2009年秋、フロントプロジェクターの注目機種(2):本田雅一のTV Style
今回は三菱電機の「LVP-HC6800」を中心に取り上げる。同機をオススメする理由は、その明るさが従来のホームプロジェクターを大きく超え、手軽に使いこなせるからだ。
前回、注目モデルとして三菱電機の「LVP-HC6800」、エプソン「EH-TW5500」、ビクター「DLA-HD950」、ソニー「VPL-VW85」の4モデルを挙げた。
いきなり横道にそれるが、三菱電機からは推薦する「LVP-HC6800」以外にも「LVP-HC3800」という機種が発売されている。低価格で高画質なDLPとして人気の高かった「LVP-HC3500」の後継モデルで、アダプター経由で天吊金具の互換性も保っているうえ、フルHD対応のDLP。フルHDのDLPは高価だったが、小型のフルHD DMDパネルを用い、さらにDMDを駆動するための映像処理を行うLSIの規模を縮小。その分、処理を工夫することで低価格を実現した。
もし、あなたがDLPのファンで、低価格で本格的なフルHDプロジェクターが欲しいというのであれば、LVP-HC3800はとてもお買い得な機種だ。その価格からは信じられないようなパリッと局所コントラストの高い映像を堪能できる。レンズシフトはできないが、フルHDプロジェクターならば、少々電子的な補正を加えても想像するほどには画質は落ちない。と、これだけ褒めておきながらLVP-HC6800のほうを推挙した理由は、その明るさが従来のホームプロジェクターを大きく超えており、手軽に使いこなせる製品に仕上がっているからだ。
ホームプロジェクターは、ビジネス用途に使われるプロジェクターよりも暗い(光出力が弱い)。その理由は主に3つ。まず、画質重視のため色バランスを整えると、現在主流のランプでは大幅に光出力を削らなけれえばならないこと。もう1つは静粛性を高めるため、データプロジェクターほど大きな出力のランプを使いにくいこと。最後に、真っ暗な部屋や暗い色の壁と天井といった映画館に近い環境(ホームシアター)で見るのであれば、500ルーメン以下でも十分に大画面を楽しめるからだ。
LVP-HC6800の場合、映画視聴に最適な6500度の色温度に合わせた状態でも1000ルーメン程度の明るさが得られるという。プロジェクターのスペックはさまざまだが、きちんと映画視聴に適した画質モードでは、500ルーメン以下、中には350ルーメン程度の明るさしか得られないプロジェクターもある。環境さえ整えてやれば、それでも全く問題はないのだが、天井や壁が白かったり、窓からの遮光や部屋内にある機材のLEDなどからの影響など、さまざまな原因で明るさが不足してしまうケースがある。
それでもプロジェクターで映画を見ることが好きならば、そうした影響を1つずつ取り除いていくのも趣味としての楽しみといえるだろうが、白いインテリアのリビングで手軽にプロジェクターを楽しみたいという向きには、LVP-HC6800は、ぴったりのプロジェクターなのだ。
LVP-HC6800が明るい理由は、実は赤成分が多いランプを使っているため。プロジェクター用ランプは赤が弱く、赤に合わせて青や緑を調整するため、赤が多いと青と緑を削る割合が少なくても良いため明るくなる。赤成分の多さは、例えば肌色の血色の良さなどからも分かる。より健康的で暖かみのある肌色は、上位モデルをもしのぐと思わせるところもあるほどだ。
もう少し本格派というならば、エプソンが9月の「IFA2009」でお披露目した「EH-TW5500」は忘れてはならない存在だ。LVP-HC6800よりも価格ランクは上(3299ユーロ)だが、コントラストの高さと絵作りの素直さには価格以上の価値がある。
見た目はやや“やぼったい”ものの、あまり意匠に凝っていないところが逆にいいという人もいるようだ。透過型液晶プロジェクターという方式は、その成り立ちからどうしても“安物”に見られがちだが、画質こそがプロジェクターの価値とするならば、そうした予断は判断を狂わせる余分な知識でしかない。
2つのシアターブラックモードは、いずれも動的なアイリス制御を用いず、素のコントラストで反射型液晶プロジェクターに挑む。かつてのエプソン機は映像処理プロセッサが弱かったのだが、この前の世代からはその点も解決されている。
透過型液晶プロジェクターの美点である設置自由度の高さと高画質の両立を望むなら、反射型液晶プロジェクターよりも、こちらの方が選びやすい。
編集部注
エプソン販売によると、2009年11月24日現在、「EH-TW5500」を日本国内で販売する予定はないそうです。期待してしまった方々におわびいたします。
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