“あえて”再び対比してみる液晶とプラズマ(3):本田雅一のTV Style
液晶対プラズマの議論が進展していくと、比較の軸が少しずれてきてしまうことがある。本来、方式の違いによる技術的特長の違いでしかないものが、商品の信頼性や将来性、機能性などに結び付けられるようになってくるのだ。
このシリーズの1回目でも指摘したが、液晶とプラズマのシェアにまつわる話は、一部報道の仕方にも問題があるのかもしれない。
“製品の機能を実現させるために、どのような技術を使っているのか”は、その製品の特徴を知る上で重要な手がかりになる。先週書いたように、液晶とプラズマは、それぞれ異なる方法で表示を行うため、その結果として異なる特長、特性を持っている。だから、ついつい「液晶はこうだ」「プラズマはこうだ」と書きがちだ。それらは傾向は示しているのだが、もちろん製品によって細かな良し悪しは異なる。とはいえ、間違いではない。
ただし、こうした液晶対プラズマの議論がさらに進展していくと、比較の軸が少しずれてきてしまうことがある。本来、方式の違いによる技術的特長の違いでしかないものが、商品の信頼性や将来性、機能性などに結び付けられるようになってくる。例えばプラズマのシェアが下がっていると、プラズマはダメなのではないか、いやプラズマはダメなんだと伝わり始めるのだ。
しかし、最終的にテレビ商品について責任を持つのはセットを作ったメーカーだ。液晶を信じるのでもなく、プラズマを信じるのでもなく、購入するメーカーを信じて買うものだろう。例えば、私はパイオニア“KURO”シリーズの「PDP-6010HD」を使っているが、すでにKUROシリーズは販売されておらず、テレビ事業そのものをパイオニアは行っていない。しかし、全く困ることはない。補修部品は確保されており、パイオニアはサービス体制を維持しているからだ。
つまり、テレビを購入する際の投資先はメーカーであるという、至極当たり前のことだ。投資先は液晶でもプラズマでもない。液晶やプラズマを選ぶのは、技術に対して投資をするのメーカーの仕事である。ユーザーは、購入したテレビがその寿命を全うするまでの間、きちんと顧客サービスを提供するメーカーだと思えるなら、あとは機能や画質、用途などで好きなものを選べばいい。
同様のアドバイスを知人にしたところ「でもシェアが低いというのは、結局、その方式に人気がないということではないのか」と質問された。まったくその通りだ。現在の所、プラズマはあまり人気がない。かつてプラズマパネルを生産するメーカーは、日本だけでも5社あったが、今ではパナソニックしか作っていない。テレビの販売しているメーカーの数は2社だ。
しかも、プラズマが得意とするのは50インチ以上で、リビング用として売れ筋の42インチモデルはあるが、37インチモデルになると液晶テレビの方に優位性も出てくる。さらには来年のアナログ停波、政府のエコポイント制度などによる効果もあり、今年はカジュアル層が買い替えを進めているため、中型以下のテレビ売り上げが伸びているという背景もある。台数ベースでは今年、例年の1.8倍以上が売れると予想されているが、増えているカジュアル層の買い替えでプラズマが選ばれることは希だろう。つまり、今年プラズマのシェアが下がるのは当然で、何ら驚くに値しない。
ほとんどのユーザーは、一度テレビを購入すると5〜10年といった長期サイクルで買い替えてきたし、これからもそのサイクルは大きくは変化することはないだろう。そんな長期での技術トレンドは読めない。将来はどうなるか分からないが、今、目の前に映っている映像の質が好きか嫌いか、良いと思うか。それぐらいは感想を持つことができるはずだ。テレビの方式にこだわる時間があるのなら、欲しいと思えるテレビの画質を納得行くまで見比べる方が、よほど建設的ではないだろうか。
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