大画面の有機ELテレビが日本上陸? サムスンとLGの戦略を分析:本田雅一のTV Style
LG電子とサムスンがCESで展示した55V型有機ELディスプレイ。日本では出ないのでは? と思っている方もいるだろうが、すでに日本市場に参入しているLGはもちろん、サムスンも日本への再参入を計画している。
恒例の「International CES」が閉幕し、いつものようにハリウッド映画スタジオを取材する旅を終えると、CESのまとめや解釈といった仕事が増えてくる。1月前半はニュース、後半はその分析と仕事のスタイルが自然に変化するのだ。
さて、そんな中で今年、テレビについては2つの点でのレクチャーを希望されることが多い。1つはスマートテレビ。提案から1年以上を経過して、いまだ形の定まらぬスマートテレビというキーワードだが、今年のCESでは中国メーカーなどもこぞってスマートテレビをうたいはじめ、このムーブメントがハッキリとした形として現れるまで続きそうであることを実感した。
そしてもう1つは新ディスプレイについての話題だ。ご存知のように韓国系家電メーカー2社が55V型という大型の有機ELディスプレイを展示。さらにソニーは”隠し球”の「Crystal LED Display」を、こちらも55V型で見せた。Crystal LED Displayは即座に実用化というものではないが、久々に新しい可能性を見せたという意味で、将来への期待を持たせるものになったことは明言しておきたい。また、個人的にはパナソニックが技術展示を行ったIPSαの20インチ超高精細ディスプレイ(4K2K解像度)も、その使い途という面で実に興味深いものだった。
さて、そんなわけでそれら新ディスプレイに関して、この連載でもいくつかの点についてお伝えしておこう。
まず有機ELディスプレイだが、韓国2社はいずれも年内の発売を目指している。といったところで日本では出ないのでは? と思っている方もいるだろう。しかし、すでに日本市場に参入しているLG電子はもちろん、サムスンも日本への再参入を計画している。すでに大手量販店との交渉は始まっており、年内に大型有機ELテレビを発売することができるのであれば、そのタイミングで参入するものと予想される。
サムスンによると、昨年出荷された有機ELパネルのうち90%がサムスン製だったとのこと。となれば、量産化で経験値を蓄積しているサムスンが一番乗りと予想する向きが多いかもしれない。年末に大きな話題になった「Playstation Vita」の有機ELディスプレイもサムスン製のものだ。
しかし、有機ELディスプレイの大型化は本当に難しい。サムスンは「Super OLED」テレビとして55V型の有機ELテレビを発表したものの、年内にどれだけ量産できるか未知数だ。調査会社のディスプレイサーチは、今年の有機ELテレビ出荷台数をワールドワイドの合計でも10万台程度と見積もっている。
もし、大型の有機ELテレビをまとまった数を用意できるとするなら、それはサムスンよりもLG電子の方だろう。報道にて、LG電子の有機ELテレビが、白色有機ELディスプレイの前面にカラーフィルターを配置したものであることを知っている読者もいると思う。これにより、製造工程が大幅に簡略化できるからだ。サムスンは、RGBの三原色に発色するよう塗り分け、間にブラックマスク(画素を分離するマスク)を生成している。
LG電子のやり方ならば、有機材料を3種類塗り分ける必要がなく、ブラックマスクをパネルに生成するプロセスも不要。構造的にシンプルで生産性が高く、大型化のハードルは数段低いとのことだ。ただし、カラーフィルターで光を部分的に遮断するため、輝度は確保しにくくなる。そこで、カラーフィルターはRGBにホワイトを足した“RGBW”構成になっている。
画質面での理想をいえば、サムスンがやっているRGB画素を個別に作る方法が良い。しかし、省電力、薄型、動画応答性、3D画質といった液晶に対する有機ELディスプレイの良さはLG電子方式でも恩恵に授かることができる。
LG電子はCESにおける発表会で、一切、高画質という点については話をせず、スタイリングを強調していた。会場では画質判断ができるような映像が流れていなかったため、ここで画質差にはついて触れない。しかし、商品を企画する上での判断として、LG電子の方針が明確に現れている一例といえるだろう(以下、次回)。
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