ソニーが繰り出した新フラッグシップの実力は!? 「MDR-Z1000」:高級ヘッドフォンを一気聴き!
ソニーの「MDR-Z1000」は、ほぼ6年ぶりとなる新フラッグシップである。リファレンス・スタジオモニターと銘打っていることから分かる通り、プロユースを念頭に置いた製品といえる。
ソニーの「MDR-Z1000」は、「MDR-SA5000」以来6年ぶりとなる、ソニー製ヘッドフォンの新フラッグシップである。とはいえ、MDR-SA5000がSACD対応のワイドレンジ&高音質再生を狙った完全コンシューマー向け製品であったのに対し、MDR-Z1000はリファレンス・スタジオモニターと銘打っていることから分かる通り、プロユースを念頭に置いた製品のため、コンセプトやキャラクターはだいぶ異なっている。
使われている各部パーツは、高耐久性とともに、音質面でのメリットを追求した豪華な仕様となっている。まずマグネシウム合金が採用されたハウジングは、余分な振動を抑えつつも軽量化を実現。内部に収まるドライバーユニットは、伸度の高い液晶ポリマーフィルムとネオジウムマグネットの組み合わせにより、5Hz〜80kHzという広帯域再生を可能としている。またイヤーパッドには、縦長形状と低反撥ウレタンフォームを採用、遮音性とともに装着感も考慮されている。
ユーザビリティー
マグネシウム合金による軽量フランジと、縦長&低反発ウレタンフォームのイヤーパッドによって、付け心地はかなり軽やかかつ爽快(そうかい)だ。本来スタジオモニターなので、フランジ自体が小さくて屋外にも持ちやすいコンパクトさを有しているが、それでいて耳たぶをスッポリ覆ってくれるジャストなサイズは、他に類を見ない絶妙さといえる。長時間使用する上で、これは大きなメリットとなるだろう。ちなみに実際の音漏れはかなり低減されているが、フランジにエア抜きがあるため完璧ではない。屋外で使うときは多少ボリュームに注意が必要だ。
取り外し可能なケーブルは、1.2メートルと3メートルの2本が付属している。ケーブルの本体固定はオリジナルのようだが、コネクター自身は一般的なステレオミニプラグなので、アフターマーケットの交換用ケーブルの登場に期待が持てそうだ。
サウンドの特長
一言でいえば、“優”の上にさらに“優”を重ねたくなるくらいの優等生。スタジオモニターらしい、高域のキレがよいはきはきしたサウンドが基本だが、解像度はとてつもなく精細で、ダイナミックレンジも幅広い上にニュアンスがとても細やか、音のひずみは全くといっていいほど感じない。最低域のノビが最後のところで消えてしまったり、コモリ音をわずかに感じたりとフルカバー・フランジ故のクセも垣間見られるが、総じては「原音忠実」という言葉はこういった製品に使うべきなのだとひたすら感心するばかり。おかげで音楽ジャンルは全くといっていいほど選ばない。男性ボーカルも女性ボーカルも、エレキギターもアコースティックギターも、ピアノもドラムも、どんな楽器もそのニュアンスを精細かつリアルに伝えてくれる。
ただし、それがアダとなることもあった。あまりに客観的なサウンドで、さらに音場的にも余計なエフェクトがいっさいないため、ライブ録音の熱気などはかえって伝わりにくい印象になっている。しかし、これはスタジオモニターとして本来あるべき姿なので、肯定こそすれ否定されるべきポイントではないと思う。
また入力感度が高いため、iPod touchでもそれなりのボリュームが確保されているものの、実力としてはほとんど発揮されないことも確認した。あまりにも音の描き分けが敏感なので、PCで再生していてもプレーヤーソフトによる音質の違いまではっきりと分かってしまうくらい。できれば「Frieve Audio」(フリーウェア)などの高音質再生ソフトを常用したいところだ。
ヘッドフォンアンプやUSB DACなども、品が変われば音が変わり、実力が高ければそれに応じた良質なサウンドを提供してくれる。エージングにかなりの時間(100時間以上行うことをオススメする)が必要なことも含め、ハイスペック製品ならでは、頂点の高さゆえの難しさはあるが、それゆえに克服したときの喜びは何物にも替え難い魅力となる。まさに10年使い続けても飽きることのない、素晴らしい製品だ。
音質評価 | |
---|---|
解像度 | (粗い−−−−○きめ細かい) |
帯域幅 | (ナロー−−−−○ワイド) |
帯域バランス | (低域重視−−−−○フラット) |
音色傾向 | (ウォーム−−−○−クール) |
メーカー | ソニー |
---|---|
型番 | MDR-Z1000 |
型式 | 密閉ダイナミック型(耳覆い型) |
周波数特性 | 5〜8万Hz |
感度(音圧レベル) | 108dB/mW |
インピーダンス | 24オーム |
ケーブル長 | 約3メートル/1.2メートル 7N-OFCリッツ線 |
重量 | 約270グラム |
価格 | 6万1950円 |
今回の特集で取り上げる製品
- ソニーが繰り出した新フラッグシップの実力は!? 「MDR-Z1000」
- 演奏の楽しさを存分に堪能できるスペシャルモデル、AKG「Q701」
- スタジオモニターとしての素性の良さが光る弟モデル、AKG「K601」
- マグネシウムフレーム&フランジは軽量さだけにあらず、オーテク「ATH-A2000x」
- オーテクのロングセラー機「ATH-AD2000」もチェック
- 8年間も“名機”と呼ばれている実力派、ゼンハイザー「HD650」
- ビクタースタジオと同じ音が手に入る!、JVC「HA-MX10-B」
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試聴環境
今回の試聴には、「iPod touch」を活用しつつもPCオーディオ環境での再生をメインとした。なぜなら、音質的だけでなくアンプ出力的にもiPod touchでは力不足となることが容易に想像できたからだ。
USB DACとして活用したのは、シンタックスジャパンから2月に発売されたRMEの新製品「babyface」。また、音質評価の基準とするリファレンス・ヘッドフォンには、シュアーの「SRH440」を使用している。
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