卓越した動画表現、BRAVIA「KDL-40F5」を試す:人気の薄型テレビ3機種レビュー(3/3 ページ)
人気の40V型クラス薄型テレビ3機種レビュー企画、第2弾はソニーの“BRAVIA”「KDL-40F5」を取り上げる。スタイリッシュな「F1シリーズ」から狭額デザインを継承し、新たに4倍速パネルを搭載した注目の製品。操作性重視の新機能も合わせて紹介しよう。
野村ケンジの画質チェック
映画とアニメとアンジェラ・アキで画質を語る気鋭のAV評論家・野村ケンジ氏による画質チェック。ソース機器には、ソニーの「プレイステーション3」を用い、BDソフトを中心に試聴している。
4倍速駆動の「モーションフロー240Hz」を持つソニーF5シリーズ「KDL-40F5」は、アピールの通り動画表現において素晴らしさを発揮してくれた。
これまで液晶パネルは、プラズマに比べて動画が弱いという定説があったが、少なくとも今回の3台を比較するかぎり、それが覆された感がある。例えば、アニメ「マクロスフロンティア」の戦闘シーンでは、縦横無尽に飛び回るミサイル数10発の動きをすべて目で追えるようになったし、「コードギアス 反逆のルルーシュ R2」後期オープニングでは、10秒ほどの間に20人以上の人物が奥から手前に代わる代わる登場するシーンも、ボケやぎこちなさなくスムーズに表現できていた。さらに「ひだまりスケッチ×365」(放送録画)のオープニングでは、早いスクロールで4コママンガが背景に流れるのだが、その内容までもしっかり読み取ることができた!
ここまで動画に強い製品は、プラズマ、液晶問わず他に類を見ない。フラットディスプレイのなかで、初めて「動画に強い」と断言できる製品が登場した。
とはいえ、“完璧”とまではいかないことも事実だ。例えば「攻殻機動隊 ソリッド・ステート・ソサエティ」(放送録画)のオープニング。3D CGの背景がパンする場面では、ブラウン管に比べて動きに“ぎこちなさ”が残っていたし、クライマックスの戦闘シーンでも、斜めスクロールにわずかながら残像感がつきまとっていた。まあ、この作品はテレビの限界などまったく考慮しないで作っているフシがあるので、この結果はある程度仕方がない。4倍速パネルのBRAVIAが、現在のフラットディスプレイの中で最高レベルの動画表示性能を持っているという事実に変わりはない。
もう1つ、明暗のダイナミックレンジの広さ、とくにまぶしさや煌びやか(きらびやか)さの表現には、かなりの魅力を感じた。そもそもKDL-40F5は、エッジのクッキリした液晶パネルの特性を生かした絵作りが行われているが、ライティングに関しても液晶ならではのメリットをうまく引き出していると思う。BD「ブレードランナー」冒頭の尋問シーンでは、小道具のハイライトがとてもつややかで実在感が高かったし、「ヘアスプレー」では黒人の肌色のつやにイキイキとした様子を感じ取ることができた。それに対して暗部の階調表現はスッパリと割り切った描写。はつらつとした、メリハリ重視の表現といえるだろう。
そういったきらびやかさが功を奏してか、音楽ライブ映像はかなりGood。「アンジェラアキ My Keys 2006 in 武道館」では、スポットライトの当たるアンジェラアキが暗闇の中から浮かび上がるように見え、フィルムライクな処理を施した効果も制作者の意図通りの雰囲気を醸し出していた。同じソニー系列だからというわけではなく、メリハリのある映像の見せ方は得意としているようだ。
動画表現やダイナミックレンジの優秀さに対し、色表現に関してはいま一歩。BD「ヘアスプレー」では、肌色に生気やつややかさを感じたものの、赤の色合いはもうひとつ。壁に貼られたカーテン(タペストリー?)の明るいグリーンともども、軽薄な色になって画面から悪目立ちしてしまう傾向がある。このあたりはKDL-40F5の幅広い調整項目を駆使し、自分好みの色合いに仕上げることをオススメする。
とにかく動画性能を優先したい、液晶パネルならではのクッキリした映像が好き、という人にはかなり魅力的な製品だ。なかでも近年のアニメーションで多用される素早いアクションを堪能したい人には、最有力候補となるだろう。
評価項目 | 評価(5点満点、右へいくほど高評価) |
---|---|
ダイナミックレンジ | ―――○― |
色合い/中間調の表現力 | ―○――― |
動画表現 | ――――○ |
お薦めのソフト | アニメーション、ライブビデオ |
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