HDMIのバージョン番号が消える?:インタビュー(2/2 ページ)
最近、新型テレビなどの新製品情報にちょっとした変化が起きている。HDMI入力端子について、明確に「HDMI 1.4」あるいは「HDMI 1.4a」などとうたわないケースが増えてきたのだ。シリコンイメージの竹原茂昭氏にその理由を聞いた。
竹原: 例えば「Deep Color」と書きたい場合、現在のガイドラインでは「HDMI 1.3」を併記して、「HDMI 1.3 Deep Color」と書かなければなりません。HECやARCも同時にサポートしている場合は「HDMI 1.4 HEC、ARC HDMI 1.3 Deep Color」となります。しかし「HDMI 1.3」と書いてあると、それだけでユーザーに“古い技術”という印象を与えてしまう可能性があり、メーカーはそれを恐れているようです。
可否 | 表記 |
---|---|
○ | HDMI 1.4 HEC、ARC |
○ | HDMI 1.3 Deep Color |
○ | HDMI 1.4 HEC、ARC HDMI 1.3 Deep Color |
× | HDMI 1.4 ARC Deep Color |
竹原: いずれにしても、2012年以降はバージョンナンバーを記載できなくなりますから、「ならば、いっそ両方消してしまおう」と考えたのではないでしょうか。2012年以降の変更について、周辺機器メーカーなどはまだ理解していただけていないケースもあるようですが、HDMIのファウンダーメンバーでもある大手テレビメーカーはガイドラインに沿って記載しているのです。
――よく分かりました。しかし表記の変更は、われわれ消費者を混乱させる可能性もあります。例えば製品に「HEC」や「ARC」といった表記があった場合、それは確実にHDMI 1.4ベースであると考えても良いのでしょうか?
竹原: はい。例えばARCと書いてあれば、それは1.4か1.4aベースです。ロゴを記載する場合、それぞれがどこまでサポートしていなければならないかは、すべてガイドラインで定義されていますし、機器の相互接続性を確保するためにテストを通過した製品という意味でもあります。
現在、ロゴとして認められている機能は、HEC、ARC、4K、3D over HDMI、Content Typeの5つ(そのほかに、コネクター形状でHDMI micro Connectorと、HDMI Automotive Connection Systemがある)です。例えば、製品に「3D over HDMI」のロゴがあったとき。それがテレビであれば、HDMI 1.4aで定めている3Dフォーマットはすべて再生できることになります。
つまり、「Blu-ray 3D」の1080p(23.98/24Hz、フレームパッキング)をはじめ、ゲームの720p(50または59.94/60Hz、フレームパッキング)、そして放送用のサイドバイサイド1080i(50または59.94/60Hz)、トップアンドボトム1080p(23.98/24Hz)および720p(50または59.94/60Hz)。これらの信号を適切に処理して表示する機能が必須となります。
一方、ソース機器のほうは、上記のうち1つをサポートしていることが必須条件です。例えば、Blu-ray DiscプレーヤーならBlu-ray 3D、ゲーム機なら720pのフレームパッキング、CATVのセットトップボックスなら放送用のサイドバイサイドやトップアンドボトムですね。
――今後、新しい3Dフォーマットが登場した場合はどうなるのでしょう。
竹原: 可能性はありますが、HDMI Licensing.LLCとしては、「これ以上、3Dフォーマットは増やさない」という意味も込めてHDM 1.4aの仕様を策定しました。そのため、通常なら仕様や詳しい情報はアダプター(HDMI搭載機器)メンバーにしか開示していないのですが、3Dに関しては、だれでも名前を登録すればダウンロードできるようになっています。
――もう1つ。最近のテレビでは、HDMI端子のそばに「ARC」といった表記が入るようになりましたが、これもガイドラインに沿った措置なのでしょうか。
竹原: そうです。先ほど挙げた5つの技術のうち、ARCとHECに関しては、サポートする端子の数が限られることが多い。例えば、テレビ内蔵チューナーの音声信号を出力するARCは、基本的に1つしか必要ありません。また、複数のHDMI端子をHECに対応させるには、HDMIコントローラチップにイーサネットスイッチ(L2スイッチ)を入れなければなりませんので、製造コストがかさみます。そのため、これらの技術に対応しているHDMI端子には、分かりやすく「ARC」や「HEC」と表記するようになったのです。
「HDMI TECHNOLOGY SEMINAR-2010 JAPAN」開催
――では、最後に告知をどうぞ。
竹原: HDMI Licensing,LLC主催の「HDMI TECHNOLOGY SEMINAR-2010 JAPAN」を4月23日に秋葉原UDXシアターで開催します。参加費は無料。HDMI 1.4aの特色やトレードマークとロゴのガイドライン、3D over HDMIの内容などについて、参加メーカーの担当者から直接話を聞ける貴重な機会です。4月23日の午前中は一般の方も参加できますので、お誘い合わせの上、是非ご参加ください。“HDMI通”になるチャンスです。
日時 | 2010年4月23日(金曜日)午前9時30分〜(午前9時受付開始) |
---|---|
場所 | 東京・秋葉原UDX/UDXシアター(JR秋葉原駅、電気街口より徒歩2分) |
参加費 | 無料(事前申し込み制) |
関連URL | http://www.hdmi.org/roadshow2010/jp(英語) |
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