Xtreme | 80×127×18mm | 3プラッタの2.5インチHDD |
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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