ノミネートする部門で明暗が分かれる?――ブルーレイ大賞の舞台裏(後編):麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(4/4 ページ)
2月15日に発表された「第4回 DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」。後編では部門別の傾向と受賞作について、審査委員長を務めたAV評論家・麻倉怜士氏に詳しく解説してもらおう。
おまけコーナー、一生モノのミラーレス「FUJIFILM X-Pro1」
麻倉氏:今回は富士フイルムが発売したレンジファインダー風デザインのミラーレス機「X-Pro1」を取り上げたいと思います。同社はこれまでも高級感のあるトラッドなカメラ作りをしてきましたが、今回はまず画質がすごいのです。
驚くのは、レンズの背面(バックフォーカス)と撮像素子(X-Trans CMOS)の距離が極めて近いことと、ローパスフィルターを持っていないこと。通常、光の高域をローパスフィルターでカットしないとモアレが出てしまうのですが、X-Trans CMOSではモアレが出ないように6×6画素単位という独自のフィルター配列で、それを不要にしています。素晴らしい発想の転換でしょう。フジノンレンズのクオリティーもあり、すばらしいボケ味を出してくれます。
また同社としては(ミラーレスタイプとしては)初のレンズ交換式カメラでもありますが、「初」というのが強い。キヤノンやニコンといったメーカーは膨大な過去の資産を持っていますが、一方でそれを生かすために設計の自由度は必ず制約を受けます。富士フイルムの場合はそれがない。捨てるものがないから自由にレンズとシステムを作ることができます。
さらに素晴らしいのは、カメラ自体の存在感と操作性ですね。フォーカスやシャッタースピード、露出設定は、昔ながらのリングを操作して調整するスタイルです。ここを見てください。背面のダイヤルが斜めになっているでしょう? これは美しいホームポジション(手の位置)を崩さずに操作するための配慮です。また手のひらがかかる場所に操作ボタンはありません。カメラを自分の延長として使うことができる、人間工学にも配慮したカメラは最近あまりみません。
また最近のカメラは、撮影時にどうしても脇が甘くなるのですが、X-Pro1では脇を締めて撮影に臨めます。撮影するスタイルも美しい。カメラにまつわるさまざまなことが正当であり、自然に学べるのです。人間が2つの手でカメラを扱うとき、もっともふさわしい操作の形というのは、そんなに多くあるものではありません。X-Pro1は過去のカメラから操作性を踏襲することで人間の感性に合う操作感を実現したと思いました。
富士写真フイルムは、他社と異なる切り口でデジタルカメラを開発してきました。画質の良さ、使い勝手の良さを重視したX-Pro1は、人間が一番快適な状態で、ダイナミックに思いを入れて撮影できるように配慮したカメラです。自然に最適な撮影姿勢がとれるよう、人自体も変えていくことのできるカメラですから、少々お値段は張りますが、一生モノのカメラとして使い続けられると思います。さらに肌色の色味と階調再現も素晴らしいと付け加えておきましょう。
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