放送の明日が分かる “麻倉的”NHK技研公開の展示ベスト5(後編):麻倉怜士のデジタル閻魔帳(4/4 ページ)
前編に続き、NHK技研公開からAV評論家・麻倉怜士氏が注目した展示をカウントダウン。NHK流スマートテレビこと「HybridCast」、8K解像度を持つ「スーパーハイビジョン」の順位は?
番外編:「大震災アーカイブスメタデータ補完の取り組み」
麻倉氏:最後に番外編として、こうした大ものでありませんが、とても大切な取り組みとして私が注目したのが、「大震災アーカイブスメタデータ補完の取り組み」です。映像素材の活用という意味では、メタデータの使用がこれから非常に重要になります。
NHKは、東日本大震災からの復興を支援するため、災害時の映像や復興の記録をアーカイブス化し、放送やインターネットを通じて広く公開して、防災・減災に貢献することを目指しています。しかし、震災時およびそれ以降に撮影された関連の映像は、2万時間を超えており、人手ですべての映像を整理し、詳細なメタデータ(映像内容を記述したデータ)を付けることは困難です。現在では記憶に頼って、“確かこのへんだよな、ほしい映像がありそうなのは……”という感じで、手で探しているそうです。これは大変ですし、限界もあります。
そこで、コンピューターを使って、メタデータ付けの作業を支援し、できるだけ効率化することを考えたのですね。展示では、NHK放送技術研究所が開発している「映像解析技術」や「メタデータエディタ」を応用し、被災地で撮影された数万時間におよぶ膨大な映像のアーカイブス化を支援する試みを紹介しています。
あらかじめコンピュータに学習させた、特定の被写体(取材メモ、空撮、人の顔など)の色や模様の特徴を数値化した“特徴量”を用いて、映像の内容が何か自動で判別することができます。映像メモ(冒頭に必ずカメラマンが示す手書きのメタデータ)、カラーバー、空撮、人の顔、人の声、インタビューなどの映像内容が映っている区間を自動的に取り出せるということです。NHK技研で色や模様の特徴によりピックアップする技術が開発されたので可能になりました。地味ですが、放送コンテンツの活用に加えて防災という意味でも大切な取り組みですね。
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