AQUOS最強の“クアトロン3D”で観るリッチな「泥棒成金」:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.50(2/2 ページ)
シャープの3D液晶テレビ“AQUOSクアトロン3D”「LC-60LV3」を細かくチェックすることができた。ここでは3D表示だけではなく、2D再生時にも興味深い提案が盛り込まれた本機の概要を分かりやすくお伝えしよう。
また、FRED技術とバックライト・スキャニング技術の掛け合わせゆえか、なるほどクロストークも極めて少なく、快適に3D映像を楽しむことができた。本機は間違いなく今もっとも魅力的な3D画質を達成したテレビといっていいだろう。ただし、本機の性能とは直接関係ないハナシだが、ぼくのような近視矯正用眼鏡常用者は、グラス・オン・グラスの状態が長時間続くのはちょっと辛い。今後は3Dメガネの装着感の良さ悪さが大きくクローズアップされるようになるかもしれない。
それからこれは多くの方が指摘しているが、3D映像は通常の2D映像に比べてフレームの存在による「額縁感」が強く感じられるので、画面ににじり寄って観ても2D映像に比べて画面が小さく感じられる。3Dで映画を楽しむには最低でも本機くらいのサイズ(60インチ)が欲しいと実感した。
テクニカラー作品に照準を合わせた「映画(クラシック)」
2D映像ももちろんチェックしてみたが、ぼくがとくに面白いと思ったのは、映像モードに2種類の映画用ポジションを持たせていることだった。1つは「映画THX」、もう1つは「映画(クラシック)」である。前者は、ルーカスフィルムを出身母体とする映像機器の品質認証機関のお墨付きを得た、モニター調を指向した画質モード。色温度は6500ケルビン、2.2乗の基準ガンマカーブを正確にトレースし、色域は国際ハイビジョン規格(ITU-R.709)に合わせ込まれている。しかし、この国際ハイビジョン規格というのは(あまり知られていないかもしれないが)NTSCで定められた色域に対して約72%という狭帯域規格で、従来の3原色パネルでもクリアーできる色域なのである。
そこで、4原色パネルの魅力が生きる映画モードを作りたいと考えたシャープ開発陣は、ターゲットを「風と共に去りぬ」や「オズの魔法使い」といった往年の色鮮やかなテクニカラー作品に照準を合わせ、4原色パネルの色再現範囲を思う存分使った「映画(クラシック)」という映像モードを用意したのだ。
色温度は、劇場用映写機に使われるキセノンランプを意識した5800ケルビン。ガンマカーブの設定は2.2乗基準ガンマだが、バックライト・スキャンによってそのトーンカーブよりも陰影がついて見える印象だ。また、フィルムの粒状性(グレイン)を強調するために高域成分をやや強調するような周波数特性に設定されているのも興味深い。また、1080/24p収録のBD ROMを再生した場合、本機は4等倍(1フレームを4回描画)表示となるが、フィルム上映同様、2枚目と4枚目の画像を完全にブラックアウトするという手法が採られている。当然ながらフリッカー(画面のちらつき)が目立ち、これはいささかやりすぎでは? とも思うが、映画館でのフィルム上映の雰囲気を液晶テレビでなんとか再現したいという思いからの演出だということはよく分かる。
実際にこのモードで、BS hiで放送されたテクニカラー作品「泥棒成金」(1954年、ヒッチコック監督)を観たが、その色のリッチネスは、数ある液晶テレビのなかではダントツだと思った。主演女優のグレース・ケリーが仮装パーティで着る黄金色のドレスのつややかさなど、本機ならではの魅力といっていいだろう。
さすがにこのむせかえるような濃厚な色再現はトゥーマッチと感じる方もおられるかもしれないが、その場合はモニター調を意識した端正で高品位な「映画 THX」を選べばよい。品質管理にひときわウルサイTHXの認証を受けた映像モードだけに、その懐の深い映像は、それはそれで味わい深い。しかし、どちらにせよこの2つの映像モードが想定している照度環境は100ルクス以下。3D視聴時同様、まずは部屋を思い切り暗くしてから、この2つの映像モードを味わっていただきたいと思う。部屋の明るさとコンテンツに合わせていちばんふさわしい画質に自動的に合わせ込む「好画質センサー」の出来もかなりよいので、この2つの映画モードは、あくまでも趣味的なものと捉えて楽しむべきだろう。
もう1つこのテレビで感心したのは、音である。画面下部にしっかりとエンクロージャー容積を取り、そこの2.1チャンネル構成のユニットを配置、声にリアリティーを感じさせる聴き応えのあるサウンドを奏でるのである。声がやせて聴きづらい音のテレビが多い中、本機は「テレビの音」としてじゅうぶん合格点が与えられると思った。
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