誰でも手が届く7.1chの臨場感、パイオニア「VSA-922」をチェック:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/2 ページ)
この春登場した各社のAVアンプは、10万円以下の入門層向けでも7チャンネル分のパワーアンプを積んでいる製品が多い。中でも音のよさと提案性の豊かさで、アタマ1つ抜け出た俊英モデルがパイオニア「VSA-922」だ。
「AVアンプって音悪いでしょ?」と思い込んでいる2チャンネル派にぜひ一度聴いてもらいたいと思えるレベルに到達していることは間違いない。ネットワークオーディオ専用プレーヤーを買うことなしに、7ch構成のAVアンプでこんなハイレゾ・サウンドが聴けるなんて、考えてみればほんとうに凄いことだと思う。
AVとオーディオ、どちらもいい音で楽しみたいという方が、これからデジタルファイル再生に取り組みたいというのであれば、さまざまな不確定要素の多いPC+USB DACよりも、本機のようなAVアンプをネットワーク環境に置いて楽しむことをぼくはお勧めする。グラフィックが抜群に美しい同社製操作アプリ「iContorol AV」も、本機から「iContorol AV2012」に進化し、より一層の楽しさを訴求しているし、本機はインターネットラジオが簡単に聴けるうえ、iTunesのヘヴィユーザーにとってはワイアレス・ストリーミング再生可能なAirPlayの搭載もうれしい限りだろう。なにより192kHz/24ビットのハイレゾファイルがネットワーク経由で安
定に楽しめるのが心強い。
Blu-ray DiscのHDオーディオ再生時の音も、もちろんすばらしい。映画のダイアローグの生々しさ、緻密で力強く、広がり感のよいサラウンドの描写力など、このクラスでナンバーワンの実力といっていいだろう。「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」のクレムリン爆破シーンを再生してみたが、本機が奏でる驚天動地の重低音サウンドには度肝を抜かれる思いがした。強烈な爆破音のあと、すっと完全に無音になるのだが、その静寂の気韻の表現に、本機の侮れない実力の高さを実感させられた。
また、実際に本機をハンドリングして驚いたというか感激したのが、新提案「オートフェイズコントロール プラス」の搭載だ。これは音楽系マルチch収録ソースによくあるLFE(Low Frequency Effect)chの時間遅れを自動的に補正してくれる機能。入力ソースのメインchとLFEchの時間位相特性の変化を常時モニターし、その時間遅れを自動的に是正するというものだが、メインchとLFEch に相関性がない(映画などで多い)と判断した場合は、その補正はいっさい入らない。
昨年のモデルでは、手動でLFEchの遅延時間を入力して補正する「フェイズコントロール プラス」が提案されたが、一般ユーザーが各ソースの遅延時間を調べるのは不可能といってもよく、コンテンツ側の収録時の不備を自動補正してくれるこの機能の進化はじつに意義深い。
実際にLFEchの9ミリ秒の遅れが確認できているBD「THIS IS IT」(DTS HD マスターオーディオ5.1ch)で、オートフェイズコントロール プラス機能のオン/オフを試してみたが、その効果は驚くほど。『ビリージーン』の演奏シーンでオンにすると、超絶ドラマー、チャーリー・モフェットの叩き出すタイトな8ビートがよりいっそう引き締まり、ベースとのコンビネーションが明らかに向上するのだ。このオン/オフによるグルーヴの違いは、ぼくにとって決定的といえるものだった。
ハイレゾファイル・ステレオ再生とBlu-ray DiscのHDオーディオ・サラウンド再生。オーディオとAVの最先端にハイクオリティーに出会えるVSA-922、ぜひ多くの人にこの音を体験していただきたいと思う。
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