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映画の色を徹底追求したビクター「DLA-HD950」で観る「風と共に去りぬ」の超絶画質山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.43(2/2 ページ)

昨秋、「DLA-HD950」が発表されたときは、自宅の「DLA-HD750」と変わらないように見えた。しかし、実際に両機を見比べてみると大違い。こりゃ仕方ない、と買い替えを決意したのだった。

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 DLA-HD750にはない、新たに盛り込まれた新機能が、ビクターが「クリアモーションドライブ」と呼ぶ倍速駆動である。これは、毎秒60コマの映像は120コマ(120Hz)で、BDの映画などの毎秒24コマの映像は48コマで表示する技術。コマとコマの間に新たに生成した画像を挿入(補間)することで、よりなめらかな動きの映像を得ようというものだ。ビクターのテレビは以前からこの倍速処理を得意としていたが、やっとその技術がプロジェクターに採用されたわけである。

 用意された映像モードのうち、「シネマ3」「ナチュラル」「ステージ」の初期値が、「クリアモーションドライブ」オンで、「シネマ3」のみ初期設定が“弱”、他は“強”となっている。その「シネマ3」で観るCGアニメがじつに面白い。つい先日入手したディズニー/ピクサーの「カールじいさんの空飛ぶ家」の米国盤BD(1080/24P収録)の浮遊シーンなど、そのなめらかな動きにうっとりと見入ってしまった。ふだんから近視矯正メガネをかけていて、3Dメガネ視聴が苦手なぼくなど、本機のクリアモーションドライブの3D効果でじゅうぶんじゃないかと思ってしまう。

 色温度7500ケルビンでキレのよい映像を狙ったと思える「ステージ」モードは音楽ライブ作品にぴったりの画調なのだが、デフォルトのクリアモーションドライブ“強”は、少し違和感があった。とくに24P HDカメラで収録されたライブ作品は、ぼくには酩酊感が強調される印象で、ここは設定は“弱”にしたいと思った。

 それから本機には「THX」というたいへん興味深い映像モードがある。本機に付けられたTHXマークは、米国の高品質AV機器認証機関の1つであるTHX社が定めたディスプレイ/プロジェクター規格をクリアした製品にのみ与えられるもので、映像モードの「THX」は、その規格通りに調整された画質が仕込まれている。色温度D65と2.2乗の基準ガンマを精確にトレースしたこの映像モードは、スタジオのマスターモニターを彷彿させる非常にストイックな画調で、映像機器のチェックにまさに相応しい。DLA-HD750でもこの「THX」モードは用意されていたが、本機DLA-HD950からリモコンのダイレクトボタンでこの映像モードを呼び出せるようになったのがうれしい(DLA-HD750ではメニュー画面に入らないとTHXモードに入れなかった)。

 そんなわけで、DLA-HD950は、たいへん完成度の高い映像モードを数種類用意しているわけだが、ぼくにとって本機の最大の魅力は、繰り返すが「シネマ1」で再現されるフィルムルックにある。この1カ月、「シネマ1」でさまざまな映画BDを観てきたが、とりわけその画質の素晴らしさに感激したのが、昨年の12月に発売された「風と共に去りぬ」だった。

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2009年12月に発売された「風と共に去りぬ アルティメット・コレクターズ・エディション」(数量限定)。BD-ROM 2枚組で、「幻のメイキング」など541分に及ぶ特典映像もうれしい。発売元はワーナー・ホーム・ビデオ。価格は9800円

 「風と共に去りぬ」は1939年に公開され、作品賞をはじめ8部門でアカデミー賞を獲得した“世紀の名作”。興味深いのは、「本作における3色式長編の成功」でテクニカラーが同アカデミーの特別賞を受賞していることだ。すなわち本作は、テクニカラーによる総天然色映画の完成という意味でもじつに意義深い作品なのである。

 「生誕70周年記念ハイビジョン版」と銘打たれた本BD ROMは、ほぼ同時期に発売された「オズの魔法使」のBDと同様、3色分解のオリジナル・テクニカラーネガを3台の8K解像度のカメラでスキャニングした後、4K解像度で色調整を行ない、HD解像度でマスタリングして仕上げられたという。

 じっさいその画質は息をのむ素晴らしさ。70年前のフィルムとは思えないノイズレス映像にレストレーション作業のていねいな仕事ぶりがうかがえるし、DLA-HD950の「シネマ1」で観ると、本作のテクニカラーならではと思える濃厚な色再現から時代の刻印が浮き彫りとなる印象だ。

 例えば、クラーク・ゲーブル演じるレット・バトラーがスカーレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー)を見初めるパーティ・シーン。南北戦争前の幸福色に彩られたアメリカ南部の白人社会の豊かさを実感させる印象深いこのシークエンスを「シネマ1」で観ると、そのむせ返るような色の饗宴にタメイキが出る。またレンズの被写界深度のコントロールで見事に遠近感を演出したり、フォーカスの制御でオハラ演じるヴィヴィアン・リーの美しさを強調するテクニックを目の当たりにし、映画の近代技法のそのほとんどは、70年前にすでに確立されていたのだなあという感慨を覚えた。

 このBDを大画面液晶テレビでも観てみたが、やはりこの時代のゴージャスな映画の色の再現は、DLA-HD950の映し出すスクリーン映像の圧倒的勝利だと実感した。

 大画面テレビのバクハツ的売れ行きに押されて、今ひとつ存在感を示しきれない昨今の家庭用プロジェクターだが、映画を映画らしく楽しみたいという方は、ある種の高みに到達したと思える本機にぜひ注目していただきたと思う。

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